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2019/03/17

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 一角(うんかふる/はあた:犀角) (海獣イッカクの角)

 Unikauruうんかふる 巴阿多

はあた   宇無加布留【共蠻語也】

一角

      疑此稱犀之

      通天者乎

△按宇無加布留俗用一角二字阿蘭陀市舶偶來而爲

 官物尋常難得其長六七尺周三四寸色似象牙而微

 黃外靣有筋畾畾如竿麩至末一二尺細尖而筋亦無

 之微曲斜也内有空穴其穴徑四分許價最貴故以白

 犀角充之其白犀角從交趾來【近年是亦希也】其色白不潤長

 者尺餘破之如竹有禾理外靣無筋見其全躰則大異

 矣

――――――――――――――――――――――

辟塵犀爲簪梳帶胯塵不近身 辟寒犀夏月能淸暑氣

辟寒犀其色如金冬月暖氣襲人 蠲忿犀爲帶令人蠲

去忿怒此皆希世之珍

うんかふる 巴阿多

はあた   宇無加布留【共に蠻語なり。】

一角

      疑〔ふらく〕は、此れ、犀の

      通天と稱する者か。

△按ずるに、宇無加布留〔(ウンカフル)〕、俗に「一角」の二字を用ふ。阿蘭陀の市舶〔(しはく)〕[やぶちゃん注:交易船。]、偶(〔たま〕たま)來りて官物[やぶちゃん注:幕府への公納品。]と爲す。尋常〔には〕得難し。其の長〔(た)〕け、六、七尺。周〔(めぐ)〕り三、四寸。色、象牙に似て微〔かに〕黃。外靣、筋〔(すぢ)〕有り、畾畾〔(るいるい)〕[やぶちゃん注:「累々」に同じ。]として、竿麩(さをふ)[やぶちゃん注:棒麩と同義でとっておく。]のごとし。末、一、二尺に至りて細く尖り、筋も亦、之れ無し。微かに曲〔りて〕斜〔めとなる〕なり。内に、空穴、有り、穴〔の〕徑〔(わた)り〕四分[やぶちゃん注:一センチ二ミリメートル。]許り。價ひ、最も貴〔(たか)〕し[やぶちゃん注:非常に高額である。]。故に白犀〔(しろさい)〕の角を以つて、之れに充(あ)つ。其の白犀の角は交趾(カウチ)[やぶちゃん注:ベトナム北部。]より來たる【近年、是れ亦、希れなり。】。其の色、白くして潤〔(うるほ)〕はず。長き者〔は〕尺餘り。之れを破れば、竹のごとき禾理(のぎめ)[やぶちゃん注:節理構造。]有り。外靣、筋無く、其の全躰を見れば、則ち、大きに異なり[やぶちゃん注:少し離れて全体を見た時と、このように割り裂いた場合に観察される様態は大いに異なっているのである。]。

――――――――――――――――――――――

「辟塵犀〔(へきじんさい)〕」は簪-梳〔(かんざし)〕帶-胯〔(おびどめ)〕と爲す。塵、身に近づかず。 「辟寒犀」は、夏月、能く暑氣を淸め、「辟寒犀」は、其の色、金のごとく、冬の月、暖氣、人を襲〔(つつ)〕む[やぶちゃん注:自然に温める。]。 「蠲忿犀〔(しよくふんさい)〕」は帶と爲〔さば、〕人をして忿怒〔(ふんぬ)〕を蠲-去(さ)らしむ。此れ、皆、希世の珍なり[やぶちゃん注:世にも稀なものの中のまたまた珍品というべきものである。]。

[やぶちゃん注:前項の「犀」(サイ)(哺乳綱奇蹄目有角亜目 Rhinocerotoidea 上科サイ科サイ属(タイプ属)Rhinoceros )の角は中実角(ちゆうじつづの)で、サイ類に見られる、中に空洞も骨質の芯もない角で、毛状の繊維(毛ではない)が固まって出来ており、絶えず成長するタイプのものであるから、ここで角の中に穴があると言っている以上、それはサイの角ではない外来語とする「うにかふる」「宇無加布留〔(ウンカフル)〕」はポルトガル語の「ウニコール」(unicorne)で、これは原義は西洋の想像上の動物である一角獣(ユニコーン:ドイツ語:Einhorn/フランス語:licorne:角を持つ馬に似た姿で描かれることが多く、伝承は聖書に溯り、最強の動物で捕らえ難いが、処女(=聖母マリア)には馴れ親しむ。則ち、ユニコーンをイエス・キリストに見立てるキリスト教的寓意譚もある)であるが、実際のその正体は海棲哺乳類であるイッカク(鯨偶蹄目イッカク科イッカク属イッカク Monodon monoceros:一属一種)のの牙である。ウィキの「イッカク」によれば、体長はで約四・七メートル、雌で約四・二メートルに達し、の体重は一・五トンにも『達することがあるが』、は一トンに『満たない。胸びれは短く、成体では先端が上方に反る』。『また、背びれは持たない。尾びれは扇形で、中央に顕著な切れ込みがある』。『身体の大部分は青白い地に茶色の斑点模様であるが、首、頭部、胸びれや尾びれの縁などは黒い。年長の個体の模様は若い個体よりも明るい。老齢の個体はほぼ真っ白になるため、角が確認出来なかった場合などに』同じイッカク科Monodontidae であるシロイルカ(鯨偶蹄目 Whippomorpha 亜目 Cetacea 下目ハクジラ小目イッカク科シロイルカ属シロイルカ Delphinapterus leucas)『と誤認される事もある』。『イッカクの雄の特徴は』一『本の非常に長い牙で』、『この牙は歯が変形したものである。イッカクの歯は上顎に』二『本の切歯があるのみであるが、雄では左側の切歯が長く伸びて牙となる。牙には左ねじ方向の螺旋状の溝がある。その大半が中空で、脆い。先端はつやのある白』で、『体長が最大で』四・七メートル『程度であるのに対し』、『牙の長さは』三メートル、『重さは最大』で十キログラム『に達することもある。通常牙は一本であるが』、五百『頭に』一『頭程度の割合で』二『本有する個体も存在する。この場合、もう一本の角は左側より短いが、同様に左ねじ方向の螺旋状である。また雌は通常、牙を持たないが、約』十五%『程度の確率で』一・二メートル『ほどの華奢な牙が生える。また、野生においては一例、二本の牙を持つ雌が確認されている』。『牙の役割については多くの議論が交わされてきた。以前』『は棲息地である北極海を被う氷に穴を開けるために発達しているという説や反響定位(エコーロケーション)のための器官であるという説、この牙で獲物を気絶させ』、『捕食する説などがあった』が、『最近』『では牙の電子顕微鏡検査によって内側から外へ向かう神経系の集合体と判明し、高度な感覚器として知られるようになった。この牙を高く空中に掲げることにより』、『気圧や温度の変化を敏感に知ることがイッカクの生存環境を保つ手段となっている。 また、大きな牙を持つ雄は雌を魅了することができるようである。ゾウの牙と同様に、イッカクの牙は一旦折れてしまったら』、『再び伸びることはない』。『イッカクは俊敏で活動的な哺乳類であり、主な食料はタラの類の魚である。しかしながら、ある海域では餌としてイカを食べることに適応している。イッカクは』五『頭から』十『頭程度の群を作る。夏の間、いくつかの群が一緒に行動し』、『同じ海岸へ集まることがある。繁殖期には雄同士が牙を使って争う。ただし、この争いは角を使って傷つけ合う戦いではなく』、『互いの角の長さや持ち上げた角度で優劣を決める戦いであるということが近年』、『分かってきた。この争いにより勝った雄は』、『雌を多数従えたハーレムと呼ばれる繁殖集団を形成する』。『イッカクは潜水が得意で』、『典型的な潜水は』毎秒二メートル『程度の速度で』八『分から』十『分間下降して』一千メートル『程度の深海に達し、数分間過ごした後、海面に戻る』千百六十四メートル『まで潜水した記録がある。通常の潜水時間は』二十『分間程度であるが』二十五『分間潜水したという記録も例外的にある』。『イッカクが見られる海域は北極海の北緯』七十『度以北、大西洋側とロシア側である。多くはハドソン湾北部、ハドソン海峡、バフィン湾、グリーンランド東沖、グリーンランド北端から東経』百七十『度あたりの東ロシアにかけての帯状の海域(スヴァールバル諸島、ゼムリャフランツァヨシファ、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島など)などで見られる。目撃例の最北端はゼムリャフランツァヨシファの北、北緯』八十五『度で、北緯』七十『度以南で観察されることは稀である』。『大多数の個体が棲息している海域は、カナダの北やグリーンランドの西のフィヨルドや入り江であると推測されている。航空機を用いた上空からの調査により、生息数は約』四『万頭程度であるという結果が報告されている。上空からは視認できない深度の海中にいたであろう個体数を加算すると、全生息数は』五『万頭を超えると推測される』。『イッカクは回遊』し、『夏の間は海岸近くの海域に移動する。冬が近づき海の凍結が始まると、海岸から離れて浮氷に覆われた海域に移動する。春になり浮氷の裂け目が広がる季節になると、再び海岸に近くに戻ってくる』。『イッカクの主な捕食者はホッキョクグマとシャチである』。『イッカクの棲む海域はヨーロッパの人々にとってはあまりにも北であったため』、十九『世紀までは伝説の動物だった。イヌイットとの交易を通してのみ、イッカクの存在が伝わっていた。イヌイットの間では』、『ある女性が銛にしがみついたまま海に引きずり込まれ、その後、女性はシロイルカにくるまれ、銛は牙となって、それがイッカクとなったという伝説が伝わっている』。以下、角についての記載。『ユニコーン(額に一本の角の生えた馬の姿を持つ伝説上の生物)の角は解毒作用があると考えられたため、中世ヨーロッパではユニコーンの角と偽ってイッカクの角が多数売買された』。『江戸時代の日本にもオランダ商人を通じてイッカクの角はもたらされた。当時の百科事典である』本書「和漢三才図会」にも『イッカクが』かく『紹介されて』おり、後の博物学的文人であった木村蒹葭堂(けんかどう 元文元年(一七三六)年~享和二(一八〇二)年)『の著した「一角纂考」という書物には、鎖国の中で』ありながら、『木村自身が調べあげたイッカクの生態や、ユニコーンなどの西洋の伝説と共に、実際の詳細な骨格や、珍しい』二『本の牙を持つイッカクのことも紹介されている』。『漢方薬の材料としてもイッカクの角は使われ、研究者が標本として、漢方薬店で見つけたイッカクの角を購入した事もある』とある。なお、イカックの角については、サイト根付て」の「ウニコールとセイウチの見分け方が画像もあり、非常によい。それによれば、『ウニコールは、象牙や黄楊よりも大変貴重で、江戸時代には毒消しや難病の漢方薬として同じ重さの金以上の価格で取り引きされていました。そのような薬を根付として携帯することで、同時に薬を携帯するという一石二鳥の意味もあったようです』『ヨーロッパにおいても、ユニコーン伝説を元にして、北洋の船乗り達が持ち帰った一角鯨の角は、貴重品として王侯貴族に献上されたようです。現在でも欧米のオークションで一角鯨の角は、置物や美術品として高値で取り引きされています』とし、リンク先に写真で示された二・五メートルのもので約百万円の値がついているとある。『ウニコールの最大の特徴は、表面にあるその左まき螺旋状のひだ模様です。ウニコールをまねたフェイク根付には、このひだ模様を巧みに真似たものがありますが、その味のある独特の模様は人工的に彫刻して再現することは困難です。簡単に見破れます。よって、江戸時代の根付師には、材質がウニコールであることを証明するため、このひだ模様を意匠の中にわざと一部分残して彫刻した者もいます』とある。必見!

「巴阿多」語源不詳であるが、仏典の漢訳的雰囲気はある。

「通天」前項参照。

「周〔(めぐ)〕り」角の円周。

「白犀〔(しろさい)〕」文字通り受け取ってしまうと、シロサイ属シロサイ Ceratotherium simum となるが、シロサイはアフリカ大陸の東部と南部にしか分布しないので、「交趾(カウチ)[やぶちゃん注:ベトナム北部。]より來たる」もので、鎖国当時の本邦にその角が齎された可能性はゼロに近いと思われ、何より、中実角の問題があるから、シロサイではあり得ず、やはりイカックのそれであろう。

「辟塵犀〔(へきじんさい)〕」中文サイトを見るに、ここは唐の劉恂(りゅうじゅん)の「嶺表録異」の注からの「本草綱目」への引用。

「帶-胯〔(おびどめ)〕」東洋文庫訳は『おびがね』とルビする。

「辟寒犀」ここは五代の王仁裕 (八八〇年~九五六年) の「開元天宝遺事」からの「本草綱目」への引用。

「蠲忿犀〔(しよくふんさい)〕」中文サイトを見るに、唐の蘇鶚(そがく)の「杜陽雜編」からの「本草綱目」の引用。「蠲」には中国語の古語で「免除する」の意がある。]

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