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2018/11/02

萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 白い共同椅子

 

  白い共同椅子 

 

森の中の小徑にそふて、

まつ白い共同椅子がならんでゐる、

そこらはさむしい山の中で、

たいそう綠のかげがふかい、

あちらの森をすかしてみると、

そこにもさみしい木立がみえて、

上品な、まつしろな椅子の足がそろつてゐる。 

 

[やぶちゃん注:筑摩版全集校訂本文は「そふて」を「そうて」と強硬補正している。私には訳が判らぬ。なお、言わずもがなであるが、「共同椅子」は公共のベンチのこと。初出は『感情』大正五(一九一六)年十月。初出形を以下に示す。

   *

 

  白い共同椅子

 

森の中の小徑にそふて

まつ白い共同椅子がならんでゐる

そこらはさむしい山の中で

たいそう綠のかげがふかい

あちらの森をすかしてみると

そこにもさびしい木立がふるえてゐて

まつしろな椅子の脚がならんでゐる。 

 

   *

「ふるえて」はママ。

 なお、筑摩版「萩原朔太郞全集」第一巻の『草稿詩篇「月に吠える」』には、本篇の草稿として『白い共同椅子(本篇原稿三種三枚)』として以下の二篇がチョイスされて載る。孰れも無題。表記は総てママである。

   *

 

  白い共同椅子

 

森の小径を步いてゐると

まつ白い→のな洋風のぺンチが並んでゐるとあつた

山の中に都會をもとむ

そこはさびしい田舍の山の中であつた

文明の

わたしはひぐらしの聲を

わたし のむなしいが ベンチ 美しい椅子をみ出した

あほい 水々しい木の葉のかげが

わたし はうれしくなつて手をくみ□せた、→の感情が はその椅子を美しいとおもつた

椅子はほんとに上品で美しくみえた、

わたしはこのうへもなく滿足した、

それゆゑ雙手で椅子の背をゆつぶりながら

心もちくびをかたむけてかしげて

ひぐらしの鳴くのをきいてゐた。

 

 

  白い共同椅子

 

森の中の小径をあるいてゐるとにそふて

まつ白い共同椅子がならんでゐ

そこらはさむしい山の中で

朝から凉しい風が吹いてゐた

椅子は ほんとに美しかつた ほんとに上品な形をしてゐた

しめつぽい草木がいちめんにしげつてゐた

自分 わたしはたいそう滿足して

しづかな→じつにまことに閑靜な林の中ところである

そのへんの椅子草にねころんで

しづかに菓子をたべてゐると

木の葉→みどりの木の葉あちらこちらの葉のかげにも

椅子は上品な椅子の足が並んでゐた

しづかに落付いて→日がくれ

 

ふとした心持から

わたしはたいそう滿足して

わたしは雙手で椅子の背をゆすぶりながら

たいそううれしい→愉快な→滿足して愉快な心もちで

氣どつた樣子をして わたしはおほきな感情にふけりながら

日ぐらしのなくのをきいてゐた

 

   *

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