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« 和漢三才圖會第四十二 原禽類 伏翼(かうもり) (コウモリ) | トップページ | 古今百物語評判卷之四 第三 野衾の事 »

2018/10/22

和漢三才圖會第四十二 原禽類 䴎鼠(むささび・ももか) (ムササビ・モモンガ)

Musasabi

むささひ  鼺鼠 耳鼠

もみ    鼯鼠 夷由

のふすま  鴺 飛生鳥

ももか

      【和名毛美

       俗云無左々比

       今云野衾

       又云毛毛加】

ルイ チユイ

 

本綱鼠狀似蝙蝠大如鳶而肉翅四足翅尾項脇毛

皆紫赤色背上蒼腹下黃色喙頷襍白色脚短爪長尾長

三尺許其翅聯四足及尾與蝠同以尾飛而乳子子卽隨

母後聲如人呼食火烟能從高趣下不能從下上高喜夜

鳴取其皮毛與産婦臨産持之令易生【能飛而且産故寢其皮懷其爪皆能

催生】荀子云鼯鼠五技而窮謂能飛不能上屋能縁不能窮

木能遊不能渡谷能穴不能掩身能走不能先人雖多技

皆有窮極也【鼯鼠與螻蛄同名】 肉味【微溫有毒】

                 信實

 夫木むささひの聲遠近の山もとに里とほけなる森の一村

按鼯鼠擴肉翅於地如氈衾俗曰野衾關東曰毛毛加

 西國曰板折敷

一種 形色似鼯鼠【雄大如小狐雌小如鼬】大眼小耳肉翅四足五

 指尾如扇【縮則二三寸伸則等身長】以掩頭背如抱子時愛子甚故

 雖捕己嘗不欲去俗呼名飛鼺食小鳥及榧椎等乃能

 去其殼皮食蓋此鼯鼠之老者乎

 

 

むささび  鼺鼠〔(るいそ)〕 耳鼠

もみ    鼯鼠〔(ごそ)〕  夷由

のぶすま  鴺〔い〕 飛生鳥〔(ひせいてう)〕

ももが

      【和名、「毛美」、

       俗に「無左々比」と云ひ、

       今、「野衾〔(のぶすま)〕」云ふ。

       又、「毛毛加」と云ふ。】

ルイ チユイ

 

「本綱」、鼠、狀〔(かたち)〕、蝙蝠〔(かうもり)〕に似、大いさ、-鳶〔(とび)〕のごとくにして、肉の翅・四足あり。翅・尾・項〔(うなじ)〕・脇の毛、皆、紫赤色。背の上、蒼く。腹の下、黃色。喙〔(くちば)〕し・頷〔(あご)〕、襍白色〔(しうはくしよく)〕。脚、短く、爪、長し。尾の長さ、三尺許り。其の翅、四足及び尾に聯(つらな)り、蝠〔(かうもり)〕と同じ。尾を以つて飛びて、子を乳〔(ちち)〕す。子、卽ち、母の後〔(しり)〕へに隨ふ。聲、人の呼ぶがごとし。火烟〔(ひけむり)〕を食べ、能く高きより下に趣き〔けど〕、下より、高きに上ること、能はず。喜びて、夜、鳴く。其の皮毛を取りて、産婦に與〔(あた)〕ふ。産に臨みて、之れを持して〔せば〕、生〔むを〕易〔(やす)〕からしむ【能く飛びて、且つ、〔よく〕産む。故、其の皮に寢、其の爪を懷〔(ふところ)〕にして、皆、能く生〔(せい)〕を催す。】。「荀子」に云はく、『鼯鼠、五技あつて窮〔(きゆう)〕す』〔と〕。謂〔(いは)〕く、「能く飛べども、屋に上ること、能はず。能く縁(のぼ)れども、木を窮むる能はず。能く遊(をよ)げども、谷を渡ること、能はず。能く穴(あなほ)れども、身を掩〔(おほ)〕ふこと、能はず。能く走れども、先〔(さきだ)〕つこと、能はず。多技と雖も、皆、窮極有るなり」〔と〕【鼯鼠と螻蛄〔(けら)〕と名を同じくす。】。 肉味【微、溫。毒有り。】

「夫木」              信實

 むささびの聲遠近〔(をちこち)〕の山もとに里とほげなる森の一村〔(ひとむら)〕

按ずるに、鼯鼠、肉の翅を地に擴(ひろ)げて、氈(せん)〔の〕衾(ふすま)のごとし。俗に「野衾(のぶすま)」と曰ふ。關東に「毛毛加」と曰ふ。西國にて「板折敷〔(いたおしき)〕」と曰ふ。

一種 形・色、鼯鼠に似て【雄は大にして小狐のごとく、雌は小にして鼬〔(いたち)〕のごとし。】、大なる眼、小さき耳、肉の翅〔(つば)〕さ、四足、五〔(いつつ)〕の指、尾、扇のごとし【縮〔まば〕、則ち、二、三寸。伸〔ぶれば〕、則ち、身の長〔(たけ)〕に等し。】以つて、頭・背を掩ふ。如〔(も)〕そ子を抱〔(いだ)ける〕時は、子を愛すること、甚だしき故、己〔(こ)〕[やぶちゃん注:ママ。「子」のこと。]捕ふると雖も、嘗て去ることを欲せず。俗に呼びて、「飛鼺」と名づく。小鳥及び榧(かや)・椎(しい)等を食ふ。乃〔(すなは)ち〕、能く其の殼(から)・皮を去りて食ふ。蓋し、此れ、鼯鼠の老せる者か。

[やぶちゃん注:「蝙蝠」に続く古典的博物学の記載で、鳥類ではない、

哺乳綱齧歯(ネズミ)目リス亜目リス科リス亜科 Pteromyini 族ムササビ属 Petaurista(全八種で東アジア・南アジア・東南アジアに分布)で、本邦に棲息するのは、日本産固有種ホオジロムササビ Petaurista leucogenys

であり、また、同一種と誤解している方も多い(寧ろ、江戸時代まで区別されていなかった。だからここにも和名が併記されてしまっている)と思うのだが、別種で形態は似ているが遙かに小さい、

リス亜科モモンガ族モモンガ属ニホンモモンガ Pteromys momonga

である。荒俣宏「世界博物大図鑑」の第五巻「哺乳類」(一九八八年平凡社刊)の「ムササビ・モモンガ」の項によれば(コンマ・ピリオドを句読点に代えた)、属名ペタウリスタは「跳躍台から飛び降るもの」の意である。また、漢名「鼺鼠」は「鼺」は「転がる」で「転がり落ちるネズミ」の意とし、『ムササビは飛んでも上昇することができず、ともすれば落下してしまう。そのこととネズミに似た形状にちなんだもの』とある。また、『和名のモモンガは古くはモミとよばれ、〈毛美〉〈毛朱〉と表記されることもあった。毛色の美しさを称したのかもしれない』。滝沢馬琴編の「兎園小説」に『よれば、モモンガとはモミの年老いて大きくなったものを指した特殊な名称で、もとモモンクヮァといった。すなわちモモンはモミの訛(なま)り、クヮァはそのなき声をあらわしているという』(所持するので確認したところ、これは「兎園小説」第二集(文政八(一八二五)年二月八日の「兎園会」での著作堂(馬琴の別号)発表の「『まみ穴』『まみ』といふ獸の和名考幷(ならび)に『ねこま』『いたち』和名考附(つけたり)奇病の事」の一節である)『なおムササビの和名由来についてはよくわからないが、一説に〈身細(みささび)〉の意味という。飛膜を広げたときの大きさに比べてその胴体がほっそりしていることによる』とある。

 まず、ウィキの「ムササビ」を引いておくと、『ノブスマ(野臥間、野衾)、バンドリ、オカツギ、ソバオシキ、モマなど多くの異名(地方名)がある』。『長い前足と後足との間に飛膜と呼ばれる膜があり、飛膜を広げることでグライダーのように滑空し、樹から樹へと飛び移ることができる。手首には針状軟骨という軟骨があり、普段は折りたたまれているこの軟骨を、滑空時に外側に張り出すことで、飛膜の面積を増やすことができる』。『長いふさふさとした尾は滑空時には舵の役割を果たす。頭胴長』二十七~四十九センチメートル、尾長二十八~四十一センチメートル、体重七百~千五百グラムと、近縁のモモンガ類に比べて大柄である(ホンドモモンガは頭胴長』十四~二十センチメートル、尾長十~十四センチメートル、体重百五十~二百二十グラムである)『のみならず、日本に生息するネズミ目としては、在来種内で最大級であり、移入種を含めても、本種を上回るものはヌートリア』(齧歯目ヤマアラシ亜目テンジクネズミ上科ヌートリア科ヌートリア属ヌートリアMyocastor coypus:本邦へは軍隊防寒服用として昭和一四(一九三九)年にフランスから百五十頭が輸入されて飼育が奨励され、軍隊の「勝利」にかけて当時は「沼狸(しょうり)」と呼ばれた)『位しかいないとされる』。『ムササビは日本の固有種であり、本州、四国、九州に生息する』。『山地や平地の森林に生息する』。『特に、巣になる樹洞があり、滑空に利用できる高木の多い鎮守の森を好む』。『夜行性』の『完全な樹上生活者で、冬眠はしない』。百二十『メートル以上の滑空が可能で、その速度は秒速最大』十六『メートルにもなる』。『ケヤキやカエデなどの若葉、種子、ドングリ、カキの果実、芽、ツバキの花、樹皮など、季節に応じて』、『さまざまな樹上の食物を食べる』。『地上で採食はしない。大木の樹洞、人家の屋根裏などに巣を作る。メスは』一『ヘクタール程度の同性間のなわばりをもつ。オスは』二『ヘクタール程度の行動圏をもつが、特になわばりをもたず、同性同士の行動圏は互いに重なり合っている』。『冬と初夏の年』二『回発情期を迎える。発情期には交尾の順位をめぐり、オス同士が激しい喧嘩を繰り広げる。ムササビの陰茎は「コルク抜き」のような形状をしており、次に交尾しようとするオスは、陰茎を用いて交尾栓を取り除き、交尾を行っている。平均』七十四『日の妊娠期間を経て、春と秋に』一、二『匹の仔を生む』。『漢字表記の「鼯鼠」がムササビと同時にモモンガにも用いられるなど』、『両者は古くから混同されてきた。両者の相違点としては上述の個体の大きさが挙げられるが、それ以外の相違点としては飛膜の付き方が挙げられる。モモンガの飛膜は前肢と後肢の間だけにあるが、ムササビの飛膜は前肢と首、後肢と尾の間にもある』。『また、ムササビの頭部側面には、耳の直前から下顎にかけて、非常に目立つ白い帯がある』。『ムササビなど滑空性のリスと同様に飛膜をもち、滑空する哺乳類として、同じネズミ目に属するが科の異なるウロコオリス類』(齧歯目ウロコオリス形目 Anomaluromorpha ウロコオリス科 Anomaluridae:アフリカ大陸西部及び中部にのみ分布)、『フクロネズミ目(有袋類)のフクロモモンガ』(獣亜綱双前歯目フクロモモンガ上科フクロモモンガ科フクロモモンガ属フクロモモンガ Petaurus breviceps)、『ヒヨケザル目(皮翼目)のヒヨケザル』(真主齧上目真主獣類皮翼(ヒヨケザル(日避猿))目 Dermoptera「蝙蝠」の注で既出)『などが知られている』。『ムササビは、日本では古くから狩猟の対象であった』。『縄文時代では、青森県青森市に所在する三内丸山遺跡において、縄文集落に一般的なシカ・イノシシを上回るムササビ・ウサギが出土しており、巨大集落を支えるシカ・イノシシ資源が枯渇していたことを示していると考えられている』。『時代によっては保護の対象ともなり』、「日本後紀」には、『ムササビの利用を禁ずるとする記述がある』(巻二十の弘仁元(八一〇)年九月乙丑(二十八日)の条の中で葦鹿(アシカ)・羆(ヒグマ)などとともに「𤡂」(この字は「𤢹」と同じで「モモンガ(鼯鼠)」や「ムササビ(鼺鼠)」などを含むリス科の滑空する哺乳類「飛𤢹(ひるい)」を指した)を禁断とする旨の記載がある。ここ(国立国会図書館デジタルコレクションの「国史大系」の「日本後記」の当該部分の画像)。『特に、保温性に優れたムササビの毛皮は防寒具として珍重され、第二次世界大戦では物資が不足する中で、ムササビ』一『匹の毛皮は、当時の学校教員の月給に匹敵するほどの値段となった』。『被毛は筆の材料としても利用され、他にはない粘りと毛先に独特の趣がある』。『現在の日本では、ムササビは鳥獣保護法において「非狩猟鳥獣」であるため、狩猟は不可能となっている』とある。 ウィキの「モモンガ」は記載が乏しく、以上で概ねカバー出来るが、荒俣氏の解説でも示した、「モモンガ」の名の由来について、当該項以下を引いておく。『モモンガは、平安時代にはムササビと区別されておらず、「モミ」または「ムササビ」と呼ばれていた。このうちの「モミ」が転じて「モモ」となり、江戸時代に「モモングァ(漢字の当て字は『摸摸具和』)」という語形が生まれ、「モモングァー」「モモンガー」を経て、最終的に「モモンガ」になったと推測されている。ちなみに、「モミ」から変化した「モモ」や「モマ」は今も各地に方言語形として残っているが、モモンガの意味で使用する地域は少なく、多くはムササビや化け物の意味で使用されている』。『漢字による表記では前述の「摸摸具和」以外に中国語風の「鼯鼠」が用いられることがあるが、中国語の鼯鼠とはモモンガ亜科の総称であり、ムササビ(白頬鼯鼠)も含む』。『本州では妖怪扱いされていた時代もあり、子供を脅かすときや、誰かの悪口を言ったりするときに、「ももんがあ」ということがある』。『北海道のアイヌ民族からはエゾモモンガ』(モモンガ属タイリクモモンガエゾモモンガ Pteromys volans orii)『が子守する神として知られていたという』とある。

-鳶〔(とび)〕」東洋文庫は「」に『きじ』とルビして「鳶」と分離するようにするが、採らない。中文サイトを検索すると「」を「鴟」(古代の大建築で大棟の両端につけた飾りの「しび」に当てるあの字)と同じとし、その後に「鳶鳥」とあるからである。

「襍白色〔(しうはくしよく)〕」「襍」は「混じる・交える」であるから、白い色に別の雑な色が混じっていることを指す。

「乳〔(ちち)〕す」乳を与えて育てる。これを知っていて、何故、「禽」部に入れるかなぁ、時珍先生!

「火烟〔(ひけむり)〕を食べ」火鼠や仙人じゃあるまいし! 死にますって、時珍先生!

「其の皮毛を取りて、産婦に與〔(あた)〕ふ。産に臨みて、之れを持して〔せば〕、生〔むを〕易〔(やす)〕からしむ」前の乳を与えて育む珍しい「鳥」だからか。所謂、フレイザーの類感呪術であろうか。

「生〔(せい)〕を催す」生気(精気)を活性化させる。

『「荀子」に云はく、『鼯鼠、五技あつて窮〔(きゆう)〕す。謂〔(いは)〕く、「能く飛べども、屋に上ること、能はず。能く縁(のぼ)れども、木を窮むる能はず。能く遊(をよ)げども、谷を渡ること、能はず。能く穴(あなほ)れども、身を掩〔(おほ)〕ふこと、能はず。能く走れども、先〔(さきだ)〕つこと、能はず。多技と雖も、皆、窮極有るなり」〔と〕』「荀子」の「勧学篇」に出る。

   *

螾無爪牙之利、筋骨之、上食埃土、下飮黃泉、用心一也。蟹八跪而二螯、非蛇蟺之穴、無可寄託者、用心躁也。是故無冥冥之志者、無昭昭之明。無惛惛之事者、無赫赫之功。行衢道者不至、事兩君者不容。目不能兩視而明、耳不能兩聽而聰。螣蛇無足而飛、鼫鼠五技而窮。「詩」曰、「尸鳩在桑、其子七兮。淑人君子、其儀一兮。其儀一兮、心如結兮。」。故君子結於一也。

   *

但し、所持する原本で本文を確認したが具体な「五技」は記さないから、これは後代の「荀子」の古注によるものであろう。この「鼫鼠」(元は「梧鼠」であるが、後代の注釈者によってかく訂された)、「爾雅」の郭璞の注には(岩波文庫の金谷治氏の訳注より引用)『大きさ鼠の如く頭は兎に似て尾に毛があり青黄色で好んで田中にあって粟豆を食う』とあり、確かにムササビかモモンガらしい。

「鼯鼠と螻蛄〔(けら)〕と名を同じくす」「螻蛄」は昆虫のあの、直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目コオロギ上科ケラ科 Gryllotalpidae のケラ類(「本草綱目」はここまで)、本邦産のそれはグリルロタルパ(ケラ)属ケラ Gryllotalpa orientalis である。詳しくは私の和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 螻蛄(ケラ)を参照されたい。実は「螻蛄之才」という語があり、「ケラ」は飛ぶ・木に登る・泳ぐ・穴を掘る・走るという五つの能力を持つものの、どれも場面の中での僅かな限定能力に過ぎないことから、諸技能の性質を持っているものの、どれ一つとして役に立つ技能がないことを指す語である。則ち、ここは「ムササビ(モモンガ)」と「ケラ」は孰れも五つの運動能力を持ちながら、そのどれもその技能を窮めていない(どころか殆んど役に立たない)という点での「有り難くない異名」を同じゅうしている、というのである。

「夫木」「信實」「むささびの聲遠近〔(をちこち)〕の山もとに里とほげなる森の一村〔(ひとむら)〕」た説話集「今物語」の作者で公卿で歌人にして絵にも秀でたとされる藤原信実(安元二(一一七六)年?~文永三(一二六六)年以降)であろうか。研」の「和歌データベース」は、夫木和歌抄」の「巻二七 雑九」に、

 むささひのこゑおちかたのやまもとにさととほけなるもりのひとむら

とあり、これだと、

 むささびの聲落ち方の山本(やまもと)に里遠(とほ)げなる森の一村

で(「村」は「叢」と同義で、一叢(ひとむら)のこんもりとした森があるのである)、二句目に異同があるが、東洋文庫版は誤りとしていない。ムササビを考えると、「落ち方」が正しいように私には思えるのだが。

「一種」以下の叙述を考えるなら、寧ろ、ここまでの主記載がモモンガで、より大きなムササビがこの「一種」と考える方が、叙述に適合するように思われる。

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