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2019/04/08

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 麞(くじか・みどり) (キバノロ)

Kujika

 

 

 

くじか    麕【音君】 麏【同】

 みとり   麌【牡】  麜【牝】

       麆【子】

【獐同】

       【和名久之加

       俗云美止利】

 

本綱麞秋冬居山春夏居澤淺草中多有之似鹿而小無

角黃黒色大者不過二三十斤雄者有牙出口外其皮細

軟勝於鹿皮夏月毛毨而皮厚冬月毛多而皮薄也其大

者曰麃【音庖】古語云四足之美有麃是也【毨音先毛落更生整理也】

一種有銀麞白色云王者刑罰中理則出之

古今注云鹿有角不能觸麞有牙不能噬

三才圖會云麕之性怯飮水見影無不驚奔故人食其心

者多恇怯不知所爲

△按麞皮自暹羅來名美止利或稱奈阿比者乎以爲

 韤裘軟美爲最上

 

 

くじか    麕〔(くん)〕【音、「君」。】

       麏【同じ。】

 みどり   麌〔(ぐ)〕【牡。】

       麜〔(りつ)〕【牝。】

       麆〔(しよ)〕【子。】

【「獐」、同じ。】

       【和名、「久之加」。

       俗に云ふ、「美止利」。】

 

「本綱」、麞、秋冬は山に居り、春夏は澤に居る。淺〔き〕草の中に多く之れ有り。鹿に似て、小さく、角、無し。黃黒色。大なる者〔にても〕二、三十斤[やぶちゃん注:明代の一斤は五百九十六・八二グラムなので、十二キログラム弱から十八キログラム弱。但し、この数値は私が同定したキバノロの数値としては大き過ぎる。]に過ぎず。雄なる者に牙有り、口の外に出づ。其の皮、細く軟(やはら)かにして、鹿皮より勝れり。夏月は、毛、毨〔(ととの)ひて〕[やぶちゃん注:「鳥獣の毛が生え替わり、綺麗に生え揃う」の意の古語。]、皮、厚く、冬の月、毛、多くして、皮、薄し。其の大なる者を「麃〔(はう)〕」【音、「庖」。】と曰ふ。古語に云はく、「四足の美、麃に有り」[やぶちゃん注:四足獣の中で最も美しいのは麞である。]といふは是れなり【毨は、音、「先」、毛、落ちて、更に生いて、整-理(とゝな)ふことなり。】。

一種、「銀麞」有り、白色。云はく、「王者〔が〕刑罰、理に中〔(あた)〕るときは[やぶちゃん注:王が、裁判に於いて、正しい裁定を下して処罰を正当に行っている時には。]、則ち之れ、出づ」〔と〕。

「古今注」に云はく、『鹿は角有りて觸(つ)く能はず、麞は牙有りて噬〔(か)〕む能はず[やぶちゃん注:その牙で噛みつくことは出来ない。]』〔と〕。

「三才圖會」に云はく、『麕の性、怯にして、水を飮みて、影を見〔れば〕驚奔せざることいふこと無し。故に、人、其の心〔臟〕を食ふ者、多く恇-怯(おくびやう)にして〔→なりて〕爲す所を知らず』〔と〕。

△按ずるに、麞の皮、暹羅〔(シヤム)〕[やぶちゃん注:現在のタイ王国の前身。]より來たる。「美止利」と名づく。或いは、「奈阿比(なれあひ)」と稱する者か。以つて裘〔(かは)の〕韤〔(たび)〕と爲〔すに〕、軟〔かにして〕美〔(は)し〕。最上と爲す。

[やぶちゃん注:鯨偶蹄目反芻亜目シカ科オジロジカ亜科ノロジカ族キバノロ属キバノロ Hydropotes inermis朝鮮半島及び中国の長江流域の、アシの茂みや低木地帯に棲息する、体高四十五~五十五センチメートル、体重九~十一キログラムの小形のシカ。シカの仲間であるが、角はなく、上顎の犬歯が牙状になっており、特に♂では刀状に曲がった犬歯が口外に突き出ている。尾は短く、毛色は黄褐色。蹄の幅は比較的広い。単独又はつがいでいることが多い。シカ類中では多産で、五~六月に一回に一~三子を産み、時に七子を見ることもある。子の毛色は暗褐色で、背に小さな白斑がある。発情期は晩秋から初冬で、この時期の♂は牙を振るって闘争する。アシやその他の植物を食べ、寿命は飼育下で約十年である(小学館「日本大百科全書」に拠る)。

「みどり」(字下げはまま)「美止利」呼称由来不詳。小学館「日本国語大辞典」にも出ない。識者の御教授を乞う。

「獐」音「シヤウ(ショウ)」。懐かしいねえ! 中島敦の「山月記」の授業(リンク先は私のオリジナル授業案)で、原典の「人虎傳」をダイジェストでやったね、あの中のここ(リンク先は当時のオリジナル・プリントの原版PDF画像(私の授業用の汚い書き込み有り))に出てたじゃないか!

「古語」中文サイトを見ると、出典は「陸機詩疏」(西晋の文人陸機(二六一年~三〇三年)の詩の注釈書)らしい。

「銀麞」同定の必要はない。道に則って裁判が行われていれば、出現する銀色のキバノロに似た聖獣だからである。

「古今注」崔豹の代表作で諸書に出る事物について紹介・解説したもので、学術的価値が高いとされるが、東洋文庫訳の「書名注」によれば、『原本はおそらく失われ、現行本は五代の馬縞(ばこう)の『中華古今注』三巻に基づいて作られ』たものとし、『また、この『中華古今注』も、唐の蘇鶚そがく)の『蘇氏演義』二巻に依っていることが明らかにされている』とある。

「奈阿比(なれあひ)」「みどり」同様、由来不詳。同じく識者の御教授を乞う。

「裘(かは)」原義は革袋。]

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