戀の淸水 國木田獨步
戀の淸水
戀の淸水をくむものは
まごゝろ强くもてよかし
戀しき夢のさめぬ間に
きよき現にうつりなん
天津眞淸水くみつゝも
まごゝろ淺き乙女見よ
黑き血吐きて斃れたり
いつしか夢もさめはてゝ
[やぶちゃん注:初出は『國民之友』明治三〇(一八九七)年三月。「强」は底本では「強」であるが、「抒情詩」原典で変更した。初出は「まごゝろ强くもてよかし」が「眞情强くもてよかし」であり(但し「眞情」で「まごころ」と読ませるつもりであろう)、四行目の「きよき現にうつりなん」(「現」は「うつつ」)が「聖き現にうつりなん」となっている。読みは同じだが、印象は微妙に異なる。なお、この截り拂ってしまったようなコーダは、一見、似たような他の詩篇のそれらに比しても、有意に奇体な印象を与えているように感じられる。]

