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2019/01/14

和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 角鷹(くまたか) (クマタカ)

 

Kumataka

 

くまたか

      【和名久万太加】

角鷹

 

△按角鷹乃鷹之類而大悍者也全體形色雌雄大小皆

 同于鷹大於鷹三倍焉本草綱目鷹與角鷹相混云頂

 有毛角故曰角鷹蓋毛角在耳穴上蔽耳毛宛如角然

 鷹毛角微而常不見怒則四五分竪爾此毛角常脹起

 如憤則四五寸竪故特立角鷹名性最猛悍多力能搏

 狐狸兔猿之類不劣於鷲奧州常州有之彼山人毎養

 之馴教以使搏鳥獸亦如鷹取其尾造箭羽其尾十二

 枚黑白文重重成列鮮明者爲上老則尾文斜而逆上

 謂之逆彪最爲貴珍

八角鷹 乃角鷹之屬小者大如鳶皁色尾羽黑與赤黃

 斑如畫間有如八字文此亦爲箭羽以爲奇珍

[やぶちゃん注:「畫」は「盡」であるが、ルビと送り仮名の「ヱカクカ」により、誤字と断じて特異的に訂した。]

 

 

くまたか

      【和名、「久万太加」。】

角鷹

 

△按ずるに、角鷹は乃〔(すなは)〕ち鷹の類にして、大いに悍(たけ)き者なり。全體の形・色、雌雄の大小、皆、鷹に同じく、鷹より大なること、三倍せり。「本草綱目」に、鷹と角鷹と、相ひ混じて云はく、『頂きに、毛角有り。故に「角鷹」と曰ふ』と。蓋し、「毛角」〔と〕は、耳の穴の上に在りて、耳を蔽ふ毛〔にして〕、宛(さなが)ら、角(つの)のごとく〔に〕然〔(しか)〕り。鷹の毛角は微〔(かすか)〕にして、常に〔は〕見へず[やぶちゃん注:ママ。]。怒(いか)るときは、則ち、四、五分〔(ぶ)〕竪(た)つのみ。此の〔角鷹の〕毛角は常に脹(ふく)れ起こる。如〔(も)〕し憤(いきどほ)るときは、則ち、四、五寸、竪つ。故に特に角鷹の名を立つ。性、最も猛悍、多力にして、能く狐・狸・兔〔(うさぎ)〕・猿の類を搏つこと、鷲に劣らず。奧州・常州に、之れ、有る。彼〔(か)〕の山人、毎〔(つね)〕に之れを養ひ、馴〔らし)〕教へて、以つて鳥獸を搏たしむ。亦、鷹のごとく、其の尾を取りて、箭(や)の羽を造る。其の尾、十二枚、黑白の文〔(もん)〕重重〔(ぢゆうぢゆう)として〕[やぶちゃん注:重なり合うように。]列を成す。鮮-明(あきら)かなる者、上と爲す。老〔(らう)〕すれば、則ち、尾の文、斜めにして、逆に上る。之れを「逆彪(さかふ)」と謂ひ、最も貴珍と爲す。

八角鷹(はちくま) 乃ち、角鷹の屬の小き者なり。大いさ、鳶のごとく、皁〔(くろ)〕色。尾羽(〔を〕ばね)、黑と赤黃と斑〔(まだら)〕にして畫(ゑが)くがごとし。間〔あひだ)〕に「八」の字のごとくなる文〔(もん)〕有り。此れも亦、箭の羽と爲して、以つて奇珍と爲す。

[やぶちゃん注:本邦産はタカ目タカ科クマタカ属クマタカ亜種クマタカ Nisaetus nipalensis orientalisウィキの「クマタカ」によれば、『ユーラシア大陸南東部、インドネシア、スリランカ、台湾』に分布し、全長はで約七十五センチメートル、で約八十センチメートル。翼開長は約一メートル六十センチメートルから一メートル七十センチメートルに達し、『日本に分布するタカ科の構成種では大型であることが和名の由来(熊=大きく強い)。胸部から腹部にかけての羽毛は白く咽頭部から胸部にかけて縦縞や斑点、腹部には横斑がある。尾羽は長く幅があり、黒い横縞が入る』。但し、『翼は幅広く、日本に生息するタカ科の大型種に比べると』、実は『相対的に短い。これは障害物の多い森林内での飛翔に適している。翼の上部は灰褐色で、下部は白く黒い横縞が目立つ』。『頭部の羽毛は黒い。後頭部には白い羽毛が混じる冠羽をもつ。この冠羽が角のように見えることも和名の由来とされる。幼鳥の虹彩は褐色だが、成長に伴い黄色くなる』。『森林に生息する。飛翔の際にあまり羽ばたかず、大きく幅広い翼を生かして風を』捉らえて『旋回する(ソアリング)』(soaring:上昇気流を利用して長時間滞空すること。)『こともある。基本的には樹上で獲物が通りかかるのを待ち襲いかかる。獲物を捕らえる際には翼を畳み、目標をめがけて加速を付けて飛び込む。日本がクマタカの最北の分布域であり』、『北海道から九州に留鳥として生息し、森林生態系の頂点に位置している。そのため』、『「森の王者」とも呼ばれる。高木に木の枝を組み合わせた皿状の巣を作る』。『食性は動物食で森林内に生息する多種類の中・小動物を獲物とし、あまり特定の餌動物に依存していない。また森林に適応した短めの翼の機動力を生かした飛翔で、森林内でも狩りを行う』。『繁殖は』一『年あるいは隔年に』一『回で、通常』一『回につき』一『卵を産むが』、『極稀に』二『卵産む。抱卵は主にメスが行い、オスは狩りを行う』。『従来、つがいはどちらかが死亡しない限り、一夫一妻が維持され続けると考えられてきたが』、二〇〇九『年に津軽ダムの工事に伴』って『設置された猛禽類検討委員会の観察により、それぞれ前年と別な個体と繁殖したつがいが確認され、離婚が生じることが知られるようになった』。『クマタカは森林性の猛禽類で調査が容易でないため、生態の詳細な報告は少ない。近年繁殖に成功するつがいの割合が急激に低下しており、絶滅の危機に瀕している』という。『大型で攻撃性が強いため、かつて東北地方では飼いならして鷹狩りに用いられていた』。『クマタカは、「角鷹」と「熊鷹」と』二『通りの漢字表記事例がある。歴史的・文学上では双方が使われてきており、近年では、「熊鷹」と表記される辞書が多い。これは「角鷹」をそのままクマタカと読める人が少なくなったからであろう。なお、鳥名辞典等学術目的で編集された文献では「角鷹」の表記のみである』とある。なお、クマタカの英名は「Mountain hawk-eagle」或いは単に「hawk eagle」である。即ち、「hawk」(「鷹」。タカ:俗にタカ目 Accipitriformes(ワシタカ目とも訳す)の中の大型種)であり、「eagle」(「鷲」ワシ:俗にタカ(ワシタカ)目の中の中・小型種)であるという奇体な(中間型という謂いであろう)もので、中央・南アメリカに棲息するタカ目タカ科セグロクマタカ属 Spizaetus の「スピザエトゥス」は、荒俣宏氏の「世界博物大図鑑」の第四巻「鳥類」(一九八七年平凡社刊)の「タカ」の項によれば、『ギリシャ語の〈ハイタカ spizas〉と〈ワシ aetos〉』の合成であるとある。如何に「ホークとイーグル」「鷹と鷲」の民俗的分類がいい加減かが露呈する、いい例である。

 

「本草綱目」良安が本書名をフルで書くのは極めて珍しく、しかも鷹と角鷹を一緒くたに説明している、と正面切って批判的に述べているのも特異点である。「禽部」の巻四十九、「禽之四 山禽類」の「鷹」の「釋名」に以下のように出る(良安が一部を既に鷹」で引いている)。

   *

鷹【「本經中品」。】

釋名角鷹【「綱目」。】。鷞鳩。時珍曰、鷹以膺擊、故謂之鷹。其頂有毛角、故曰角鷹。其性爽猛、故曰鷞鳩。昔少皥氏以鳥官名。有祝鳩・鳲鳩・鶻鳩・睢鳩・鷞鳩五氏。蓋鷹與鳩同氣禪化、故得稱鳩也。「禽經」云、『小而鷙者皆曰隼、大而鷙者皆曰鳩』是矣。「爾雅翼」云、在北爲鷹、在南爲鷂』。一云、大爲鷹、小爲鷂。「梵書」謂之嘶那夜。

   *

「八角鷹(はちくま)」「乃ち、角鷹の屬の小き者なり」後者は誤りであるが、姿は確かによく似ている。「蜂熊」「八角鷹」「蜂角鷹」はクマタカとは属の異なる独立種、タカ科ハチクマ属ハチクマ Pernis ptilorhyncus であるウィキの「ハチクマ」を引く。『和名は同じ猛禽類のクマタカに似た姿で、ハチを主食とする性質を持つことに由来する』。『ユーラシア大陸東部の温帯から亜寒帯にかけての地域に広く分布する。ロシアのバイカル湖付近から極東地域、サハリン、中国東北部にかけての地域とインドから東南アジアで繁殖し、北方で繁殖した個体は冬季南下して、インドや東南アジア方面の地域に渡り越冬する』。『日本では初夏に夏鳥として渡来し、九州以北の各地で繁殖する』。『日本で繁殖した個体は、同様に東南アジアにわたるサシバ』(タカ科サシバ属サシバ Butastur indicus。既注)『が沖縄・南西諸島を経由して渡りをおこなうのとは異なり、九州から五島列島を経て大陸に渡り、そこから南下する。鹿児島県下甑島を通過する個体もおり、年齢を判別できた個体のうち、幼鳥が』九十二%『であった』。『渡りの方向は西方向が中心で北や南への飛去も観察されている』。『春には秋とは異なる経路をとり、大陸を北上した後、朝鮮半島から南下することが』、『人工衛星を使った追跡調査から明らかになっている』。全長五十七~六十一センチメートルで、他種と同じく、『雌の方がやや大きい。体色は通常体の上面は暗褐色で、体の下面が淡色若しくは褐色であるが、特に羽の色は個体差が大きい。オスは風切先端に黒い帯があり、尾羽にも』二『本の黒い帯があり、瞳が黒い。メスは尾羽の黒い帯が雄よりも細く、瞳が黄色い』。六亜種に分類されている。本邦種『ユーラシア大陸西部に分布するヨーロッパハチクマ』(Pernis apivorus)『とは近縁種で、同種とする見解もある』。『丘陵地から山地にかけての森林に、単独かつがいで生活する。日本での産卵期は』六『月で、樹上に木の枝を束ね産座に松葉を敷いたお椀状の巣を作り』、一~三個(通常は二個)の『卵を産む。抱卵期間は』二十八~三十五『日で、主に雌が抱卵する。雛は孵化してから』三十五~四十五『日で巣立つ。巣立ち後』、三十~六十『日程度で親から独立する。冬になると』、『東南アジアに渡って越冬するが、毎年同じ縄張りに戻ってきて育雛をする。このとき』、『巣も毎年繰り返し再利用するため、年々新たに付け加えられる木の枝によってかなりの大きさとなる。その下部は排泄物がしみこんで富栄養の腐植質となるが、ここでハナムグリの一種である』アカマダラハナムグリ(昆虫綱鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目コガネムシ下目コガネムシ上科コガネムシ科ハナムグリ亜科 Cetoniinae のマダラハナムグリ属アカマダラハナムグリ Poecilophilides rusticola)『の幼虫が発育する』。『食性は動物食で、夏と冬にはスズメバチ類やアシナガバチ類といった社会性の狩り蜂の巣に詰まった幼虫や蛹を主たる獲物とし、育雛に際してもばらばらの巣盤を巣に運んで雛に与える。コガタスズメバチのような樹上に営巣するハチのみならず、クロスズメバチやオオスズメバチなど、地中に巣を作るハチの巣であっても、ハチが出入りする場所などから見つけ出し、同じ大きさの猛禽類よりも大きい足で巣の真上から掘り起こし、捕食してしまう。また、時には養蜂場のハチの巣を狙うこともある』。『ハチの攻撃を受けても』、『ハチクマは滅多に刺されることがない。これは硬質の羽毛が全身に鱗のように厚く密生しており、毒針が貫通しないためと考えられている。また、ハチクマの攻撃を受けたハチは』、『やがて反撃をしなくなることがあるが、詳しい理由は判明していない。ハチの攻撃性を奪うフェロモン、もしくは嫌がる臭いを身体から出しているという説や、数週間にわたって、時には複数羽で連携してしつこく巣に波状攻撃を仕掛けることで、ハチに巣の防衛を諦めさせ、放棄して別の場所に移るように仕向けさせているという説がある』。『ハチ類の少なくなる秋から冬にかけては昆虫類や小鳥、カエル、ヘビ等の動物も捕食する』。『猛禽類では餌を独占する傾向が強いが、ハチクマは、餌を巡り滅多なことでは同種同士で争うことはない。これは上記のように集団で巣を襲うからと考えられる』とある。]

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