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2019/01/31

和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 山蕭鳥(かたあしどり) (妖鳥・モデル種同定失敗)

 

Kataasidori

 

かたあしとり 獨足鳥

山蕭鳥

 

本綱獨足鳥閩廣有之大如鵠其色蒼其聲自呼一足文

身赤口晝伏夜飛或時晝出群鳥譟之惟食蟲豸不食稻

粱聲如人嘯將雨轉鳴

[やぶちゃん注:「轉」は「囀」の誤字と思われる。訓読では「囀」にした。]

――――――――――――――――――――――

槖蜚 山海經云羭次之山有鳥狀如梟人面而一足冬

 則蟄服之不畏雷

邑 三才圖會云大次山有鳥狀如梟而人面一足冬

 出而夏蟄人以羽毛置諸衣中則不畏雷霆

△按二書所謂槖蜚蠹邑恐此一物矣但出蟄時大異耳

 

 

かたあしどり 獨足鳥

山蕭鳥

 

「本綱」、獨足鳥、閩(びん)・廣(こう)に、之れ、有り。大いさ、鵠〔(くぐひ)〕のごとく、其の色、蒼。其の聲、自〔(みづか)〕ら呼ぶ。一足にして文身〔(もんしん)あり〕[やぶちゃん注:身体全体に紋様がある。]。赤き口。晝(〔ひ〕る)は伏して、夜(〔よ〕る)は飛ぶ。或る時は、晝、出づ。〔さすれば、〕群鳥、之れを譟(さは)ぐ。惟だ、蟲〔(むし)〕・豸〔(ながむし)〕を食ひ、稻・粱〔(あは)〕を食はず。聲、人の嘯(うそぶ)くごとし。將に雨〔(あめふ)〕らんとすと、囀〔(さへづ)〕り、鳴く。

――――――――――――――――――――――

槖蜚(たくひ) 「山海經」に云はく、『羭次〔(ゆじ)〕の山に、鳥、有り。狀、梟のごとく、人面にして一足。冬、則ち、蟄す。之れを服〔(ふく)〕すれば、雷を畏れず』〔と〕。

邑(たくゆう) 「三才圖會」に云はく、『大次山に、鳥、有り。狀、梟のごとくして、人面・一足。冬は出でて、夏、蟄す。人、羽毛を以つて、諸衣の中に置け〔ば〕、則ち、雷霆を畏れず』〔と〕。

△按ずるに、二書〔の〕所謂〔(いはゆ)〕る、「槖蜚」・「蠹邑」、恐らく、此れ、一物〔ならん〕。但〔(ただ)〕、出蟄の時、大〔いに〕異〔(こと)〕なるのみ。

[やぶちゃん注:今回は先に語注を施す。

「山蕭鳥」この場合の「蕭」は、夜行性・一本足・他の鳥と馴れない・摂餌が侘しい・人が口を尖らせて詩を吟ずる時のような淋しい声(「嘯(うそぶ)く」とはそういう意味。なお、これは隠者・仙人のポーズでもある)を出す・雨が降る前に囀るといったネガティヴな属性から、「蕭蕭・蕭条・蕭然」等の「山中に住む、もの寂しげな鳥」の謂いであろう。

「閩(びん)・廣(こう)」「閩」は、もと、中国五代十国時代の十国の一つ(九〇九年~九四五年)現在の福建省を中心に立国していた。ここは福建地方の意で、かなり近世まで「閩」の広域地名としての呼称は行われた。「廣」は広東と広西。現在の広東省と広西チワン族自治区(中華民国までの旧広西省)に概ね相当する。因みに、広州・広東・広西などの「広」はネットのQ&Aサイト等の回答によれば、「広信県」(現在の広西チワン族自治区梧州市。ここ(グーグル・マップ・データ))の「広」で、元来、現在の広州附近は交州(漢から唐にかけて置かれた行政区域で、漢代には広州は交州に所属し、呉代に大部分が広州として分割されたが、唐代には広西と併せて嶺南道となったりした。このように現在のベトナム北部及び中国の広東省及び広西チワン族自治区の一部が含まれた。前漢の武帝が置いた十三刺史部の一つである「交阯」(こうし/こうち)に由来する。)の一部と見做され、州都が置かれていたのが広信県で、現在の広西自治区チワン族自治区の東端にあり、凡そ両広の中央にある(後に交州の都は広信から現在の広州市附近に移されたが、前に書いた通り、後に広州は交州と分離してしまう)。「広州市」公式見解も「広信県が由来」とされる。さても、この「山蕭鳥(獨足鳥)」グーグル・マップ・データの地図の東から西の大陸に沿った広域の中国沿岸地方とベベトナム社会主義共和国の北部までを棲息域とするというのだから、えらく広域で、夜行性とは言え、片足しかないというのなら、誰もが見知っていていいはずだが?

「鵠〔(くぐひ)〕」広義の白鳥の意としてよく用いるが、ここはそれでは同定候補探しが困る。ハクチョウ属オオハクチョウ Cygnus cygnus を指しているとしておく。「オオハクチョウ」の中文ウィキ「大天には『又名』とあるからであり、添えられた挿絵も、まあ、がたいはそれらしくはある。

「其の色、蒼」派手に見えるが、黒味を帯びた青か。

「其の聲、自〔(みづか)〕ら呼ぶ」その声は、自分の名を呼ぶようである、というのである。「本草綱目」の標題は「獨足鳥」で『一名山蕭鳥』とするから、標題名「独足鳥」なら現代中国語では「dú zú niǎo」(ドゥー・ヅゥー・ニィアォ)、「山蕭鳥」だと、「shān xiāo niǎo」(シァン・シィアォー・ニィアォ)となる。これが「かたあしどり」の鳴き声のオノマトペイアとなる。後者は鳥より猫っぽいくて、この鳥のブラッキーな感じと合わない気がする。

「一足にして文身〔(もんしん)あり〕」挿絵では頸部にはない。

「晝(〔ひ〕る)は伏して、夜(〔よ〕る)は飛ぶ。或る時は、晝、出づ。〔さすれば、〕群鳥、之れを譟(さは)ぐ」通常は夜行性で、昼は隠れていて、夜、飛ぶ。但し、時には、昼に出てくることがあるが、そうすると、他の鳥は群れて激しく騒ぎ立てる。

「蟲〔(むし)〕」ここは昆虫でよかろう。

「豸〔(ながむし)〕」ここは並列する「蟲」から、「ながむし(長虫)・はいむし(這い虫)」で、足のない蠕動して動く動物、ミミズ(環形動物門 Annelida 貧毛綱 Oligochaeta)やヒル(環形動物門ヒル綱 Hirudinea)のようなものを指すと採っておく。蛇は含めないと考えた方がよい。蛇を食うのであれば、取り立ててそれを示すはずだと私は思うからである。

「粱〔(あは)〕」単子葉植物綱イネイネ科エノコログサ属アワ Setaria italica

『槖蜚(たくひ) 「山海經」に云はく、『羭次〔(ゆじ)〕の山に、鳥、有り。狀、梟のごとく、人面にして一足。冬、則ち、蟄す。之れを服〔(ふく)〕すれば、雷を畏れず』〔と〕』「槖」は「袋」の意で「鞴(ふいご)」の意がある。「蜚」はこの場合、「飛ぶ」の意。「蜚禽」は「飛ぶ鳥」の意である。「羭次の山」はトンデモ幻想地誌「山海経」の「西山経」に、

   *

又西七十里、曰羭次之山、漆水出焉、北流注于渭。其上多棫橿、其下多竹箭、其陰多赤銅、其陽多嬰垣之玉。有獸焉、其狀如禺而長臂、善投、其名曰囂。有鳥焉、其狀如梟、人面而一足、曰橐𩇯、冬見夏蟄、服之不畏雷。

   *

とは出る。

『蠧邕(たくよう) 「三才圖會」に云はく、『大次山に、鳥、有り。狀、梟のごとくして、人面・一足。冬は出でて、夏、蟄す。人、羽毛を以つて、諸衣の中に置け〔ば〕、則ち、雷霆を畏れず』〔と〕』良安ばかりか、東洋文庫訳も「蠹邕」に『たくゆう』とルビするが、「蠹」は音「ト・ツ」のみ、「邕」は音「ヨウ・ユ」しかないんだよ! だからこれは「蠧邕(とよう)」が正しいのだよ! 「蠧」は「蠹」と同字で「きくいむし」(木食虫。狭義には昆虫綱鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目 Cucujiformia 下目ゾウムシ上科キクイムシ科 Scolytidae のキクイムシ類)・「紙魚」(昆虫綱 シミ目シミ亜目シミ科ヤマトシミ属ヤマトシミ Ctenolepisma villos)・「すくもむし(テントウムシの幼虫)」・「毛虫」・「物を損ない破るもの」等の意がある。「邕」は「四方を水が巡っている土地」・「載せる」・「和らぐ」・「塞ぐ」の意。「大次山」は、やはり「山海経」の「西山経」の前注で出した部分の少し後に、

   *

又西三百里、曰大次之山、其陽多堊、其陰多碧、其獸多牛、羊。

   *

とはある。さて! ここで、おたちあい! 「三才圖會」に載る人面一足の「蠹邕」の図を見ようではないか! ヒエーッツ! 強烈! 原本では「一足」と「冬出而」の間に「曰蠹」(「」=(上)「非」+(下)「巴」)とある(画像は国立国会図書館デジタルコレクションの三才図会」当該の画像から)。あれぇ? これって前の「蜚」に似てねえかぁ? だいたいからして、「槖蜚」と「蠹邕」の「槖」と「蠹」からしてが、手書きではごちゃついて判別し難かろう。良安の言う通り、記載も巣籠りから出てくるのが冬と夏の違いなだけやしなぁ。こりゃもう同一の妖鳥種だわ。

Toyou

 なお、中国の本草書では、この鳥の別名として他に「商羊」(しょうよう)を挙げるが、これは「孔子家語」(「論語」に漏れた孔子一門の説話を蒐集したとされる古書で、魏の王粛(一九五年~二五六年)が再発見したものに注釈を加えたと称する四十四篇が現存する。王粛の偽書ともされるが、今は散佚した古文献から再録した可能性もあり、必ずしも価値のないものではない)「辯政」で、

   *

齊有一足之鳥、飛習於公朝、下止於殿前、舒翅而跳。齊侯大怪之、使使聘魯問孔子。孔子曰、「此鳥名曰商羊、水祥也。昔童兒有屈其一、振訊兩眉而跳且謠曰、『天將大雨、商羊鼓儛。』。今齊有之、其應至矣。急告民趨治溝渠、脩隄防、將有大水爲災。」。頃之、大霖雨、水溢泛諸國、傷害民人、唯齊有備不敗。景公曰、「聖人之言、信而有徵矣。」。

   *

自然流で訓読すると、

   *

 齊(せい)に一足の鳥、有り。公朝(おほやけ)[やぶちゃん注:王宮の内。]に飛び習(あつ)まり、下りては殿前に止どまり、翅を舒(ひろ)げて跳ねたり。齊侯、大いに之れを怪しみ、魯に使ひして孔子を聘(まね)きて問はしむ。孔子曰はく、

「此の鳥、名を『商羊』と曰ひ、水の祥(きざし)なり。昔、童兒、有りて、其の一[やぶちゃん注:「脚」に同じ。]を屈し、兩眉を振-訊(つりあ)げて跳り、且つ、謠ひて曰はく、『天、將に大雨ふらんとし、商羊、鼓儛(こぶ)せり[やぶちゃん注:脚を踏み鳴らして舞った。]。』と。今、齊に之れ有りて、其れに應じ至らんとす。急ぎ、民に告げて、趨(すみや)かに溝渠[やぶちゃん注:水路。]を治し、隄防[やぶちゃん注:「堤防」に同じ。]を脩(ととの)ふべし。將に大水有りて災ひを爲さんとす。」と。頃-之(しばらく)して、大霖雨(だいりんう)[やぶちゃん注:「霖雨」は長雨。]あり、水、諸國に溢泛(いつはん)し[やぶちゃん注:氾濫し。]、民人(たみびと)を傷害するも、唯だ、齊のみ、備へ有りて、敗れず。景公曰はく、「聖人の言、信にして徵(しるし)有り。」と。

   *

に基づくものである。

 さても。「山蕭鳥」の属性を並べる。

一本足である。生物学的にはあり得ないが、遠目に一本に見えるのかも知れない

白鳥ほどの大きさがある。この場合の「白鳥」は単に比較的大きな鳥だの意味と採れる。

羽毛は青黒い。そもそも次に出るように夜行性であるから、この羽毛の色は信用出来ない。もっと明るい色かも知れない

基本的には夜行性である。も参照。

「どぅーづぅーにぃあぉ」と人が詩を口ずさむ、口笛を吹くような声で鳴く。この、不気味な声で、夜に、鳴くのである。

全体的に有意な斑紋或いは模様を有する。「文身」(もんしん)は刺青(いれずみ)のような模様と読み換えることが出来る。

嘴は赤い。夜行性の鳥は多くは肉食である。或いは、獲物の血が嘴に付着しいていたのかも知れない。

夜行性()ではあるが、時に昼に現われることがあり、そうすると、他の鳥が群れを成してパニックを起こす。即ち、通常の鳥にとっては脅威の鳥である。これは明らかに所謂、猛禽の類いであることを強く意味するように私には思われる。

昆虫や環形動物を摂餌し、穀類は一切、食べない。夜行性だから、この観察が十全とは思われない。但し、ヨタカ(夜鷹。ヨタカ目ヨタカ科ヨーロッパヨタカ(夜鷹)亜科ヨタカ属ヨタカ Caprimulgus indicus)のように飛翔する昆虫類を摂餌する特殊な種もおり、夜行性でも小・中型哺乳類等を摂餌しない種群もいる。

雨が降ることを事前に察して囀る。これはある種の鳥に見られる。但し、私は寧ろ雨が止みそうになると鳴くものの方が親しい。

以上のうち、の「遠目に一本に見える」可能性は、木にとまっているいて、足を揃えている場合、夜行性の鳥で視認が難しい場合に有り得る。而してのやや大きな鳥で、夜行性()で、不気味な声で夜鳴き()、全身に斑紋があり()、肉食の可能性があり()、猛禽或いはかつては猛禽類に含まれていた鳥()となれば、これはもう、私は

フクロウ目 Strigiformes(メンフクロウ科 Tytonidae(二属十八種・本邦には棲息しない)及びフクロウ科 Strigidae(二十五属二百二種)の二科二十七属二百二十種が現生)、或いはそのフクロウ科 Strigidae に属する種群

が当て嵌まるとしか思えないのであるが、残念なことにフクロウ類は北方系で、中国南部やベトナム北部には分布しない。しかし、時珍が分布域をちゃんと示しているということは、モデル種が必ずいるはずである。今、暫く、探索してみたい。

 なお、この鳥は中国の本草書では、前の鳥」(鳥)や、そこで出した「山都」、この後の「木客鳥」(もっかくちょう)と合わせて、同類群の妖鳥として併記されている。而して、一本足である。さらに、前の注で私が傍線太字にしたように「槖蜚(たくひ)」の「槖」には「鞴(ふいご)」の意がある。或いは、前の鳥」(鳥)の注の最後で言い添えたように、この妖鳥も「いっぽんだたら」(一本踏鞴)、冶金製錬の古い文化技術と何らかの関係を持った象徴的鳥なのかも知れないという気がした。]

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