萩原朔太郞 靑猫(初版・正規表現版) 野原に寢る
野原に寢る
この感情の伸びてゆくありさま
まつすぐに伸びてゆく喬木のやうに
いのちの芽生のぐんぐんとのびる。
そこの靑空へもせいのびをすればとどくやうに
せいも高くなり胸はばもひろくなつた。
たいさううららかな春の空氣をすひこんで
小鳥たちが喰べものをたべるやうに
愉快で口をひらいてかはゆらしく
どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか。
草木は草木でいつさいに
ああ どんなにぐんぐんと伸びてゆくことか。
ひろびろとした野原にねころんで
まことに愉快な夢をみつづけた。
[やぶちゃん注:大正六(一九一七)年六月号『秀才文壇』初出。初出標題は「ひろびろとした野原で夢を見る」であるが、朔太郎特有の粘着質の説明調や直喩を減ずれば、同世代の山村暮鳥(朔太郎より二歳年上)と似てくる。しかし、暮鳥のそれっぽい詩群、例えば「風は草木にささやいた」や「雲」は前者が大正七(一九一八)年の、後者は大正一四(一九二五)年の刊行(生前に入稿したが、出版を見ずに逝去した)である。因みに、私は山村暮鳥の全詩篇の電子化注を完遂している。]
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