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2018/10/27

和漢三才圖會第四十三 林禽類 鷑鳩(ぎうく) (謎の鳥「くろもず」(?))

 

Ryuukyuu

 

ぎうく     鵧鷑 駕犁

        載勝 烏臼

【音及九】

        鐡鸚鵡

        搾油郎

キッキウ

[やぶちゃん注:「鵧鷑」の「」は原典では「並」の左右の六・七画目が鈎(かぎ)状に四・五画に接した字であるが、これが表記出来ないこと、及び、東洋文庫訳やネット上の辞書類でこの鳥を示すのに「鵧鷑」が用いられていることから、これに代えた。]

 

本綱鳩狀小于烏能逐鳥其大如燕而黑色長尾有岐

頭上戴勝所巢之處其類不得再巢必相闘不已三月五

更輙鳴農人以爲候其聲曰架架格格至曙乃止故呼爲

搾油郞又能啄鷹鶻鳥鵲乃隼屬也

按此未知何鳥蓋搾油郞者油造家之搾郎也毎自五

更打槌其所業和漢不異

 

 

ぎうく     鵧鷑〔(へいりふ)〕

        駕犁〔(がり)〕

        載勝〔(たいしよう)〕

        烏臼〔(うきゆう)〕

【音及九】

        鐡鸚鵡〔(てつあうむ)〕

        搾油郎〔(さくゆらう)〕

キッキウ

 

「本綱」、鳩、狀、烏〔(からす)〕より小にして、能く鳥を逐ふ。其の大いさ、燕のごとくして、黑色。長き尾〔に〕、岐、有り。頭の上に「勝〔(しよう)〕」を戴す。巢〔(す)せ〕しむ處、其の類、再び、巢を得ず。必じ、相ひ闘ひて、已まず。三月〔の〕五更、輙〔(すなは)〕ち、鳴く。農人、以つて候と爲す。其の聲、「架架格格(キヤキヤ〔カクカク〕)」と曰ふ〔がごとし〕。曙に至りて、乃〔(すなは)〕ち、止む。故に呼んで、「搾油郞」と爲す。又、能く鷹・鶻鳥〔(はやぶさ)〕・鵲〔(かささぎ)〕を啄〔(ついば)〕む。乃ち、隼〔(はやぶさ)〕の屬なり。

按ずるに、此れ、未だ何鳥といふことを知らず。蓋し、「搾油郞」とは油造家(あぶらや)の搾-郎(しぼり〔て〕)なり。毎〔(つね)に〕、五更より槌〔(つち)〕を打つ。其の所-業(しわざ)〔は〕、和漢、異ならず。

[やぶちゃん注:読みの「ぎうく(現代仮名遣いは「ぎゅうく」か。東洋文庫訳はそうなっているのだ)」は頗る不審。この熟語を音読みするなら、「リウキユウ(リュウキュウ)」であるし、中国語音「lì jiū」(リィー・ヂ(ォ)ウ)を写したものか? いやいや、そんあことはどうでもいいのだ。ともかくも、遂に、良安が丸投げする、全く種不明の鳥が出現したのだ。諸異名でも中文サイトを調べてみたが、現在の種に同定比定した記事にぶつからない。

 しかし、捜しているうちに、清代の類書(百科事典)で、中国史上最大の巻数一万巻から成る、康熙帝が陳夢雷らに命じて作らせた「欽定古今図書集成」(一七二五年完成)の「博物彙編」の「禽蟲典」第四十九巻に載る、本種を描いた「鵧鷑圖」のパブリック・ドメインの画像をWikimedia Commonsのこちらで発見した。特殊な画像ファイルであったため、複数回のファイル変換とサイズ変更を行ったが、なかなかにいい絵なので、特にここに掲げることとする。

 

Gyuuku

 

 清代にかくもちゃんと描けるからには、今も実在する鳥と考えてよかろう(こんだけ他種にも強い鳥だとしたら、そう短時間に絶滅したとは思われないし、この鳥が人間にとって薬用・食用・装飾用等の何らかの強い需要を持っていて個体数が激減したり、絶滅してしまったとするなら、寧ろ、ネット上にその記載が複数登場しておかしくない。ということは、今もいるんだ。

 しかし、灯台下暗しで、試しに所持する大修館書店「大漢和辭典」の「」を引いたところが、そこには『鳩(きゅうきゅう)はくろもず』とあったのである。

 しかし、これ、「クロモズ」という種は、いないのである。

 それでも、ネット画像で調べてゆくと、モズ科 Urolestes 属シロクロオナガモズ Urolestes melanoleucus という種は、全身が黒く、尾が長くて二岐となっている点ではピッタシカンカンだ! と小躍りしたところが、残念なことに、この種はアフリカのサバンナ地帯にしか分布せず、中国にはいないのだ(英文ウィキの当該種の「Magpie shrikeと、その画像を見られたい)。

 「隼〔(はやぶさ)〕の屬」(ハヤブサ目 Falconiformes ハヤブサ科 Falconidae ハヤブサ亜科 Falconinae ハヤブサ属ハヤブサ Falco peregrinus)なんて言っているから(確かに強いもんな)、私の見当違いの、全然違う科の鳥なのかしらん?

 なんだか、今、鳩のとまっている樹の下まで来た感じがするんですけど!

 中国に棲息する、黒いモズの仲間で、この記載に合う種を御存じの方は、御教授願いたい。【18:15/追記】本日公開後、いつもお世話になっているT氏より、これではないかという指摘を戴いた。中文サイト「自然系圖鑑」の「台灣鳥類全圖鑑」の「大卷尾」で、そこには、『卷尾科 Dicruridae』『卷尾屬』で、学名は『Dicrurus macrocercus』とし、『鳴声は、『平時叫聲為粗啞的「呷啾、呷啾」,繁殖期鳴唱稍具旋律,夾雜若干破嗓的「呷啾」聲』とあり、別名を『黑卷尾、烏秋、卷尾、烏鶖(台語)』とし、古名に『鳩、鵧鷑』と出、『宋詞』に『批鵊鳥、批頰、祝鳩、烏臼鳥、鴉舅』とあるとある。また、体長は三十センチメートル、食性は節足動物(昆虫類らしい)とし、棲息地は樹林園・農園・開闊地(障害物も起伏もほとんどない野原)とあり、台湾では『留鳥』とする。単独で小さな群れを作り、飛翔能力や滞空能力は高く、素早く、飛行する空域は非常に低く、飛行中に停止して小さな角度で方向を変更することができると言ったようなことが書いてある(原文は『飛行:飛行能力強,速度快,飛行路徑呈很淺的坡浪狀,馭空能力很好,飛行中能急停及以小角度變換方向。』)リンク先の分布地図を見ると、南アジア及び東アジアで中国の南東部をカバーしていることが判る。幸い、邦文のウィキ「オウチュウ(烏秋)[やぶちゃん注:「チュウ」はママ。現代中国語烏」は「ウー)、qiū」(チ(ォ)ウである。]」に当該種の記載があり(これもT氏より御教授を受けた)、スズメ目オウチュウ科オウチュウ属オウチュウ Dicrurus macrocercus で、全長約二十八センチメートルで、『成鳥は全身が青みがかった黒色で、羽には光沢がある。尾は長く、先端が逆Y字に割れており、野外で本種を識別する際の特徴となっている。嘴と足も黒い』。『中国東部から台湾、東南アジア、インドに分布する。中国に生息する個体は、冬期には南方へ渡る』。『日本では数少ない旅鳥として、主に春に記録される。日本海の島部や南西諸島では比較的よく観察される』。『開けた森や田畑、市街地に生息する。浅く波を描くように』、『ふわふわと飛びながら、昆虫類を捕食する。「ジーッ」、「ジェー」など、やや濁った声で鳴く』とある。同ウィキには六つの亜種が挙げられており、その中で、

Dicrurus macrocercus cathoecus(中部・東部・南部中国からミャンマー東部・タイ北部・インドネシア北部)

Dicrurus macrocercus harterti(台湾)

の二種が、中国に分布していることが判った。古名と、その特徴的な二岐の尾、体色の黒さから、まず、「本草綱目」記載の「鳩」はこれと見て、間違いないように思われる。何時もながら、T氏に謝意を表するものである。同ウィキの画像は使用許諾画像であるので、貼付する。

 

Black_drongo_dicrurus_macrocercus_i

 

「勝〔(しよう)〕」婦人の髪飾り。華勝。

「巢〔(す)せ〕しむ處、其の類、再び、巢を得ず」ある鳩の個体が営巣したところには、同じ鳩の類は、営巣することは出来ない。

「五更」現在の広汎な夜明けの時間帯である、午前三時頃から五時頃。

「候」ここは田畑に入って本格的に行う農事の開始期を指している。

「「架架格格(キヤキヤ〔カクカク〕)」ピンインで「jià jià gē gē」(ヂィア・ヂィア・グゥー(ァ)・グゥー(ァ)」。これは意味よりも、同時間に鳴く鶏鳴と同じようなものなのかもしれない。

「搾油郞」「油造家(あぶらや)の搾-郎(しぼり〔て〕)」所謂、油を菜種などを叩き潰して採取する職人のこと。KAWASHIMA-YA公式サイト平出油屋さんの菜種油伝統が息づく日本の手仕事に製造過程が詳しく示されてある(動画も有り)。その圧搾過程を全くの人為でするとすれば、夜鍋仕事であることは想像に難くない。

「鷹」現行では、タカ目タカ科 Accipitridae に属する鳥の内でも比較的小さめのものを指す通称である。

「鶻鳥」先に示したハヤブサの異名。

「鵲」スズメ目カラス科カササギ属カササギ Pica pica

「五更より槌〔(つち)〕を打つ。其の所-業(しわざ)〔は〕、和漢、異ならず」珍しくどうでもいいこと言ってお茶濁し。良安先生、流石に全然判らんというのが、気が引けたのかも知れんなぁ。]

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