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2018/12/18

和漢三才圖會第四十三 林禽類 啄木鳥(てらつつき・きつつき) (キツツキ)

 

Kitutuki

 

てらつつき  斲木

きつつき   

啄木鳥

       【和名天良豆豆木】

 

チヨモッ ニヤ◦ウ

 

本綱啄木鳥狀有大有小色有褐有斑褐者是雌斑者是

雄小者如雀大者如鴉面如桃花啄足皆青色剛爪利觜

其觜如錐長數寸舌長於咮其端有針刺穿木啄得蠧以

舌鈎出食之又能以觜畫字令蟲自出

肉【甘酸平】能治痔瘻及齲燒【存性】納于孔不過三次

血 庚日向西用血熱飮令人面色如朱光彩射人【上巳

日取丹砂大青拌肉餌之一年取腦和雄黃半錢作十丸毎日向東水服一丸能變形怒則如鬼喜則常人也】

△按啄木鳥狀有大小頭黃白帶赤靣紅而黃俱有黑斑

 背翅尾黑白成橫彪或青色亦有其臎紅腹白而有淡

 黑彪觜脛皆黑色剛爪利觜如錐長數寸舌長於啄其

 端有針刺頭如鋸齒啄樹中蠧以舌探出而食之但旦

 夕穿木不息耳【昔初玉造建天王寺時此鳥群來啄損寺軒故名寺啄謂物部守屋之怨靈爲災也】

蟻吸鳥 按小者舌長於嘴啄蟻及木蠧俗名蟻吸

 鳥本草所謂啄木鳥小者如雀者是乎

 

 

てらつつき  斲木〔(たくぼく)〕

きつつき   〔(れつ)〕

啄木鳥

       【和名は「天良豆豆木」。】

 

チヨモッ ニヤ

 

「本綱」、啄木鳥は、狀、大なる有り、小なる有り。色、褐有り、斑有り。褐は、是れ、雌。斑は、是れ、雄なり。小なる者の雀のごとく、大なる者、鴉のごとし。面〔(おもて)〕は桃花のごとく、啄〔(くちばし)〕・足、皆、青色。剛〔(つよ)〕き爪、利〔(と)〕き觜。其の觜、錐のごとく、長さ數寸。舌、咮(くちばし)より長し。其の端に、針-刺〔(はり)〕、有り、木を穿ち、蠧〔(きくひむし)〕を得て啄む[やぶちゃん注:ここは訓点に従っては読めないので独自に読んだ。]。舌を以つて、鈎〔(かぎ)〕を出だし、之れを食ふ。又、能く觜を以つて字を畫き、蟲をして自づから出ださしむ。

肉【甘酸、平。】能く痔瘻及び齲〔(むしば)〕を治す。燒きて【精を存〔すこと〕。】孔に納めて三次に過ぎず〔して治す〕。

血 庚〔(かのえ)〕の日、西に向き、の血を用ひて、〔その〕熱〔きを〕飮す。人の面色〔(めんしよく)〕をして、朱のごとくならしめ、光彩は人を射るといふ。【上巳〔(じやうし)〕の日にを取り、丹砂・大青〔(たいせい)〕を以つて肉に拌(なじ)ませ、之れを餌ふ。一年、腦を取り、雄黃半錢を和〔(あ)〕へ、十丸を作り、毎日、東に向ひて水にて一丸を服〔さば〕、能く形を變じ、怒〔れば〕、則ち、鬼のごとく、喜〔べば〕、則ち、常人なり。】

△按ずるに、啄木鳥、狀、大小有り。頭、黃白、赤を帶び、靣〔(おもて)〕は紅にして黃なり。俱に黑斑有り。背・翅・尾〔は〕、黑白〔の〕橫彪〔(よこふ)〕を成し、或いは、青色も亦、有り。其の臎(をさき)、紅。腹、白くして淡黑の彪〔(ふ)〕有り。觜・脛、皆、黑色。剛き爪、利き觜、錐のごとく、長さ數寸にして、舌、啄〔(くちばし)〕より長し。其の端、針、有り。針の頭、鋸〔(のこ)の〕齒のごとし。〔これを以つて〕樹の中の蠧〔(きくひむし)〕を啄み、舌を以つて探り出だして、之れを食ふ。但だ、旦夕〔(たんせき)〕、木を穿ちて息〔(や)〕まざるのみ【昔、初め、玉造〔(たまつくり)〕に天王寺を建〔てり〕。時に、此の鳥、群がり來りて寺の軒を啄(つゝ)き損ず。故に「寺啄〔(てらつつき)〕」と名づく。物部守屋の怨靈、災ひを爲すと謂ふなり。】。

蟻吸鳥〔(ありすひどり)〕 按ずるに、(きつゝき)の小さき者、舌、嘴より長し。蟻及び木蠧〔(きくひむし)〕を啄む。俗に「蟻吸鳥」と名づく。「本草」、所謂、『啄木鳥の小なる者、雀のごとし』といふは、是れか。

[やぶちゃん注:キツツキ目キツツキ亜目キツツキ科 Picidae キツツキ類の総称(キツツキという種は存在しない)。ヒメキツツキ類・シルスイキツツキ類・キツツキ類など約二百三十種からなる。アリスイ類のように、別の名で呼ばれる鳥もいる。マダガスカル島・オセアニア及び非常に高緯度の地域を除いて、全世界に広く分布している。アリスイ類は、樹木が散在する草地や疎林などに生息し、おもにアリ類の卵や成虫を食べる。ヒメキツツキ類は,全長十数センチメートルで、大部分は南アメリカに分布し、木の細枝や葉陰などで採食する。キツツキ類は、全長十数センチメートルから大きな種では六十センチメートルに達し、羽色は白・黒・黄・緑・褐色で、多くの種では雄の頭部に鮮やかな色彩の大きな斑がある。嘴は強力で真っ直ぐ伸び、しかも、上下の嘴の峰部は角鑿(かくのみ)のように迫(せ)り上がっていて、木を突いたり、削り取ったりするのに適している。また、樹皮の間などに潜んでいる昆虫類を探り出せるよう、舌が長く、嘴の先端から外へ長く伸びるようにもなっている。さらに舌先には粘着力があり、獲物を引きずり出せる。趾(あしゆび)は前後に二本ずつ向いていて、幹上や太い枝の上を垂直に動き回るのに適している。尾羽も非常に硬く、体を垂直にして幹に留まっている際には体の支えとなる。日本には、

アリスイ亜科アリスイ属アリスイ Jynx torquilla(全長十七~十八センチメートル。背食性は動物食で、地表や朽ち木に止まって舌を伸ばし、名前通り、主にアリを捕食する。本条の最後の「蟻吸鳥」がこれ

キツツキ亜科アオゲラ属アオゲラ Picus awokera(三亜種が棲息)

アオゲラ属ヤマゲラ亜種ヤマゲラ Picus canus jessoensis(北海道に留鳥として周年棲息)

キツツキ亜科ノグチゲラ属ノグチゲラ Sapheopipo noguchii(日本固有種。沖縄島北部に棲息)

キツツキ亜科クマゲラ(熊啄木鳥)属クマゲラ Dryocopus martius(全長四十五~五十七センチメートル、体重二百~四百グラムで、本邦に分布するキツツキ科の構成種では最大種。和名の「熊」もそこから)

キツツキ亜科アカゲラ属アカゲラ亜種 Dendrocopos major hondoensis(本邦では北部に亜種エゾアカゲラDendrocopos major japonicus が分布)

アカゲラ属オオアカゲラ Dendrocopos leucotos(本邦には四亜種が棲息)

アカゲラ属コゲラ Dendrocopos kizuki(全長十三~十五センチメートルで、スズメと同じくらいの大きさ。翼開長は約二十七センチメートル、体重十八~二十六グラム。日本に棲息するキツツキでは最小種)

キツツキ科 Picoides 属コアカゲラ Picoides minor(北海道に留鳥として周年棲息)

ミユビゲラ Picoides tridactylu

が分布(頭部の赤色の鮮やかな大型種であるキツツキ科クマゲラ属キタタキ Dryocopus javensis が対馬に棲息していたが、大正九(一九二〇)年を最後に確認されておらず、絶滅した)、他に渡り途中と思われる、

アカゲラ属チャバラアカゲラ Dendrocopos hyperythrus

の記録が僅かにある(以上は主文を「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)。

 

「蠧〔(きくひむし)〕」これは狭義の鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目 Cucujiformia 下目ゾウムシ上科キクイムシ科 Scolytidae のキクイムシ類。

「能く觜を以つて字を畫き、蟲をして自づから出ださしむ」これは呪術的謂い。キクイムシが出てくるような呪文の文字を樹皮を突(つつ)いて描き、彼らを自然に表皮外へ誘き出すというのである。

「齲〔(むしば)〕」虫歯。

「燒きて【精を存〔すこと〕。】」焼く際に穏やかに焼いて、煙や体液がなるべく出ぬよう(肉成分を損なわぬように)にすることを割注で言っている。

「孔に納めて三次に過ぎず〔して治す〕」虫歯に最高でも三度詰める間には全治するというのである。

「光彩」それを飲んだ人の眼光。京劇や歌舞伎役者にはもってこいか。

「上巳〔(じやうし)〕」五節句の一つ。三月三日。

「丹砂」辰砂に同じ(中国の辰州で産する砂の意)。水銀の硫化鉱物。六方晶系で結晶片は鮮紅色でダイヤモンド光沢を持つ。多くは塊状又は土状で赤褐色。低温熱水鉱床中に産し、水銀の原料や朱色の顔料として古くから用いられてきた。

「大青」アブラナ目アブラナ科タイセイ属ホソバタイセイ Isatis tinctoria。南ヨーロッパ原産で、インディゴ・ブルーの染料の原料として中世ヨーロッパで盛んに栽培され、止血薬としても用いられた。東洋文庫版は『はとぐさ』とルビし、『草の名』と割注するが、そんな種は知らない。シソ目クマツヅラ科クマツヅラ属クマツヅラ Verbena officinalis は英名を「pigeon grass」(鳩の草)というが、それか。クマツヅラは葉をバベンソウ(馬鞭草)という生薬とし、通経・黄疸や下痢の薬として利用され、ヨーロッパでもハーブとして用いられ、本邦でも古くから用いられてはいる。しかし、中国語でも鳩草とは言わないようだから、これではないだろう。

「能く形を變じ、怒〔れば〕、則ち、鬼のごとく、喜〔べば〕、則ち、常人なり」よく表情を豊かに替えることが可能で、怒れば、忽ち、鬼神(「本草綱目」では「神鬼」となっている)の如くに変じ、喜べば、忽ち、常の人の顏に戻る。「變臉」(へんめん)かい?! ますます役者か大道芸人か、人を驚かす悪戯か、それで悪事を働く悪漢にしか用はないぜ?

「黑白〔の〕橫彪〔(よこふ)〕」黒と白が入り混じった体に対して横方向に虎皮のような斑紋がついていることを指す。

「臎(をさき)」尾の先。

「旦夕」朝から晩まで。

「息〔(や)〕まざる」休むことがない。

「玉造」現在の大阪府大阪市中央区と天王寺区の地域名称。

「天王寺」現在の大阪市天王寺区四天王寺にある聖徳太子建立七大寺の一つとされる荒陵山(あらはかさん)四天王寺。本尊は救世観音菩薩(現在は和宗総本山)。宗派は天台宗に属していた時期もあったが、元来は特定宗派に偏しない八宗兼学の寺であった。「日本書紀」によれば、推古天皇元(五九三)年に造立が開始されたとする。

「物部守屋の怨靈、災ひを爲すと謂ふ」東洋文庫版の注には、『物部氏は蘇我氏と佛教受容をめぐつて爭った。物部守屋は討ち死にして物部氏は滅んだ(五八七年)。天王寺は蘇我の一族の聖德太子が物部擊滅を佛に祈願して、物部滅亡ののち建立した寺であるので、こういういい傳えが出來たのであろう』。「源平盛衰記」『十に載っている話』とある。所持するので以下に引く。

   *、

昔、聖德太子ノ御時、守屋ハ佛法ヲ背(そむき)、太子ハ興ㇾ之給。互ニ軍(いくさ)ヲ起(おこしし)カドモ、守屋終(つひに)被ㇾ討ケリ。太子佛法最初ノ天王寺ヲ建立シ給タリケルニ、守屋ガ怨靈、彼(かの)伽藍ヲ滅(ほろぼ)サン爲ニ、數千萬羽ノ啄木鳥(きつつき)ト成(なり)テ、堂舍ヲツヽキ亡(ほろぼ)サントシケルニ、太子ハ鷹ト變ジテカレヲ降伏シ給(たまひ)ケリ。サレバ、今ノ世マデモ、天王寺ニハ啄木鳥ノ來(きた)ル事ナシトイヘリ。昔モ今モ怨靈はオソロシキ事也。賴豪鼠トナラバ、猫ト成テ降伏スル人モナカリケルヤラン。神ト祝(いはふ)モ覺束ナシ。

   *

『本草」、所謂、『啄木鳥の小なる者、雀のごとし』といふは、是れか』これは先のリストを見て戴くと判る通り、スズメと同じくらいの大きさの日本産キツツキの最小種アカゲラ属コゲラ Dendrocopos kizuki(全長十三~十五センチメートル)の方がより正解。]

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