萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 孤獨
孤 獨
田舍の白つぽい道ばたで、
つかれた馬のこころが、
ひからびた日向の草をみつめてゐる、
ななめに、しのしのとほそくもえる、
ふるへるさびしい草をみつめる。
田舍のさびしい日向に立つて、
おまへはなにを視てゐるのか、
ふるへる、わたしの孤獨のたましひよ。
このほこりつぽい風景の顏に、
うすく淚がながれてゐる。
[やぶちゃん注:「しのしのと」聴いたことがない形容動詞或いは副詞である。小学館「日本国語大辞典」にも載らない。唯雰囲気的に、当初は、「篠」、小さい竹類の総称である篠竹(しのだけ)から、そんな風に細くて頼りない感じの謂いかと理解していたが、調べて見ると、「しの(篠)」には、別に、紡績の中間工程で繊維の長さを揃えて平行に並べた紐状の繊維の束(これに撚(よ)りをかけて糸にする)の意があることが判った。朔太郎の故郷群馬と言えば紡績だ。この意からの朔太郎の造語かも知れないなどと私は夢想したりしたが、まあ、副詞の、動きが「なよなよ」としているさまの意の「しなしな」の訛りとするのが穏当か。
初出は『感情』大正五(一九一六)年十月号。初出は二連構成でやや異同もあるので、以下に示す。
*
孤獨
田舍の白つぽい道ばたで
つかれた馬のこころが
ひからびた日向(ひなた)の草をみつめてゐる
ななめに、しのしのとほそくもえる
ふるえる、さびしい草をみつめる。
田舍のさびしい日向(ひなた)に立つて
おまへはなにをみてゐるのか
ふるえる、わたしの孤獨のたましひよ
この白つぽい風景の顏に
うすく淚がながれてゐる。
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二箇所の「ふるえる」はママ。]
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