宮澤賢治「心象スケツチ 春と修羅」正規表現版 報告
報 告
さつき火事だとさわぎましたのは虹でございました
もう一時間もつづいてりんと張つて居ります
[やぶちゃん注:大正一一(一九二二)年六月十五日の作。本書以前の発表誌等は存在しない。原稿や「手入れ本」に異同なしで特異点。松井潤氏のブログ「HarutoShura」の本詩篇の解説に『物理学者、斎藤文一氏の研究などによると、この』創作日には、午後三時二十分頃から一『時間ほど、虹が架かった。とくに午後』三時二十分頃には、『主虹の最上部の赤いところが』、『東方の山並みに低くかかって、遠い山火事のように見えたと推定されるそうだ』。『このような地上の近くに低くかかる虹は珍らしく「火事だとさわぎ」になるほどの驚くべき光景だったのだろう。まさに「報告」に値するものだ』とある。
「りんと」「凜と・凛と」で、様態が凛々(りり)しく、引き締まっているさま。]
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