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2018/10/28

和漢三才圖會第四十三 林禽類 鸜鵒(くろつぐみ) (ハッカチョウとクロツグミの混同)

Kurotugumi

くろつぐみ 鴝鵒  八哥

 哵哵鳥 寒

鸜鵒【渠欲】

      【俗云黒

       豆久見】

キユイ ヨッ

 

本綱鸜鵒巢於鵲巢樹穴及人家屋脊中身首俱黑兩翼

下各有白其舌如人舌剪剔能作人言五月五日去其

舌尖則能語聲尤清越也嫩則口黃也老則口白頭上有

幘者有無幘者好浴水其睛瞿瞿然故名鸜鵒天寒欲雪

則羣飛如告故名寒皐皐者告也又可使取火也

其目睛和人乳中研滴目中令人目明能見烟霄外之物

肉【甘平】主治五痔止血【炙食或爲散】又治老嗽【臘月臘日以作羮或炙食】

三才圖會云五月鸜鵒子毛羽新成取養之以教其語俗

謂之花鴝

按鸜鵒大如伯勞其頭背正黑色胸腹白而有黑斑脛

 黑觜黑其吻黃色能囀人畜之樊中賞之其雌者臆腹

 之斑色不鮮翮黑其裏柹色

眉白鸜鵒 形狀同鸜鵒而眉白者

 

 

くろつぐみ 鴝鵒〔(くよく)〕

      八哥〔(はつか)〕

 哵哵鳥〔(ははてう)〕

      寒〔(かんこう)〕

鸜鵒【〔音、〕「渠」「欲」。】

      【俗に「黒豆久見」と云ふ。】

キユイ ヨッ

 

「本綱」、鸜鵒は鵲〔(かささぎ)〕の巢、樹〔の〕穴、及び、人〔の〕家屋の脊〔(せ)〕の中に巢〔(すく)〕ふ。身・首、俱に黑。兩翼の下、各々、白有り。其の舌、人の舌のごとく、剪剔〔(せんてき)〕して能く人〔の〕言〔(ことば)〕を作〔(な)〕す。五月五日、其の舌の尖〔(とが)〕りを去るときは、則ち、語を能くす。聲、尤も清越なり。嫩〔(わか)〕きときは、則ち、口、黃なり。老するときは、則ち、口、白し。頭の上に幘〔(さく)〕有る者あり、幘無き者〔も〕有り。好く水に浴す。其の睛(ひとみ)、瞿瞿然〔(くくぜん)〕たり。故に「鸜鵒〔(くよく)〕」と名づく。天、寒くして、雪〔(ゆきふ)らんと〕欲〔(す)〕るときは、則ち、羣飛して、告ぐるがごとし。故に「寒皐」と名づく。「皐」とは「告ぐる」なり。又、「火を取らしむべし」〔と〕なり。

其の目-睛〔(ひとみ)〕を人の乳の中に和して、研〔(と)ぎ〕て目の中に滴〔(したた)らせ〕て、人をして、目を明〔(あきら)か〕にして、能く烟霄〔(えんせう)〕の外〔そと〕の物を見せしむ。

肉【甘、平。】主〔(つかさどる)に〕、五痔を治し、血を止む【炙り食ひ、或いは散と爲す。】。又、老嗽〔(らうさう)〕を治す【臘月臘日、以つて、羮〔(あつもの)〕に作し、或いは、炙り食ふ。】。

「三才圖會」に云はく、『五月、鸜鵒の子、毛羽、新たに成〔れるを〕取り、之れを養ひ、以つて、其の語を教ふ。俗、之れを「花鴝〔(くわく)〕」と謂ふ』〔と〕。

按ずるに、鸜鵒は大いさ、伯勞〔(もず)〕のごとく、其の頭・背、正黑色。胸・腹、白くして黑斑有り。脛、黑。觜、黑。其の吻、黃色。能く囀る。人、之れを樊〔(かご)の〕中に畜〔(か)〕ひ、之れを賞す。其の雌は、臆・腹の斑色、鮮かならず。翮〔(はねくき)〕、黑。其の裏、柹色。

眉白鸜鵒〔(まゆじろくろつぐみ)〕 形狀、鸜鵒に同〔じう〕して、眉、白き者なり。

[やぶちゃん注:「くろつぐみ」とするが、ここは二種の鳥を混同してしまっている。一つは真正の、

スズメ目ツグミ科ツグミ属クロツグミ Turdus cardis

であるが、異名として挙げる「八哥〔(はつか)〕」は面倒なことに、本邦でも「くろつぐみ」の異名を持つ、

スズメ目ムクドリ科ハッカチョウ属ハッカチョウ Acridotheres cristatellus

である。しかも主標題の「鸜鵒」はもとより、異名として並ぶ「鴝鵒〔(くよく)〕」「八哥〔(はつか)〕」「哵哵鳥〔(ははてう)〕」「寒〔(かんこう)〕」の総てが、現行でもハッカチョウの異名なのである。

 ともかくも、概ね、「本草綱目」「三才図会」の記載は後者のハッカチョウのものであり、良安の記載は「胸・腹、白くして黑斑有り」という特徴から、私は真正の前者のクロツグミを言っているものと読む。

 まず、ウィキの「クロツグミより引く(太字下線は良安の評言と一致する箇所である)。『夏に』、『主に日本の本州中部以北や中国の長江中流域などで繁殖し、冬には中国南部まで渡って越冬する。西日本では越冬する個体もいる』。体長は二十二センチメートル『ほどでツグミ』(ツグミ属ツグミ Turdus eunomus)より、『すこし小さい。日本で記録されたツグミ属の中では、最も小さい種類の一つである。 オスは全身が黒く、腹側は白地に黒の斑点が目立つクチバシとアイリング(目のまわり)は黄色。メスは全身が褐色で、胸から脇腹にかけてが』、『白地に黒の斑点があり、腹は白』。『オスメスともヨーロッパに生息するクロウタドリ』(ツグミ属クロウタドリ Turdus merula)『に少し似るが、クロウタドリは全身の羽毛が一様に黒か褐色である点等で大いに異なる。更に、クロウタドリは日本』には『通常』、『渡来しない迷鳥である』。『主に山地や丘陵地の森林に生息し、繁殖するが、平野にある森林にも生息する。繁殖期は番いで生活し、縄張りを持つ。渡りの時期には小さな群れを作り、市街地の公園で観察されることもある』。『食性は主に動物食で、林の地面をはね歩きながら、昆虫やミミズなどを捕食する』。『繁殖については、木の枝の上に、コケ類や枯れ枝、土を使って椀状の巣を作り』、五~七月に三、四『卵を産む。抱卵日数は』十二~十四日ほどで『雛は巣立つ。雛の世話はオスとメスが共同で行う』。『オスは繁殖期には大きい声で独特の囀りを行う。さえずりは複雑で、さまざまな鳥の声を自分の歌に取り入れることもよくする。日本の夏鳥で最も魅力的なさえずりを聴かせる鳥のひとつといえる。地鳴きは「キョキョキョ」など』、とある。「クロツグミ(1)さえずり」「野鳥 動画図鑑」(You Tube)をリンクしておく。

 次に、ウィキの「ハッカチョウ」を引く(太字下線は「本草綱目」との一致点)。原産地は、中国大陸南部、および、インドシナ半島。国別で言えば、中華人民共和国中部地域および南部地域、台湾、ベトナム、ラオス、ミャンマーに分布する』。『日本では外来種である。 観察された地域は、東京』・神奈川・大阪・兵庫・福島・栃木・愛知・大阪・京都・和歌山・香川・鹿児島・先島諸島で、神奈川や『兵庫などでは繁殖の記録もある』。『なお、沖縄県与那国島・鹿児島県など南日本での観察記録は、台湾などから飛来した迷鳥(すなわち自然渡来)の可能性もある』。『カナダでは、移入されたものが外来種として繁殖し、問題となっている』。全長は約二十六~二十七センチメートルで、『ムクドリ』(スズメ目ムクドリ科ムクドリ属ムクドリSturnus cineraceus)ほどの大きさがある。『全身の色は黒い。翼には大きな白い斑点があり、飛翔する際によく目立つ。下尾筒(かびとう)』『の羽縁と尾羽の先端が白い。突き出した冠羽が頭部前方を飾っているのが特徴的である(これが本文の「幘〔(さく)〕」である)』『の色は橙色、肢は暗黄色。この翼の斑点と、頭部の飾り羽によって識別は容易』。『食性は雑食で、植物の種子等のほか、タニシなど陸棲貝類、ケラなど地中棲の昆虫、甲虫類とその幼虫、イナゴ等のバッタ類である。ムクドリと同様の群れを作る例もある』。『鳴き声は、澄んだ声でさまざまな音をだす。ものまねもする習性がある』。『人によく懐き、飼い鳥とされる。人語などを真似るということでも親しまれている』。『マレーシアやシンガポールなどの都市部ではハトやすずめ以上に街中でよく見かける鳥であり、ホーカーセンター(東南アジアの屋台街)での食事中でも人をまったく怖がる様子もなく、近づいてきては食べ残しを漁っている』。『中国では、人によく懐き、人語を真似るということで親しまれている。花鳥図などの題材にもされる。また、羽毛と内臓を取り除いた八哥鳥は漢方薬として利用される』。『日本では八哥鳥を飼うとする習慣は、江戸時代に広まった。江戸初期において古九谷の陶工は八哥鳥の図柄を磁器に焼き付け、絵師・伊藤若冲は』、『その手になる』「鹿苑寺大書院障壁画」(宝暦九(一七五九)年、若冲四十四歳の時の作品)の一枚である「芭蕉叭々鳥図」に『八哥鳥を描いている』(「鹿苑寺大書院 芭蕉叭々鳥図襖絵」の一部で相国寺公式サイトのこちらのサムネイルの左の上から二番目がそれである)。『標準和名は「ハッカチョウ」、その漢字表記は「八哥鳥」』で、『異称に、「叭叭鳥(あるいは、叭々鳥)」および「哥哥鳥』『」とそれらの読み「ハハチョウ」、「鸜鵒』『および「鴝鵒』『」とそれらの読み「クヨク」、「小九官鳥』『」とその読み「ショウキュウカンチョウ」がある』(ムクドリ科キュウカンチョウ属キュウカンチョウ Gracula religiosa に姿や習性が似るが、同科ではあるが、属違いの全くの別種であるので注意されたい)。『主要原産地の一つである中国』『では、八哥の仲間(八哥属)の代表的一種としてのその名「八哥」のほかにも、「瞭哥(簡体字』『(以下同様)』『:了哥)」「鸜鵒』『(鸜)」「寒皋」「鴝鵒』『(鸲鹆)」「駕鴒(驾鸰)」「鳳頭八哥(凤头八哥)」「中國鳳頭八哥(中国凤头八哥)」、および、台湾亜種』『に固有の「加令」に、古称の「秦吉瞭(秦吉了)」といった、数多くの名で呼ばれている』。『英語名 crested myna の語義は「crest (意:鶏冠などの頭飾り。ここでは、冠羽)」の myna (すなわち、ムクドリの仲間』『(ムクドリ科Sturnidae)』で、『「冠羽を具えた椋鳥」の意である、とある。

 一つ気になるのは、上記の引用にある通り、日本ではハッカチョウを飼う習慣が江戸時代に広まったという点で、良安の意識の中には「八哥」という異名から、真正のクロツグミ以外の別種としてのクロツグミ=ハッカチョウがいたことを彼が認識していなかったというのは、やや気になるのである。「和漢三才図会」の完成は正徳二(一七一二)年頃であり、伊藤若冲の「鹿苑寺大書院障壁画」は宝暦九(一七五九)年の作品である(芭蕉の植わった庭を飛んでいるのは、襖絵だからであろう考えるにしても、襖絵に描くほどに、当時、京で賞翫されていた飼い鳥であったということであり、四十七年前の良安が全く知らないというのは、やや不自然かも知れぬと私は思うのである。

」の音は「ハツ・ハチ」であるが、「日文研」内の「近世期絵入百科事典データベース(試作版)」の「訓蒙図彙(きんもうずい)」(中村惕斎(てきさい)著寛文六(一六六六)年成立)所載のこちらの「鸜鵒(くよく)」の画像に記された『哵哵鳥(ははてう)也』のルビに基づいた。東洋文庫訳は『はつはつちょう』と振るが、従わない。上記の「ハッカチョウ」にも「ハハチョウ」とあるからである。

「鵲〔(かささぎ)〕」スズメ目カラス科カササギ属カササギ Pica pica

「脊〔(せ)〕」屋根。棟。

「剪剔〔(せんてき)〕」切り除くこと。「舌切り雀」じゃあるまいし。でも、かく書かれている以上(厳密には時珍ではなく、「集解」中の唐の本草学者陳蔵器の引用)、実際にやったんだろうなぁ、可哀想に。

「清越」音声が清らかでよく響き通ること。

「嫩〔(わか)〕き」「若き」。

「幘〔(さく)〕」中国で、髻(もとどり)を覆い隠し、髪を包むのに附けた巾(きれ)。頭巾。

「瞿瞿然〔(くくぜん)〕」「瞿然」は「目をぎょっとさせて驚くさま」であるが、ここは眼がクリクリとしているさまを指す。

『「火を取らしむべし」〔と〕なり』「雪が降って寒くなるから暖房のための火の準備をせよ!」とも告げているのである。

「研〔(と)ぎ〕て」磨って。

「烟霄〔(えんせう)〕の外〔そと〕」霞んでいる景色の向う側。

「五痔」一説に「切(きれ)痔」・「疣(いぼ)痔」・「鶏冠(とさか)痔(張り疣痔)」・「蓮(はす)痔(痔瘻(じろう))」・「脱痔」とするが、どうもこれは近代の話っぽい。

「散と爲す」粉末にして散薬とする。

「老嗽〔(らうさう)〕」老人性の気管支炎や肺炎による咳か。

「臘月臘日」陰暦十二月八日の異名。China Internet Information Center公式サイト古代からの風習に、『臘は合の意味で、新旧がつなぎあわされる時として、天地、神霊、祖先をいっしょにした「合祭」、古代に「臘祭」と称された行事をする。また、臘は猟の意味で、子孫たちが野獣を捕って、うやうやしく先祖に供えた、原始社会の祖先崇拝の遺風であるという説もある』『古代の臘日について、梁宗懍の』「荊楚歳時記」に『このような記事がある。「十二月八日を臘日といい、『臘鼓を鳴らせば、春草生ず』という諺あり。村人はみな細い腰鼓を打ち、武者の帽子をつけ、金剛力士に化装して疫を払う」。古人は臘日(またはその前日)に、金剛または力士などの神霊に化装し、踊りながら臘鼓を打ち鳴らせば、災いを除き邪を払えると思っていた』とある。なお、本邦でもこの日に年末の大事な追儺の儀式である「大儺(たいな)」を行った。

「伯勞〔(もず)〕」私の好きな、スズメ目スズメ亜目モズ科モズ属モズ Lanius bucephalus。先行する「鵙(もず)(モズ)を参照。

眉白鸜鵒」不詳。

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