萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 天上縊死
天上縊死
遠夜に光る松の實に、
懴悔の淚したたりて、
遠夜の空にしも白ろき、
天上の松に首をかけ。
天上の松を戀ふるより、
祈れるさまに吊されぬ。
[やぶちゃん注:初出は『詩歌』大正四(一九一五)年一月号。「遠夜」に「とおよ」のルビ、「懴悔」が「懺悔」、「白き」が「しろき」、「吊されぬ」が「つるされぬ」で変更はない。但し、これにも詩の最後で改行して下方に『――淨罪詩扁――』(「扁」は「篇」の誤植であろう)と記すのは注目する必要があろう。なお、筑摩版全集に載る草稿群は既に「縊死 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿1)」、「縊死 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿2)」、「(無題) 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿3)」、「白金屍體――天上縊死續篇―― 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿4)」で別個に電子化してあるので参照されたい。]