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2019/02/04

和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 鳥の用(1) 「雄雌」・「巢」・「卵」

 

  鳥之用

 

[やぶちゃん注:以下、鳥部の最後の附録相当の「鳥之用」(鳥(とり)の用(よう))パートである。今までの「魚類」では最後に(「和漢三才圖會 卷第五十一 魚類 江海無鱗魚」の終りの部分)、「蟲部」では前(ここ)にあったが、この場合の「用」とは、広い意味での、その存在の必要に応じた働きや機能及びその呼称・役に立つ部分とその名称及びその処理(調理)方法等を含んだものである。]

――――――――――――――――――――――

【雌皆形小唯鷹之屬雌大於雄】

[やぶちゃん注:以上は、底本では、特異的に、挿絵の上の空白部分に記三行に分けて配されてある。以下は今まで通り、挿絵の下。]

 

Siyu

 

おどりめどり  雄

        【和名乎土里】

        雌

        【和名米土里】

雄雌【熊斯】

        交尾

        【和名都流比】

[やぶちゃん注:「おどり」の「お」はママ。]

 

爾雅云羽屬父曰雄母曰雌凡飛者曰雌雄走者曰牝牡

本綱曰鳥之雌雄不別者以翼知之右掩左者雌左掩右

者雄又燒毛作屑納水中沉者雌浮者雄 交接曰交尾

 

 

【雌は、皆、形、小さし。唯だ、鷹の屬の雌は雄より大なり。】

 

おどり・めどり 雄

        【和名、「乎土里〔(をどり)〕」。】

        雌

        【和名、「米土里」。】

雄雌【〔音、〕「熊斯〔ユウシ〕」。】

        交尾

        【和名、「都流比〔(つるび〕」。】

 

「爾雅」に云はく、『羽ある屬(たぐ)ひ、父を「雄」と曰ひ、母を「雌」と曰ふ。凡そ、飛ぶ者を「雌雄〔(しゆう)〕」と曰ひ、走る者を「牝牡〔(ひんと)〕」曰ふ』〔と〕。「本綱」に曰はく、『鳥の雌雄、別かたざるは、翼を以つて、之れを知る。右、左を掩〔(おほ)〕ふ者は雌なり。左(〔ひだ〕り)、右を掩ふ者は、雄なり。又、毛を燒きて屑〔(くづ)〕と作〔(な)〕し、水中に納(い)れて、沉〔(しづ)〕む者は雌(め〔どり〕)なり。浮く者は雄〔(をどり)〕なり』〔と〕。 交接するを「交尾(つる)びす」と曰ふ。

[やぶちゃん注:標題字の読み仮名相当が常に最初のものであるから、「雄雌」はそれぞれお「雄」が「おどり」(正しくは「をどり」。「乎土里」は正しい表記で、「乎」という漢字の呉音は「ヲ」である)、「雌」が「めどり」という読みであることになる。まあ、「雌雄」の熟語の場合は、中国の書の引用だから音でいいとしても、単独の「雌」「雄」は実は総て「をどり」「めどり」と読んでいるとしなくてはならない。だからこそ、良安は、「沉〔(しづ)〕む者は雌(め〔どり〕)なり」の部分でわざわざ「メ」だけを振っているのである。

「爾雅」著者不詳。紀元前二〇〇年頃に成立した、現存する中国最古の類語辞典・語釈辞典。]

 

Su

 

す      窠【音科】

 

【音曹】

ウ    【和名須一云須久不】

 

五雜組云羽族之巧過於人其爲巢只以一口兩爪而結

束牢固甚於人工大風拔木而巢終不傾也雜木枯枝縱

橫重疉不知何以得膠固無恙此理之不可曉者凡鳥將

生卵先雌雄營巢巢成而後遺卵伏子及長成飛去則空

其巢不復用矣

△按巢之綿密也鷦鷯燕最勝焉杜鵑不能自營而假用

 鸎巢亦一智也島鵯文鳥鴿者孳於樊中

 凡鳥乳化曰孳【鳥産也】

[やぶちゃん注:「乳化」では意味が通じない。東洋文庫版では「孚」(かえる)の誤字として「孚化」で「孵化」の意味で訳している。それを穏当と思うので、特異的に訓読では、「孵化」とした。]

 

 

す      窠【音、「科」。】

 

【音、「曹」。】

ウ    【和名、「須」。

        一〔(い)〕つに云ふ、

        「須久不〔すくふ〕」。】

 

「五雜組」に云はく、『羽族の巧(たくみ)、人より過ぐ。其の巢を爲(つく)る〔や〕、只だ、一つの口・兩の爪(つめ)を以つて、結束、牢固〔(らうこ)〕して、人の工〔(たくみ)〕より甚〔だし〕。大風、木を拔くとも、巢、終〔(つひ)〕に傾かざるなり』。『雜木・枯れ枝、縱橫重疉〔(じゆうわうちようでふ)〕なり。知らず、何を以つて膠固〔こうこ〕して恙無(つヽがな)きことを得るか〔を〕。此れ、理〔(ことわり)〕を曉〔(あきらかに)〕すべからざる者なり。凡そ、鳥、將に卵を生まんとするに、先づ、雌雄〔(しゆう)〕、巢を營(〔つ〕く)る。巢、成りて後、卵を遺〔(のこ)〕す。子を伏し、長成するに及びて、飛び去るときは、則ち、其の巢を空(から)にして、復〔(ふた)〕たび、用ひず』〔と〕。

△按ずるに、巢の綿密なるや、鷦鷯(〔みそ〕さゞい)・燕(つばめ)最も勝〔(すぐ)れたり〕。杜鵑〔(ほととぎす)〕、自ら營(つく)ること、能はずして、鸎〔(うぐひす)〕の巢を假〔りに〕用〔ふ〕。亦、一智なり。島鵯(〔しま〕ひよどり)・文鳥・鴿(いへばと)のごときは樊(かご)の中に孳(こう)む[やぶちゃん注:「子(こ)」を「生(う)む」の訓。]

 凡そ、鳥、孵化〔(ふか)〕するを「孳〔(こう)む〕[やぶちゃん注:音は「シ」或いは「ジ」。]」と曰ふ【鳥の「産(こう)む」なり。】。

[やぶちゃん注:「須久不〔すくふ〕」は「巣を作る」の意の動詞「巣食う」のこと。

「五雜組」「五雜俎」とも表記する。明の謝肇淛(しゃちょうせい)が撰した歴史考証を含む随筆。全十六巻(天部二巻・地部二巻・人部四巻・物部四巻・事部四巻)。書名は元は古い楽府(がふ)題で、それに「各種の彩(いろどり)を以って布を織る」という自在な対象と考証の比喩の意を掛けた。主たる部分は筆者の読書の心得であるが、国事や歴史の考証も多く含む。一六一六年に刻本されたが、本文で遼東の女真が、後日、明の災いになるであろうという見解を記していたため、清代になって中国では閲覧が禁じられてしまい、中華民国になってやっと復刻されて一般に読まれるようになるという数奇な経緯を持つ。当該部の原文を見ると(物部一の七)、

   *

羽族之巧過於入其爲巢只以鬥口兩爪而結束牢固甚於人工大風拔木而巢絡不傾世余在興見雌雄兩鶴於府堂鴟助上謀作巢既趾殫傍依又無枝葉木銜其上輒墜余家中其嗤笑之越旬日而巢成矣鶴身高六七尺雖雄一雙伏其中計寬廣富得丈餘雜木枯枝縱橫重疊不知何以得膠固無恙此理之不可曉者几鳥將生雛然後雌雄營巢巢成而後遺卵伏于及于長成飛去則察其巢不復用矣

   *

とあって、筆者の鶴の営巣の実見談の中間部(太字で示した)をカットしていることが判る。

「膠固〔こうこ〕」膠で固めたようにびくともしないように作ること。

「卵を遺〔(のこ)〕す」卵をそこ(巣の中)に産む。

「子を伏し」子を抱いて。

「鷦鷯」良安が振っている和名の「さざい」は、「小さい鳥」を指す古語「さざき」が転じたものであるが、良安は以前にこの二字に対して「みそさざい」とルビを振っているから、スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属ミソサザイ Troglodytes troglodytes を指す。

「島鵯(〔しま〕ひよどり)」独立項「島鵯」で、私はこれをスズメ目スズメ亜目ヒヨドリ科ヒヨドリ属シロガシラクロヒヨドリ Hypsipetes leucocephalus に同定比定した。

 

Tamago

 

かひご   卵[やぶちゃん字注:後の★を見よ。]

      【和名加比古】

【音鸞】

たまこ   孚【音敷】【孚同卵】

      【訓加倍留】

      毈【音段】

      【訓須毛里】

[やぶちゃん字注:★の「卵」には底本では(つくり)の中央に「ヽ」がないが、諸刊本を見ても、標題と同じ「卵」の字が当てられているので「卵」とした。]

 

卵鳥胎也【和名加比古】凡物無乳者卵生凡鳥之孚卵皆如期故曰孚

【孚者信也】鳥抱恒以爪反覆其卵故从卵不孵者曰毈呂氏

春秋云雞卵多毈楊子曰雌之不才其卵毈矣

△按白花蛇鱣魚無乳而胎生焉以爲異鸖鵰角鷹鳩之

 屬卵二鷹鳶烏鵯告天子及小鳥卵四雞雉鴨山雞之

 屬卵十二三皆夏月則十八日冬月則二十二三日而

 孚化後七十五日而能自噣矣蓋卵形如玉故俗稱玉

 子卵中黄曰【音黄】

[やぶちゃん注:「※」=「穀」-「禾」+黃(同位置に)。]

 凡雞卵忌山椒誤貯於一處則盡腐爛

【音却】 鳥卵空也本綱云吉弔之膏至輕利以銅及瓦器

 盛之則浸出惟鷄卵盛之不漏又云其脂以琉璃瓶

 盛之更以樟木盒貯之不爾則透氣失去也【吉弔蛇屬瑠璃硝子】

 

 

かひご   卵

      【和名、「加比古」。】

【音、「鸞」。】

たまご   孚【音、「敷〔(フ)〕」。】

       【「孚」は「卵」に同じ。】

      【訓、「加倍留〔(かへる)〕」。】

      毈【音、「段〔(タン)〕」。】

      【訓、「須毛里〔(すもり)〕」。】

 

卵、鳥の胎なり【和名、「加比古」。】。凡そ、物、乳〔(ちち)〕無き者、卵生〔(らんせい)〕す。凡そ、鳥の卵を孚〔(かへ)すは〕、皆、期〔(き)〕のごとし。故に「孚」と曰ふ【「孚」とは「信」なり。】鳥、抱〔くに、〕恒〔(つね)〕に、爪を以つて、其の卵を反-覆(かへ)す。故に「卵」に从〔(したが)〕ふ。孵〔(かへ)〕らざる者を「毈(すもり)」と曰ふ。「呂氏春秋〔(りよししゆんじう)〕」に云はく、『雞卵に、毈、多し。楊子〔(やうし)〕が曰はく、「雌の不才なる〔は〕其の卵、毈あり」〔と〕』〔と〕。

△按ずるに、白花蛇(はみ〔へび)〕)・鱣魚(ふか)、乳無くして胎生〔(たいせい)〕す。以つて異と爲す。鸖〔(つる)〕・鵰(わし)・角鷹(くまたか)・鳩の屬〔(たぐひ)〕、卵、二〔つ〕。鷹・鳶(とび)・烏(からす)・鵯(ひよどり)・告天子(ひばり)及び小鳥は、卵、四つ。雞〔(にはとり)〕・雉(きじ)・鴨・山雞(〔やま〕どり)の屬〔(たぐひ)〕、卵、十二、三。皆、夏月は、則ち、十八日、冬月は、則ち、二十二、三日にして孚-化(かへ)りて後〔(のち)〕、七十五日して、能く自〔(みづか)〕ら噣(ついば)む。蓋し、卵は、形(〔かた〕ち)、玉〔(たま)〕のごとくなる故、俗、「玉子」と稱す。卵の中の黄〔なるもの〕を「※〔(きみ)〕」と曰ふ【音「黄」。】。

[やぶちゃん注:「※」=「穀」-「禾」+黃(同位置に)。]

凡そ、雞〔(にはとり)〕の卵、山椒を忌む、誤りて一處に貯ふれば、則ち、盡(〔こと〕ごと)く腐爛す。

(たまごのから)【音、「却」。】 鳥〔の〕卵の空(から)なり。「本綱」に云はく、『吉弔(きつてう)の膏〔(あぶら)〕、至つて輕利にして、以つて銅及び瓦-器〔(かはらけ)〕に之れを盛るに、則ち、浸〔み〕出でる。惟だ、鷄卵のに之れを盛れば、漏れず』〔と〕。『又、云はく、『其の脂、琉璃〔(るり)〕の瓶を以つて、之れを盛(い)れ[やぶちゃん注:「入れ」。]、更に樟木(くすの〔き〕)の盒(はこ)を以つて之れを貯ふ。爾(しから)ざれば、則ち、氣、透き、失去〔(しつきよ)する〕なり【「吉弔」は蛇の屬〔(たぐひ)〕。「瑠璃」は硝子(ビドロ)。】

[やぶちゃん注:「期〔(き)〕のごとし」期日をしっかりと守るようだ。孵化の時日(期日)を違えず、総て一定の期間で大抵は孵化することを言っている。後で、その期間を出してある。

『「孚」とは「信」なり』「孚」(元は「爪」(=「手」)と「子」で乳児を抱きかかえる形象)の字には「誠」とか「真心」の意がある。

「鳥、抱〔くに、〕恒〔(つね)〕に、爪を以つて、其の卵を反-覆(かへ)す」というようなことはしないと思う。孵化を手伝うの嘴で殻を開けてやるのは見たことがあるが。

『故に「卵」从〔(したが)〕ふ』「卵」という漢字の二つの「ヽ」を除去し、中央の縦画二本を一本に合わせて「爪」という字だと言っているとしか思えないが、良安先生、どこから引っ張って来たのか知らないが、これはとんでもない大嘘である。「卵」は象形文字で、(つくり)と(へん)で分離し、陰と陽、卵子と精子が引き寄せ合って(大修館書店「廣漢和辭典」の解字に事実、そう書いてある)生ずる卵の意だそうである。いや! びっくりしたなぁモウ!!!

「毈(すもり)」とは「巣守」のことで、孵化しないで巣に残っている卵。「すもり児(ご)」とも呼ぶ。無精卵か、発生途中で死んでしまった卵を指す。恰も巣を守るようにずっと

あることから。なお、この古語は、転じて「あとに取り残されること・一人残って番をすること。また、その人」や、果ては近世には、「夫が家に寄りつかず、孤閨(こけい)を守る妻を喩えて言う語ともなった。

「呂氏春秋〔(りよししゆんじう)〕」秦の百科全書的史論書。「呂覧」とも呼ぶ。秦の呂不韋編纂。全二十六巻。成立年は未詳であるが、その大部分は戦国末の史料と想定される。八「覧」・六「論」・十二「紀」から成る雑家の代表的書籍。孔子が編纂したとされる五経の一つ「春秋」に倣って、呂が当時の学者を集めて作成させたとされる。そのため、全体として統一されたものではなく、儒家・道家・法家・兵家・陰陽家などの諸説が混在している。但し、古代史の研究上では貴重な文献である。

「楊子」戦国時代の思想家楊朱(生没年未詳)。自己の欲望を満足させることが自然に従うものであるとする為我説を唱え、儒家・墨家に対抗した。その説は「列子」「荘子」などに断片的にみえる。

「不才」愚かなこと。これはまさに「石女(うまずめ)」じゃあないか!? ああ、古代の鷄でさえ、♀は不当に差別されていたのだ!

「白花蛇(はみ〔へび)〕)」私の「和漢三才圖會 卷第四十五 龍蛇部 龍類 蛇類」の「白花蛇(しろくはしや)」を参照されたいが、訓読(今回、手を加えた)と画像のみを示すと、

   *

Hakkajya

しろくはじや     褰鼻蛇〔(けんびだ)〕

           蘄蛇〔(きだ)〕

白花蛇

 

ペツパアヽ シヱヽ

[やぶちゃん字注:底本では「蘄」の字は(くさかんむり)が(へん)の「單」の上のみにかかる。以下同じ。]

 

「本綱」に、『白花蛇の狀は、龍の頭、虎の口、黑質・白花、脇に二十四個の方勝文有り。腹に念珠の斑、有り。口に四つの長き牙有り。尾の上に一の、佛指甲、有り。長さ一、二分、腸(はらわた)の形〔(かたち)〕、連珠のごとく、多く石楠藤に上に在り。其の花葉を食ひて、人、此れを以て、尋〔ね〕獲〔る〕。先づ、沙土一把を撒く。則ち蟠(わだかま)りて動かず。叉(さすまた)を以つて、之れを取る。繩を用ひて懸け、※1刀(かつふり)を起こして、腹を破り、腸物〔(はらわた)〕を去り、則ち尾〔を〕反〔(そら)し〕、其の腹を洗〔ひ〕滌(すゝ)ぎ、竹を以て支〔へ〕定め、屈曲盤起〔して〕、紮-縛(くゝ)り、炕(あぶ)り乾かす。凡そ、蛇、死して目、皆、閉づ。惟だ蘄州より出づる白花蛇は、乾枯〔(ひから)〕びると雖も、目開きて陥(をちい[やぶちゃん注:ママ。])らず。故に「蘄蛇」を以つて、名を擅〔(もつぱら)〕にす。諸蛇の鼻は下に向かふ〔も〕、獨り、此の鼻は上を向かふ。背、花文、有り〔て〕、此れを以つて、名を得。喜〔(このん)〕で人の足を螫〔(さ)〕す。人の室屋の中に入りて、爛瓜〔(らんくわ)〕の氣(かざ)を作〔(な)〕す。之れに嚮(むか)ふべからず。之れ、須速〔(すみや)か〕に之れを辟-除〔(のぞ)〕く。

[やぶちゃん字注:※1=「蠡」+「刂」。]

   *

である。私は最終的に吻端が上に反り返っている形態から、クサリヘビ科のマムシ亜科ヒャッポダDeinagkistrodon acutus ではないかと踏んだ。その経緯及び語注は上記リンク先を見られたい。しかし、残念ながら、本種は卵生で、卵胎生ではないから、再同定が必要である。

「鱣魚(ふか)」「ふか」は大形のサメ類の俗称。特に関西地方以西で、かく呼称ことが多く、山陰地方では「ワニ」とも言う。生物学的には軟骨魚綱板鰓亜綱Elasmobranchiiに属する魚類の中で、原則として鰓裂が体側面に開くものの総称である(例外としてカスザメ目Squatiniformesの鰓孔は腹側から側面に開いている)。サメ類の中には卵胎生の種も確かにいるが、この言い方はちと無謀。「ジョーズ」で悪名高くなってしまったホオジロザメ軟骨魚綱板鰓亜綱ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属ホホジロザメ Carcharodon carcharias)・アオザメ(ネズミザメ科アオザメ属アオザメ Isurus oxyrinchus)・シロワニ(ネズミザメ目オオワニザメ科シロワニ属シロワニ Carcharias taurus:卵食性:胎児が母親の卵巣から産卵される未成熟の卵を食べて成長するタイプ)・ノコギリザメ(板鰓亜綱ノコギリザメ目ノコギリザメ科 Pristiophoridae)などが卵胎生である。

「鸖〔(つる)〕」「鶴」の異体字。

「雞〔(にはとり)〕の卵、山椒を忌む、誤りて一處に貯ふれば、則ち、盡(〔こと〕ごと)く腐爛す」んなことはないと思いますぜ、良安先生?

『「本綱」に云はく、『吉弔(きつてう)の膏〔(あぶら)〕……』これは「巻四十三」の「鱗之一龍類」の「弔」(=「吉弔」)の一節。「集解」の冒頭に、

   *

藏器曰、裴淵「廣州記」云、弔生嶺南、蛇頭龜身、水宿、亦木棲。其膏至輕利、以銅及瓦器盛之浸出。惟雞卵殻盛之不漏。其透物甚于醍醐。摩理毒腫大驗。頌曰、姚和衆「延齡至寶方」云、吉弔脂出福建州、甚難得。須以琉璃瓶盛之、更以樟木盒重貯之、不爾則透氣失去也。

   *

とある。吉弔は広東・広西地方にいるとされた、亀と龍がハイブリッド化したような水棲異獣で、龍蛇の仲間である。如何にも龍っぽい長い首と手足・尾などが、亀にそっくりな甲羅から突き出している。但し、甲羅は亀のそれとは異なり、鱗が何層にも重なっているものだと言う。時に人に捕獲されると、その血・肉・脂肪を練り合わせたものは腫れ物に効く薬となるとされた。私の「和漢三才圖會 卷第四十五 龍蛇部 龍類 蛇類」の「吉弔」を参照されたいが、訓読文の一部と挿絵の画像を示しておく。

   *

Kityou

「本綱」に、『吉弔は嶺南に生まる。龍、毎〔(つね)〕に二卵を生ず。一つは吉弔と爲る。蛇の頭、龜の身。水に宿し、亦、木に〔も〕棲む。』と。

弔脂(ちやうし) 毒腫を摩して大驗あり。又、聾を治す。毎日、半杏仁〔(はんきやうにん)〕ばかりを點じ入るれば、便(すなは)ち、差〔(さい)〕たり[やぶちゃん注:病気が治る。]。其の脂、至つて輕利、銅及び瓦器を以つて之れを盛るに、浸み出づ。惟だ鷄の卵(たまご)の殻(から)に之れを盛れば、漏れず。或いは、須(すべか)らく、瑠璃の瓶を以つて之れを盛り、更に樟(くす)の木の盒(はこ)を以つて重ねて、之れを貯ふべし。爾(しか)らざれば、則ち、氣を透し、失し去るや、醍醐〔(だいご)〕[やぶちゃん注:チーズ。]より甚だし。

   *

「盒(はこ)」香合。

「氣、透き、失去〔(しつきよ)する〕」蒸発して消失してしまう。

「琉璃〔(るり)〕」「硝子(ビドロ)」言わずもがな、、ポルトガル語「vidro」=「ビードロ」=「ガラス」のこと。]

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