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2018/11/08

宮澤賢治「心象スケツチ 春と修羅」正規表現版 陽ざしとかれくさ

 

      陽ざしとかれくさ

 

    どこからかチーゼルが刺し

    光(くわう)パラフヰンの 蒼いもや

    わをかく、わを描く、からす

    烏の軋り……からす器械……

(これはかはりますか)

(かはります)

(これはかはりますか)

(かはります)

(これはどうですか)

(かはりません)

(そんなら、おい、ここに

 雲の棘をもつて來い。はやく)

(いゝえ かはります かはります)

    ………………………刺し

    光パラフヰンの蒼いもや

    わをかく わを描く からす

    からすの軋り……からす機關

 

[やぶちゃん注:底本のリーダ数は三行目の二箇所が孰れも八点(私が打ったのは三点リーダで六点)、「刺し」の上が四十四点(同前二十七点)、最終行のそれが八点であるが(同前六点)、その個数分を打つと、底本の前後の行との見た目のバランスをとることが難しくなるので、再現していない。リーダ数は異なるが(従ってもっと詰って黒く見える)、当該一行の長さは底本と全く同じ位置にあるようになっている。序でに言うと、の始まりや終わりの前後に次がある場合、底本では半角ほどの有意な空隙が見られるが、これも見た目がずれるので再現してはいない(この注は以降のリーダが使用される詩篇では繰り返さない。悪しからず)

 大正一一(一九二二)年四月二十三日の作。本詩篇は本底本刊行前の初出誌がある。大正一三(一九二四)年三月九日発行の『反情』第二号(反情社刊。花巻で梅野草二氏が編集していた雑誌)で、掲載は本底本の刊行の前月である。掲載されたそれを示す。「からすの機關」の「の」が入っている点を除いて変化はない。

   *

 

    陽ざしとかれくさ 宮澤賢治

 

 どこからかチーゼルが剌し[やぶちゃん注:「刺」が異体字。]

 光(くわう)パラフ井ンの 蒼いもや[やぶちゃん注:「ヰ」が漢字の「井」。]

 わをかく、わを描く、からす

 烏の軋り……からすの器械……[やぶちゃん注:「の」が入っている。]

(これはかはりますか)

(かはります)

(これはかはりますか)

(かはります)

(これはどうですか)

(かはりません)

(そんなら、おい、ここに

 雲の棘をもつて來い。はやく)

(いゝえ かはります かはります)

    ………………………剌し[やぶちゃん注:「刺」が異体字。]

 光パラフ井ンの蒼いもや[やぶちゃん注:「ヰ」が漢字の「井」。]

 わをかく わを描く からす

 からすの軋り……からすの機關[やぶちゃん注:「の」が入っている。]

 

   *

同誌の目次では標題は「陽ざしとかれ草」となっている。

 底本用原稿もあるが、リーダ数の違い等で、特に目立った異同はないので略す。「手入れ本」も有意な違いがないので、略す。

 「手入れ本」では宮澤家本が三行目冒頭の「わ」を「輪」に直した後、字下げの第一連四行全部と、字下げ最終連四行全部に斜線を附している。この第二連だけで一つの心象スケッチ(詩篇)としようという裁断は、なかなか凄いものがある。

「チーゼル」teasel(英名)。キク亜綱マツムシソウ目マツムシソウ科ナベナ(チーゼル)属オニナベナ Dipsacus sativus。異名「羅紗掻草(ラシャガキグサ)」。二年草で高さは約一・五メートル、茎に棘(とげ)がある。葉は線形で、夏、淡紫色の頭状花を穂状につけ、総苞(そうほう)は先が鉤状を呈する。乾燥した穂は硬く、織物の起毛に利用する。ヨーロッパ原産。別名「おになべな」。これM.Ohtake氏のサイト「四季の山野草」内)。

「わを描く」前の「わをかく」と差別化して「輪をえがく」と読んでおく

「光(くわう)パラフヰン」太陽光の眩しさやハレーションをパラフィンに喩えたものであろうが、賢治らしい独特の造語ではある。

「烏の軋り」「からすのきしり」。後の「器械」や「機關」はカラスのその啼き声を機械の軋り音と捉えたものであろう。]

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