再會 國木田獨步
再 會
この世にまた
君と遇ふことあらんとも
思はざりしに
忘れねばこそ面影の
早くも君を見つけぬる哉
浮世の巷に遇ひ見れば
君はをさな子背に負ひて
よき母親となられたり
君と別れてはや四とせ
四とせが間
世のうきふしに遇ふ每に
別れし君を思ひ出でける
我は昔にかはらねど
君は母御となりにけり
そのをさな子を背に負ひて
玉川の淸きほとり
そのふる里に歸り行け
われは都に
別れし君を思ひつゝ
世のうきふしに
浮世のちまたにさすらはん
この世にまた
君と遇ふことあらんかも
[やぶちゃん注:國木田獨步の明治四一(一九〇八)年六月二十三日の逝去から三年後、友人沼波瓊音(ぬなみけいおん)が編した「獨步遺文」(明治四四(一九一一)年十月日高有倫堂刊)所収。]