大護摩詣り 伊良子清白
大護摩詣り
竹の籠頭にのせて
楊梅賣(やまももうり)が
今日も海邊の里に來る
梅雨(つゆ)明けの
焦(こ)げつくやうな炎天に
海は紺靑(こんじやう)燃える潮(しほ)
世義寺(せぎでら)の
大護摩(おほごま)焚(た)く日なり
海見れば
高々と旗はうつくし
ほのぼのと白帆は涼し
島々の
船の賑はひ
こどもも乘せて
護摩じやごまじやと
ほたえてゆくよ
註 世義寺は宇治山田市にある古刹、護摩の供養は陰曆六月七日に行はる。
[やぶちゃん注:以上の注は底本では本文ポイント一字下げでポイント落ちであるが、ブラウザの不具合を考えて、引き上げた。初出未詳。
「楊梅(やまもも)」ブナ目ヤマモモ科ヤマモモ属ヤマモモ Morella rubra。六月頃、黒赤色の果実を結び、甘酸っぱく、生で食べられる。
「世義寺(せぎでら)」三重県伊勢市岡本にある教王山(きょうおうざん)神宮寺宝金剛院世義寺(グーグル・マップ・データ)。現在は毎年七月七日の七夕の「柴燈大護摩(さいとうおおごま)」、通称「ごまさん」と、子どもの命名の祈祷で知られる。参照したウィキの「世義寺」によれば、『以前は大護摩で火渡りが行われたが、一般人には危険であるとして』二十『世紀末に廃止された』。『護摩札による祈願成就と護摩木の授与が行なわれ、護摩木は農地の虫除けや家屋の魔除けになるという』とある。]
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