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2019/04/15

落葉の歌 清白(伊良子清白)

 

落葉の歌

 

冬は美晴(びせい)の日ぞ多き

東京の天(てん)朝な朝な

不二を篩(ふる)ひて山の手の

庭は落葉の頻りなり

 

夜におき結ぶ初霜に

濃きもうすきも色かへて

日出でぬひまのきららかさ

箒(ははき)知らぬが眺めなり

 

いくさをはりて凱旋の

日に日にきこゆらつばの音(ね)

御旗たてたる軒端(のきば)より

降るも金(こがね)の木の葉かな

 

街巷(ちまた)をはさむ篠(すず)かけの

梢はすきて灯(ひ)の海の

彼方は明かし流れ入る

堆葉(うずは)は河と疑はる

 

斗牛(とぎう)の間暗うして

曇りがちなる星の空

急ぐ落葉の頃なれば

ちぎれし雲のみだれとぶ

 

十年(ととせ)も束の間すぎさりて

馴るるに早き佗住みの

窓を隔ててさらさらと

落つる木の葉をなつかしむ

 

[やぶちゃん注:明治三九(一九〇六)年一月一日発行『文庫』初出。署名は「清白」。伊良子清白満二十八歳。この前年の五月末、鳥取市の漢学者森本歓一・なかの長女で鳥取県女子師範学校附属小学校訓導であった幾美(えみ)と結婚、翌六月二十七日、当時、勤務していた帝国生命保険の保険検査医として東京へ転任、新妻とともに旧赤坂区新町四丁目に新居を構えた(現在の港区赤坂のこの中央附近と推定される。富士山は西南西に当たる)。日露戦争はその二ヶ月後の九月一日に休戦、翌月十月十四日にポーツマス条約批准によって終結している。

「斗牛」二十八宿の斗宿と牛宿。斗は射手座の一部、牛は山羊座の一部で、ともに南方の天にある。

 初出は以下。最終連を大きく改変している。

   *

 

 

落葉の歌

 

冬は美晴(びせい)の日ぞ多き

東京の天、朝な朝な

不二を篩(ふる)ひて山の手の

庭は落葉の頻なり

 

夜におき結ぶ初霜に

濃きも淡きも色更へて

日出でぬまのきららかさ

箒(ははき)知らぬが眺なり

 

戰終りて凱旋の

日に日にきこゆ町の内

御旗樹てたる軒端(のきば)より

降るも金(こがね)の木の葉かな

 

街巷を挾む櫻木の

果は夕の鐘の海

音を慕ひて流れ入る

堆葉(うずは)は河と疑はる

 

斗牛(とぎう)の間暗くして

曇りがちなる星の空

急ぐ落葉の頃なれば

しめらぬ雲の亂れ飛ぶ

 

時雨のあめか木の葉かと

うたひし古歌を思ひいで

枕欹て蕭々と

落つる響を聽けるかな

 

   *

初出最終連の「欹て」は「そばだて」。]

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