和漢三才圖會卷第三十八 獸類 貓(ねこ) (ネコ)
ねこ 家貍
貓【音苗】
金花貓【出月令廣
義猫爲
妖者也】
ミヤ◦ウ
本綱貓其名自呼捕鼠小獸也有黃黒白駁數色貍身而
虎靣柔毛而利齒以尾長腰短目如金銀及上齶多稜者
爲良其睛可定時【子午卯酉如一線 丑未辰戌如棗核 寅申巳亥如滿月 其時時睛形變也】
其鼻端常冷惟夏至一日則煖性畏寒而不畏暑能晝地
卜食隨月旬上下囓鼠首尾皆與虎同其孕也兩月而生
一乳數子但有自食之者俗傳牝猫無牡但以竹箒掃背
數次則孕或用斗覆貓於竃前以刷箒頭擊斗祝竈神而
求之亦孕此與以雞子祝竈而抱雛者相同俱理之不可
推者也貓有病以烏藥水灌之甚良世傳薄荷醉貓死貓
引竹物類相感然耳
猫尿 諸蟲入耳滴入之卽出取尿法以薑或蒜擦牙鼻
或生葱紝鼻中卽遺出
仲正
夫木眞葛原下はひありくのら猫のなつき難は妹が心よ
万寳全書云猫純黃純白純黒者佳
△按猫春牡喚牝秋牝喚牡而乳大抵春秋二度生子秋
子多難育性畏寒也凡六十日而産生一七日始開眼
經三旬始自食飯【其吸乳之間糞溺皆母猫舐尽令不汚至獨食物則自行糞處】過一
月半猫重可十兩則離乳能育凡十有余年老牡猫有
妖爲災者相傳純黃赤毛者多作妖惟於暗室以手逆
撫背毛則放光或舐油者是當爲恠之表也凡犬毎嫉
猫噬殺不欲吃其肉止殺棄耳不如猫嗜鼠也
凡病猫用烏藥或生硫黃汁或鰊魚泥鰌天蓼子皆能
治又方用胡椒末【以水爲丸】猫雖苦其辛味能能愈【甚神効】但捉
頭引上之露脚爪者不治如躄則灸尾根立愈猫食鳥
貝膓則耳缺落往往試之然
三才圖會云猫耳經捕鼠後則有缺如鋸如虎食人而鋸
耳也酉陽雜組云猫洗靣過耳則客至其黒猫闇中逆循
其毛若火星
*
ねこ 家貍〔(かり)〕
貓【音、「苗」。】
金花貓(ねこまた)
【「月令廣義〔(がつりやう
こうぎ)〕」に出づ。『猫、
妖を爲す者なり』〔と〕。】
ミヤ◦ウ
「本綱」、貓、其の名、自ら呼びて、鼠を捕ふ小獸なり。黃・黒・白・駁〔(ぶち)〕の數色有り。貍の身にして、虎の靣〔(おもて)〕、柔き毛にして、利〔(と)〕き齒あり。尾、長く、腰、短く、目〔は〕金銀のごとく、及び上齶(うはあご)に稜(かど)多き者を以つて、良と爲す。其の睛(ひとみ)時を定むべし【子・午・卯・酉は一線のごとし。丑・未・辰・戌は棗〔(なつめ)の〕核〔(さね)〕のごとし。寅・申・巳・亥は滿月のごとし。其の時時、睛の形、變ずるなり。】。其の鼻の端、常に冷ゆる。惟だ、夏至の一日は、則ち、煖かなり。性、寒を畏れて暑を畏れず。能く地に晝〔(かく)〕して、食を卜〔(うらな)〕ふ。月〔の〕旬に隨ひて上下の鼠の首尾を囓〔(かじ)〕る〔ことは〕、皆、虎と同じ。其の孕むや、兩月〔(ふたつき)〕にして生ず。一乳〔に〕數子あり[やぶちゃん注:一回の出産で数匹の子を産む。]。但し、自ら之れを食〔ら〕ふ者、有り。俗に傳ふ、「牝猫。牡、無きに但〔(ただ)〕竹箒〔(たけははき)〕を以つて、背を掃(は)く〔こと〕數次にして、則ち、孕みす。或いは斗(ます)を用ひて貓を竃の前に覆ひ、刷箒〔(はけははき)〕の頭を以つて斗〔(ます)〕を擊ち、竈神に祝ひて之れを求めても亦、孕みす。此れ、雞子を以つて竈を祝ひて雛を抱〔(いだ)〕く者と、相ひ同じ〔なり〕。俱に理〔(ことはり)〕の推すべからざる者なり。貓、病ひ有れば、烏藥の水を以つて之れに灌ぎて、甚だ良し。世に傳ふ、「薄荷、貓を醉はし、死貓、竹を引く」〔てふ〕物の類ひ、相ひ感じて然るのみ。
猫の尿(いばり) 諸蟲、耳に入るに、之れを滴り入れば、卽ち、出づ。尿を取る法〔は〕薑〔(しやうが)〕或いは蒜〔(にんにく)〕を以つて牙・鼻に擦(す)り、或いは、生の葱(ひともじ)を鼻の中に紝〔れば〕、卽ち遺〔(や)り〕出づ。
仲正
「夫木」
眞葛原〔(まくづはら)〕下〔(した)〕はひありくのら猫の
なつき難きは妹〔(いも)〕が心よ
「万寳全書〔(ばんほうぜんしよ〕」に云はく、『猫、純黃・純白・純黒なる者、佳なり』〔と〕。
△按ずるに、猫、春は、牡、牝を喚〔(よ)〕び、秋は、牝、牡を喚びて乳(つる)む。大抵、春・秋、二度、子を生む。〔然れども〕秋の子は、多く、育ち難し。性、寒を畏ればなり。凡そ六十日にして産す。生れて一七日(ひとなぬか)にして、始めて、眼を開き、三旬[やぶちゃん注:三十日。]を經て、始めて自ら飯を食ふ【其の乳を吸ふの間の糞・溺〔(ゆばり)〕は、皆、母猫、舐め尽して汚さざらしむ。獨り物を食ふに至りて、則ち、自ら糞〔する〕處に行く。】一月半を過ぎ、猫の重さ、十兩[やぶちゃん注:明代換算で三百七十三グラム。]ばかり〔となれば〕、則ち、乳を離れて、能く育む。凡そ十有余年の老牡猫は、妖(ば)けて災ひを爲す者、有り。相ひ傳ふ、「純黃赤毛の者、多くは、妖を作す。惟だ、暗室に於いて手を以つて背の毛を逆さに撫でて、則ち、光りを放ち、或いは、油を舐める者、是れ、當に恠を爲すべきの表はれなり」〔と〕。凡そ、犬、毎〔(つね)に〕猫を嫉〔(ねた)〕み、噬〔(く)ひ〕殺す。其の肉を吃〔(くら)は〕んと欲するにあらず。止(たゞ)殺し棄(す)つるのみ。猫の鼠を嗜〔(この)〕むがごとくならざるなり。
凡そ病〔める〕猫には「烏藥」を用ひ、或いは生の「硫黃汁」或いは鰊-魚(にしん)・泥鰌(どぢやう)・天蓼子(またゝび)〔も〕皆、能く治す。又〔の〕方〔(はう)に〕、胡椒の末を用ふ【水を以つて丸と爲す。】。猫、其の辛味に苦しむと雖も、能く愈〔(い)〕ゆ【甚だ神効〔あり〕。】。但〔し〕、頭を捉(とら)へて之れを引き上げ、脚の爪を露〔(あら)〕はす者、治せず。如〔(も)〕し、躄(こしぬけ)[やぶちゃん注:腰抜け。]に〔なれるもの〕は、則ち、尾の根に灸して立ちどころに愈ゆ。猫、鳥貝(とりがい[やぶちゃん注:ママ。])の膓(わた)を食ふときは、則ち、耳、缺け落つ。往往〔にして〕之れを試みるに、然り。
「三才圖會」に云はく、『猫の耳、鼠を捕ることを經て後、則ち、缺〔(か)け〕有りて、鋸〔(のこ)〕のごとし。虎、人を食〔(くら)〕ひて鋸の耳となるがごときなり』〔と〕。「酉陽雜組」に云はく、『猫、靣〔(かほ)〕を洗ひて、耳を過ぐるときは、則ち、客、至る。其の黒猫、闇-中(くらがり)に、逆に其の毛を循〔(めぐら)さば〕火〔の〕星〔の出づるが〕ごとし』〔と〕。
[やぶちゃん注:食肉目ネコ亜目ネコ科ネコ属ヨーロッパヤマネコ亜種イエネコ Felis silvestris catus。いやいや! それにしても! この寺島良安の引用と評言の記載は最初から最後まで徹頭徹尾飽きさせず面白い! 面白過ぎる! 古典的な伝統的博物学の手法で民俗学的「猫」観を記述しているからである。こんな痛快な「ネコ学」を読んでしまうと、辛気臭い生物学的猫記述など引用する気が完全に失せる。ウィキの「ネコ」でも何でもお読みになられるがよい。にしても、良安がネコを「獣類」に入れて、「畜類」としなかったのは興味深い(鼠を捕らせるのに飼えば、立派に蓄類だのに)。彼の当時の観察からも、猫は飼育されても決して人に阿(おもね)ることの少ない野性の属性を損じていないと感じさせたのであろうか。
「家貍〔(かり)〕」「貍」は「狸」に同じ。食肉目イヌ科タヌキ属タヌキ Nyctereutes procyonoides。
「貓【音、「苗」。】」拼音「māo」(マァォ)。「貓、其の名、自ら呼」ぶというのが腑に落ちる。
「金花貓(ねこまた)」無論、この「ねこまた」は良安の当て訓で、標題項目でこうした漢名に敢えて猫の妖怪「ねこまた」(猫又)というルビを振るのは珍しい。ウィキの「猫又」によれば、『中国では日本より古く隋時代には「猫鬼(びょうき)」「金花猫」といった怪猫の話が伝えられていたが、日本においては鎌倉』『前期の藤原定家による』「明月記」の』『天福元』(一二三三)年八月二日の『記事に、南都(現・奈良県)で「猫胯」が一晩で数人の人間を食い殺したという記述がある。これが、猫又が文献上に登場した初出とされており、猫又は山中の獣として語られていた』、但し、「明月記」の「猫又」は『容姿について「目はネコのごとく、体は大きい犬のようだった」と記されていることから、ネコの化け物かどうかを疑問視する声もあり』、『人間が「猫跨病」という病気に苦しんだという記述があるため、狂犬病にかかった獣がその実体との解釈もある』。また、鎌倉末期の随筆「徒然草」(元弘元(一三三一)年頃成立)にも『「奥山に、猫またといふものありて、人を食ふなると人の言ひけるに……」と記されている』のはご存じ通りで、既に江戸後半には、化け猫の漢名として「金花貓」は市民権を得ていたようである。私の電子化した諸テキストでも化け猫の話は枚挙に遑がないのだが、まあ、「柴田宵曲 妖異博物館 化け猫」でもリンクしておこうか。
「月令廣義〔(がつりやうこうぎ)〕」東洋文庫訳の「書名注」によれば、『二十五巻。明の馮誼(ふうぎ)撰。前半は文帝への上奏文、後半は弟子との問答で、政治・道徳について論じた書』とある。
「子」凡そ午後十一時頃から午前一時頃。別説もあるが、これが一般的(以下同じ)。
「午」凡そ午前十一時頃から午後一時頃。
「卯」凡そ午前五時頃から午前七時頃。
「酉」凡そ午後五時頃から午後七時頃。
「丑」凡そ午前一時頃から午前三時頃。
「未」凡そ午後一時頃から午後三時頃。
「辰」凡そ午前七時頃から午前九時頃。
「戌」凡そ午後七時頃から午後九時頃
「棗〔(なつめ)〕」バラ目クロウメモドキ科ナツメ属ナツメ Ziziphus jujuba。その果実は核果で長さ二センチメートルほどの卵型を呈する。
「寅」凡そ午前 三時頃から午前 四時頃。
「申」凡そ午後 三時頃から午前 五時頃。
「巳」凡そ午前 九時頃から午前十一時頃。
「亥」凡そ午後 九時頃から午後十一時頃。以上、二十四時間の完全対称時間枠が割り当てられていることが判る。
「地に晝〔(かく)〕して、食を卜〔(うらな)〕ふ」地面に爪で何か絵か図形のようなものを描いて得られる餌食の在処(ありか)を占う。
「月〔の〕旬に隨ひて上下の鼠の首尾を囓〔(かじ)〕る」一ヶ月の上・中・下旬。それに合わせて、主食である鼠を頭から食うか、尾から食うかが、鼠の習性の中で喰らう作法として厳密に定められてあるというのである。
「皆、虎と同じ」先行する「虎」の項に、『虎、衝破〔(しようは)〕を知り[やぶちゃん注:敵を倒すに有利な方角と時を知って。]、能く〔それを〕地に畫〔(ゑをか)き〕て、奇・偶を觀て[やぶちゃん注:対象の奇数と偶数を判じて。陰陽説では奇数は陽で、偶数は陰。]、以つて食〔(くひもの)〕を卜(うらな)ひ、〔その〕物〔を食ふに〕、月旬の上・下に隨ひて、其の〔獲物の〕首・尾を囓〔(かじ)〕る〔ことを變ふる〕』とあった。虎は哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属トラ Panthera tigris だから、まんず、類縁種だからね。
「斗(ます)を用ひて貓を竃の前に覆ひ、刷箒〔(はけははき)〕の頭を以つて斗〔(ます)〕を擊ち、竈神に祝ひて之れを求めても亦、孕みす。此れ、與雞子を以つて竈を祝ひて雛を抱〔(いだ)〕く者〔あること〕を以つて相ひ同じ〔なり〕」時珍は「俱に理〔(ことはり)〕の推すべからざる者なり」と人智の理論を超越した玄妙な意味を掲げて終わっているのでるが、柳田國男ならテツテ的に、一本、論文を書くこと請け合いだ。
「此れ、雞子を以つて竈を祝ひて雛を抱〔(いだ)〕く者と、相ひ同じ〔なり〕」東洋文庫訳の補注に、「本草綱目」の「禽部 原禽類」の「雞」には、『民間の俗説として、雄が』いないのに産まれた『鷄卵はそれを竈に告げ』て『祈っ』た上で『孵(ふ)化させると』、『雛が孵る、とある』とあるのを指す。「俚人畜鷄無雄即以鷄卵告竈而伏出之」がその原文である。
「烏藥」中国中部原産のクスノキ目クスノキ科クロモジ属クロモジ節テンダイウヤク(天台鳥薬)Lindera strychnifoli。古く秦の始皇帝が不老長寿の霊薬を求めて徐福を日本に派遣したのは有名だが、この時の霊薬の候補がこのテンダイウヤクであるともされている漢方では。主に塊根(かいこん)部を乾燥したものを生薬で「鳥薬」「天台鳥薬」と呼ぶ(後者はは中国の天台山(浙江省東部の天台県の北方にある霊山。最高峰は華頂峰で標高千百三十八メートル)で産出されるものが最も効き目があって貴重とされることに由来する。神経性胃腸炎・腸管の癒着による軽度の通過障害などに見られる、臍周辺の疼痛・腹鳴・泥状便などの症状に効果があるとされ、月経痛にも用いる。日常的には芳香性健胃薬・鎮痛薬として健胃整腸・腸蠕動促進作用を持つとする。また、新鮮な葉は揉み潰して油で炒め、関節リューマチや打撲傷に塗布して効果があるという。
「死貓、竹を引く」今一つ、どのような怪異のシチュエーションを指すのか不明。識者の御教授を乞う。
「紝〔れば〕」読み不詳。この字は「機を織る・紡(つむ)ぐ」の意であるから、今一つ意味が採れない。東洋文庫訳は『鼻の中につっこむと』と訳している。シチュエーションとして穏当ではあるが、そう訳してよい根拠が判らない。紡いだ形のような葱を機織の梭のように指し込むというのは、迂遠な解釈で、容易には受け入れ難い。
「遺〔(や)り〕出づ」洩らし出す。
「仲正」「夫木」「眞葛原〔(まくづはら)〕下〔(した)〕はひありくのら猫のなつき難きは妹〔(いも)〕が心よ」「仲正」は源仲正(生没年不詳)平安末期の武士で歌人。清和源氏。三河守源頼綱と中納言君(小一条院敦明親王の娘)の子。六位の蔵人より下総、下野の国司を経て、兵庫頭に至った。父より歌才を受け継ぎ、「金葉和歌集」以下の勅撰集に十五首が入集している。「日文研」の「和歌データベース」の「夫木和歌抄」で見ると、「巻二十七 雑九」の一首であるが、そこでは
まくすはら したはひありくのらねこの なつけかたきは いもかこころか
で「なつき」「なつけ」に異同が認められる。自動詞と他動詞の違いで、受け取った印象がかなり違う。個人的には「なつき」がいいけれど、まあ、多分、「なつけ」だろうなあ。
「万寳全書」東洋文庫訳の「書名注」に、『無名氏撰。清の毛煥文増補の『増補万宝全書』がある。三十巻。百科事典のたぐい』とある。
「生れて一七日(ひとなぬか)にして、始めて、眼を開き」東洋文庫(五書肆版)ではここを『十七日』とする。しかし、ネコのサイトを見るに、仔猫の両目が開く正しい期間は平均生後十日前後とされるとあり、「一七日」、生まれてから七日後で当日を数えなければ、八日で、現行のそれに近く、東洋文庫のそれは長過ぎる。
「凡そ、犬、毎〔(つね)に〕猫を嫉〔(ねた)〕み、噬〔(く)ひ〕殺す。其の肉を吃〔(くら)は〕んと欲するにあらず。止(たゞ)殺し棄(す)つるのみ」私は寡聞にしてそうした事実を知らない。
「鰊-魚(にしん)」条鰭綱ニシン目ニシン科ニシン属ニシン Clupea pallasii。
「泥鰌(どぢやう)」条鰭綱骨鰾上目コイ目ドジョウ科ドジョウ属ドジョウ Misgurnus anguillicaudatus。
「天蓼子(またゝび)」ツバキ目マタタビ科マタタビ属マタタビ Actinidia polygama。ウィキの「マタタビ」によれば、『効果に個体差はあるものの、ネコ科の動物は揮発性のマタタビラクトンと総称される臭気物質イリドミルメシン、アクチニジン、プレゴンなど』『に恍惚を感じることで知られており、イエネコがマタタビに強い反応を示すさまから「猫に木天蓼」ということわざが生まれた。ライオンやトラなどネコ科の大型動物も』、『イエネコ同様』、『マタタビの臭気に特有の反応を示す。なおマタタビ以外にも、同様にネコ科の動物に恍惚感を与える植物としてイヌハッカ』(キク亜綱シソ目シソ科イヌハッカ属イヌハッカ Nepeta cataria。ウィキの「イヌハッカ」によれば、種小名の『カタリア(cataria)はラテン語で』「猫」に関わる『意味があり、また英名の』「Catnip」には『「猫が噛む草」という意味がある。その名の通り、イヌハッカの精油にはネペタラクトンという猫を興奮させる物質が含まれている。猫がからだをなすりつけるので、イヌハッカを栽培する際には荒らされることも多いが、この葉をつめたものは猫の玩具としても売られている』とある)『がある』とある。
「猫、鳥貝(とりがい[やぶちゃん注:ママ。])の膓(わた)を食ふときは、則ち、耳、缺け落つ。往往〔にして〕之れを試みるに、然り」トリガイ斧足(二枚貝)綱マルスダレガイ目ザルガイ科トリガイ属トリガイ Fulvia mutica であるが、これはイカサマ話ではなく、事実である。光アレルギー(光過敏症)による炎症による劇症型症状である。現在これは、内臓に含まれているクロロフィルa(葉緑素)の部分分解物ピロフェオフォーバイドa( pyropheophorbide a )やフェオフォーバイドa( Pheophorbide a )が原因物質となって発症する光アレルギー(光過敏症)の結果であることが分かっている。サザエやアワビの摂餌した海藻類の葉緑素は分解され、これらの物質が特に中腸腺(軟体動物や節足動消化器の一部。脊椎動物の肝臓と膵臓の機能を統合したような消化酵素分泌器官)に蓄積する。特にその中腸線が黒みがかった濃緑色になる春先頃(二月から五月にかけて)、毒性が最も高まるとする(ラットの場合、五ミリグラムの投与で耳が炎症を越して腐り落ち、更に光を強くしたところ死亡したという)。なお、なぜ耳なのかと言えば、毛が薄いために太陽光に皮膚が曝されやすく、その結果、当該物質が活性化し、強烈な炎症作用を引き起すからと考えられる。これについては、さんざん書いてきた。例えば、「大和本草卷之十四 水蟲 介類 鳥貝」を見られたい。]
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