荒野吟 國木田獨步 /國木田獨步詩歌群電子化注~了
○荒 野 吟
功名によりて進み利達の爲めに
退く
此の如き進退我はよくせず
我ニ祖母あり母あり弟あり知己あり亦愛人あり
我が衷には靈動き
いと高き處には神在す
人生天職あり天意に遵ひて天功を亮スるのみ
アヽ救主、四十日四十夜荒野の試み
這般の苦心人知るや否や
[やぶちゃん注:「ニ」及び「ス」のカタカナはママ。以上の詩一篇は、学研の「國木田獨步全集」增訂版(全十卷+別卷)の「第九卷」(昭和五三(一九七八)三月刊)に「○荒野吟」として載るものである。底本解題によれば、『前田重氏の研究ノート中に挾まれてゐた「獨步筆跡」と裏書した寫眞草稿。』無署名ではあるが、筆蹟が獨步のものとみられるので掲げた』とある。詠吟時期や背景は一切不明のようである。老婆心乍ら、言っておくと、「我が衷」の「衷」は「うち」で「心裏」に等しく、「在す」は古語で「います」と読み、「遵ひて」は「したがひて」、「天功」は「天の成した技(わざおぎ)。人智を超えた大自然の働き」の意、「亮スる」は「りやうする(りょうする)」で「扶助する」の意であろう。「這般」は「しやはん(しゃはん)」と読み、「這」は中国語の俗語で「此」の意で、「これら・この辺・このたび・今般。通常、かく、格助詞「の」を伴って用いる。
以上の他にも國木田獨步の詩歌(漢詩)等は散見されるが、底本全集が明確に抽出したものは以上であり、一先ず、これを以って國木田獨步詩歌群電子化注は終りとする。他に見い出し得、追記したいものが発見出来た場合はここで追加する。]
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