雨後 伊良子清白
雨 後
午前二時――
雨の上がつたあとの木々の滴り
どこかで御詠歌の鉦(かね)の音
また餘勢をのこす波のひびき
そして海から海へ
劈(つんざ)くが如き海鳥の叫號
一つ一つ星があらはれて
離々たる雲の姿
うしろの山には
晴天の風が起つてゐる
[やぶちゃん注:「船は進む」の私の冒頭注を必ず参照されたい。
「御詠歌」霊場巡りの巡礼や浄土宗の信者などが、鈴を振りながら、哀調を帯びた節回しで声を引いて歌う、仏の徳などを讃えた歌。「詠歌」は、もともとは単に「歌を詠むこと」「和歌を声に出して歌うこと・作ること」を意味するが、それが限定された「御詠歌」となる背景には、特に中世に於ける仏教と和歌との密接な関係があると見られ、その発生は室町以後と推定されている。伝承上では西国三十三番札所に残る三十五の御詠歌の源を花山院に求めるが、これは疑わしい(小学館「日本国語大辞典」に拠った)。]

