萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 山居
山 居
八月は祈禱、
魚鳥遠くに消え去り、
桔梗いろおとろへ、
しだいにおとろへ、
わが心いたくおとろへ、
悲しみ樹蔭をいでず、
手に聖書は銀となる。
[やぶちゃん注:初出は『詩歌』大正三(一九一四)年九月号。初出では「悲しみ」が「哀しみ」である。「悲しみ樹蔭をいでず、」が「悲しみ樹蔭をいです、」であるが、これはただの誤植。但し、詩篇後に下インデントで『――一九一四、八 吾妻山中にて――』と記す。]
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