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2018/10/29

萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 冬

 

   

 

つみとがのしるし天にあらはれ、

ふりつむ雪のうへにあらはれ、

木木の梢にかがやきいで、

ま冬をこえて光るがに、

おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。

 

みよや眠れる、

くらき土壤にいきものは、

懴悔の家をぞ建てそめし。 

 

[やぶちゃん注:初出は『地上巡禮』大正四(一九一五)年三月号であるが、題名が「貘」と異なり、詩篇自体も大幅な改変がなされている。既に「貘 萩原朔太郎(「冬」初出形)で電子化しているが、再掲する。

   *

 

   

 

あきらかなるもの現れぬ、

つみとがのしるし天にあらはれ、

懺悔のひとの肩にあらはれ、

齒に現はれ、

骨に現はれ、

木木の梢に現はれ出で、

眞冬をこえて凍るがに、

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ。

             ――淨罪詩扁――

 

   *

「扁」は「篇」の誤植であろう。

【二〇二一年十二月二十八日追加】なお、筑摩版全集の「草稿詩篇 月に吠える」には本篇の草稿四種五枚の内、三種(無題・「所現」・「家」)が掲げられてある。以下に示す。歴史的仮名遣・脱字はママ。

   *

 

  

つみとがのしるし天にあらはれ、

みよ懺悔のいのれるひとの姿にあらはれ、

つみとがのしるし天にあらはれ

樹々の梢にあらはれ

光れる雪

れきれきとしてその齒にあらはれきざまれ

骨にあらはれきざまれ

樹にきざまれ

しるしは天にあらはれぬ

樹々の梢にあらはれいで

ま冬めぢのかぎり

さもしろしろを雪ふりつもり[やぶちゃん注:「を」はママ。「と」の誤字か。]

ま冬を越えていちめんに

犯せる罪のしるし四方にあらはれぬ、

 

  罪罰

  所現

あきらかなるもの現れぬ

つみとがのしるし天にあらはれ

懺悔のひとの姿にあらはれ

齒にあらはれ

骨にあらはれ

木々のゆきふるなべにしらしらと

木々の梢にあらはれいで

あるみにうむの薄き紙片に

すべての言葉はしるされたり

ま冬をこゑていちめ雪ぞらに凍るがに

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ

             ――淨罪詩扁

 

  

つみとがのしるし空にあらはれ、

ふりつむゆきのうへにあらはれ

凍れる魚の齒にもあらはれ

木々の梢にあらはれかがやきいで

ま冬を越えて光るがに

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ。

 

みよや眠れる

くらき土壞にいきものは

懴悔の家をぞ建てそめし。

 

最後の「家」の後の編者注があり、『「家」は雜誌發表(題名「貘」)から詩集刊行までの間に書かれた清書原稿と推定される』とある。といっても、発表は大正四(一九一五)年三月で、「月に吠える」の刊行は大正六年二月十五日であるから、そのスパンは二年ある(以上は字体をゴシックにして追加であることを明確にした)。]

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