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2019/03/07

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 騶虞(すうぐう) (仮想聖獣)

 

Suugu

すうぐう 酋耳

騶虞

 

ツヱ イユイ

[やぶちゃん注:先行する「獬豸(かいち)(仮想聖獣)」で既注であるが、「すうぐう」の読みはママ。]

 

本綱酋耳狀似虎白而黒文尾長於身太平則至不食生

物食自死物見虎豹卽殺之

三才圖會云周文王時見乘之日行千里詩召南壹發五

豝于嗟乎騶虞是【賈誼新書以詩騶虞爲騶人虞人非獸恐鑿也】

 

 

すうぐう 酋耳〔(しうじ)〕

騶虞

 

ツヱ イユイ

 

「本綱」、酋耳は、狀、虎に似て、白くして黒〔き〕文〔(もん)〕あり。尾、身より長し。太平のときは、則ち、至る。生きたる物を食はず、自死の物を食ふ[やぶちゃん注:自然死した動物のみを食う腐肉食である。]。虎・豹を見れば、卽ち、之れを殺す[やぶちゃん注:前条が食の限定条件である以上、殺しても、それらを食うことはしないのである。というより、他の獣を襲って食い殺す一般に実在するトラ(霊性を持たない個体)やヒョウは、騶虞にしてみれば、「仁」のない下等なあるべきでない生き物であり、だからこそ見つければ、殺すのである。後注の「酋耳」引用の説も参照されたいが、殺したそれらを食うとすれば、「騶虞」=「酋耳」説を保持していては甚だ矛盾が生じることになる。]。

「三才圖會」に云はく、『周の文王の時、見る[やぶちゃん注:出現した。]。之れに乘れば、日に行くこと、千里』とあり、「詩」[やぶちゃん注:詩経。]の「召南」に、『壹〔(ひと)〕たび〔に〕五〔つの〕豝〔(めのゐのこ)〕[やぶちゃん注:のイノシシ。]を發〔(う)〕つ。嗟乎(あゝ)騶虞』とあるは、是れなり【「賈誼〔(かぎ)〕新書」は、「詩」の「騶虞」を以つて、騶人〔(すうじん)〕・虞人〔(ぐじん)〕と爲し、獸に非ずとすと。恐らくは、鑿〔(さくせつ)〕[やぶちゃん注:内容が乏しく、真実味の稀薄な説。誤った説。]なり。】』〔と〕。

[やぶちゃん注:以下の冒頭部は先行する「獬豸(かいち)(仮想聖獣)」で既注したものであるが、転写する。この漢字では「すうぐ」或いは「すうご」としか読めない。伝説上の生き物で、「騶吾(すうご)」とも書く(但し、異名とするように語られている「酋耳」は後注する)ウィキの「騶虞」によれば、『品格を持った仁徳を示す瑞獣とされ仁獣と称される』。『中国の文献では一般的に騶虞は、仁徳をもった君主が現れたときに姿を見せる瑞獣として描かれている。姿は虎のようだが』、『性質穏健で獣を捕食しない』とする。「説文解字」では、『尾が体よりも長く、黒い斑点を持つ色の白い虎のようなかたちをしていると描写されている』。「山海経」の『「海内北経」に記載されている騶吾は騶虞とおなじものであると見られており、「騶虞」という表記で記されている文献もある』。『騶吾は体に五彩の色をそなえた虎のような大きさの獣で、尾が体よりも長いとされる』。「三才図会」には、『周の文王の時代に姿を現わした』『という伝承が記されている。明の永楽帝の時代には、開封で捕らえられた騶虞が皇帝に贈られたという記録がある。また山東での目撃談もあったという。この目撃談は黄河の水が澄んだことや、ベンガルまで派遣された鄭和艦隊の分遣隊がキリンを持ち帰ったことなどと併せて瑞祥とされた』。『騶虞の語が登場する最古の例は』「周礼」の『「春官」で』、また、「詩経」に『収められた一篇「騶虞」の題およびその一節』『などもあるが、ここで述べられている騶虞とは狩猟に関することを司る役人の職名(騶人・虞人)』であって、『仁獣としての存在を意味しているかどうかは疑わしいと魯詩学派(漢の時代に』出現した「詩経」解釈学派の一つ)『では説かれていた』。『仁獣である証しとして、肉として食べるのは自然と死んだ獣のみで、生活をしている獣を狩り捕って食べることはないとされている。また、草木などに対しても同様で必用以上に踏み荒らして移動をすることをしないとい』。『同様に獣を捕食しないとされる中国に伝わる霊獣には酋耳(しゅうじ)というものもある』。『オランダの中国学者ヤン・ユリウス・ローデウェイク・ドイフェンダック』(Jan Julius Lodewijk Duyvendak 一八八九年~一九五四年)『は、白い体に黒い模様をもつという記述から』、『永楽帝に贈られたという騶虞はジャイアントパンダ』(哺乳綱食肉目クマ科ジャイアントパンダ属ジャイアントパンダ Ailuropoda melanoleuca『ではなかったか』と一九三〇年代に『主張している。日本ではあまりとりあげられていないが、欧米などでは彼の主張に追随して現在の著述家のなかにも騶虞はもともとジャイアントパンダを指していたものではないかと考える者がいる』とある。

 

「酋耳」(しゅうじ)を良安は「騶虞」の異名扱いしている。これはこの本文冒頭部を「本草綱目」によったことによるもので、「巻五十一上」の「虎」に「附錄」として「酋耳」が掲げられていて、

   *

酋耳 「瑞應圖」云、酋耳似虎大、不食生物見、虎豹卽殺之。太平則至。郭璞云、卽騶虞也。白虎黑文尾長於身。

   *

と郭璞(かくはく 二七六年~三二四年:西晋・東晋の文学者)が言っている「酋耳」=「騶虞」説ことを無批判に受け入れてしまっているからにほかならない。しかし、ウィキの「酋耳」によれば、『古代中国の伝説上の生き物。大きな虎のようなすがたをしているとされる』。『見た目は虎のようで体はとても大きく尾もとても長いが、決して生きた獣を捕食しないという。ただし、虎や豹を目にすると態度は変わり必ず襲ってそれを殺すと伝えられていた』。『狩り捕った虎や豹は食べる』『とされる場合もあるが、酋耳は狩るのみで』、『その肉を食べたりはしないとも語られる』。「三才図会」では、『王者の威勢が四夷に及んだ際に世に出現する獣であるとされている』。「逸周書」の『「王会」の解では』、『各地から贈られて来ためずらしい禽獣魚介のうちのひとつとして贈られていることが記されているが、これを献上している央林』(「三才図会」では「英林山」とする。後のリンク先画像参照)『については』、『西の方角に属する地である』『以外にはあまり詳しく分かっていない』。『同様に獣を捕食しないとされる中国に伝わる霊獣には騶虞(すうぐ)というものもあり、そちらは仁獣とされている』。『性質が似通っていることから同じ霊獣と見られたり、混同が行われて来ており「虎や豹を見ると狩るが、食べない」と言われたりする点や「長い尾が特徴である」とされる点など』、『互いの属性がまじりつつ伝わっている面もある』とある。

「虎」既出既注

「豹」ネコ目ネコ科ヒョウ属ヒョウ Panthera pardus。三つ後で独立項。

『「三才圖會」に云はく……「騶虞」の図は「鳥獸三」のこちらで、解説は次の頁我々は良安の無批判な迂闊な「酋耳」=「騶虞」説丸呑みによって騙されるので注意しなくてはならない。明の王圻の「三才図会」では、「騶虞」と「酋耳」は別な動物として記されてあるからである。良安の引用はご覧の通り「騶虞」のものであるが、「酋耳」は「鳥獸四」のこちらで、「騶虞」とは離れた位置にあり、図も遙かに狼か狐みたような迫力のない、正直、ショボい姿である(但し、天下泰平の世に出現するという内容はあるにはあるので、先の引用の如く伝承での混同混乱が生じたことは事実である)。個人的には「三才図会」の絵姿からは仁獣であるのは「騶虞」としか思えない

「周の文王」(紀元前一一五二年~紀元前一〇五六年)は周王朝の始祖。

『「詩」の「召南」に、『壹〔(ひと)〕たび〔に〕五〔つの〕豝〔(めのゐのこ)〕を發〔(う)〕つ。嗟乎(あゝ)騶虞』とあるは、是れなり【「賈誼〔(かぎ)〕新書」は、「詩」の「騶虞」を以つて、騶人〔(すうじん)〕・虞人〔(ぐじん)〕と爲し、獸に非ずとすと。恐らくは、鑿〔(さくせつ)〕なり。】』「詩経」の「国風」の「召南」にある「騶虞」は以下(二章)。

   *

 

  騶虞

 

彼茁者葭

壹發五豝

于嗟乎騶虞

 

彼茁者蓬

壹發五豵

于嗟乎騶虞

 彼(か)の茁(さつ)たる者は葭(よし)

 壹たび發して 五豝(ごは)

 于嗟乎(あああ) 騶虞よ

 彼(か)の茁(さつ)たる者は蓬(よもぎ)

 壹たび發して 五豵(ごしよう)

 于嗟乎(あああ) 騶虞よ

 

   *

「茁」は草の芽がさっと出ることで、春の季節の始まりを指し、それは同時に狩りの時節の到来を意味する。「壹發」ただ一度、弓矢を放てば。「五豝」はその国の資源の豊饒の言い換え。参考にした一九五八年岩波書店刊「中国詩人選集 詩經國風」(吉本幸次郎註)では、やはり『なさけぶかい』仁獣、『義(みち)ある獣』である騶虞とし、『なお漢の魯詩学派』((漢代に出た「詩経」解釈学派の一つ)『では、騶虞を狩場をあずかる役人と説いていたようであるが、いまそれを顧慮しない』とし、訳では『騶虞〔のようにえらいとのさま〕』という君主を讃えるものとしている。しかし、そうすると、この詩句の表現は比喩としても不適切であると私は感ずる。「蓬」は、吉川氏の註では、江戸時代の本草家小野蘭山は現行の「蓬」、則ち、キク亜科ヨモギ属変種ヨモギ Artemisia indica var. maximowicziiではなく、キク目キク科 Asteraceaeムカシヨモギ属(ヒメジョオン属・エリゲロン属)ムカシヨモギErigeron acris var. kamtschticusに比定している。ムカシヨモギは茎高は三十~六十センチメートル。葉は倒披針形から長披針形。九~十月に緩い散房状又は円錐花序を造り、頭花を多数つける。頭花は雌花と雄花とからなるが、雌花に二型がある。一つは細い舌状で、他の一つは細い筒状である。つまり、頭花が三形の小花からなることが特徴である。本邦の中部地方以北の本州から、極東アジアに広く分布する(ここは小学館「日本大百科全書」に拠った)。「豵」は吉川氏は『いのししの一歳のもの』とする。東洋文庫訳では「騶人虞人」の部分に注して、『騶とは天子の所有になる狩り場のことで、騶人虞人とはそこを管理する役人のこと。この説によって先の『詩経』を譯すれば、「一たび矢を放てば五匹の豕をうち取る。ああ見事な騶虞の人々よ」となる』とある。]

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