久方の空 國木田獨步
久 方 の 空
限りなき空仰ぎつゝ
とこしへの望かたらひし
君がまなざし忘れねば
物の思に堪えかねて
ひとり眺むる久方の
天のはるばる戀しけれ
間近に君はいませども
[やぶちゃん注:初出は『國民之友』明治三〇(一八九七)年五月。上記本文は友人沼波瓊音(ぬなみけいおん)が獨步の死後に編した「獨步遺文」(明治四四(一九一一)年日高有倫堂刊)に拠ったものである。初出では「とこしへの望かたらひし」は「思ふこゝろを語らひし」である。また、「獨步遺文」では、標題が「限なき空」と改題されている。三十八で亡くなった彼は、二十七の時の本詩篇を遺愛していたことがよく窺われる事実である(但し、底本解題では『おそらく、無題、あるいは「限なり空」といふ題の原稿があり、重複したものと察せられる』とはある)。]

