國木田獨步 短歌 三首
鳴きつれて行くかりかねの行へさへ
知らではかなき懸にくちなんぬる。
こしかたの夢に焦るゝ現世の
戀てふものは夢にぞありける
武士の心は何と人間はゝ碎けて後の玉と答へん
[やぶちゃん注:以上の三首の短歌は、学研の「國木田獨步全集」增訂版(全十卷+別卷)の「第九卷」(昭和五三(一九七八)三月刊)に「短歌」として載るものである。底本解題によれば、獨步の『短歌はかなりの數にのぼり、書簡、「明治二十四年日記」』、日記『「欺かざるの記」その他に散見する』が、前二首は「獨步遺文」の「韻文篇」の中の、『「戀緖」の總題を有する四首のうち、二首のみが他に見當らないので、こゝに收錄した。この四首には、本間久雄氏所藏の草稿がある。おそらくは、『遺文』に用ひられた原稿と思はれるが、總題の「戀緖」は獨步の筆ではないらしい。はじめの二首、「花に狂ふ……」と、「朝な夕な……」とは『欺かざるの記』の明治二十九年十一月十九日の記述中にある』(ブログでは後掲する)。『終りの二首を、本間氏の好意により、草稿を底本として收錄した』とし、最後の『「武士の心は……」は』の一首は、『水谷眞熊のノート『金蘭帖』中から採錄した』とある。一首目の抹消線は本文の注記に従って再現したものである。なお、俳句と同様、「欺かざるの記」と書簡内の短歌は別に後に電子化する。]
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