おほしたてたる 伊良子清白
おほしたてたる
おほしたてたる幾本(いくもと)の
菊につきたる秋の蟲
いかりにたヘず火をとりて
のこるくまなくやきにけり
もとより菊は枯れぬれど
今は心のやすくして
暮れ行く秋のわびしさを
ながめ空しく暮すなり
[やぶちゃん注:前と同じく底本には初出記載や校異がないが、本篇は明治三四(一九〇一)年十一月発行の『文庫』に発表した全十二連四パート構成から成る「一よぐさ」の最後の第二パートの全二連を独立させ、一部の表記を改変し、改題したものである。後にその「一よぐさ」全篇を掲げる。
「おほしたてたる」の「おほしたつ」は「生ほし立つ」で「育てる・育成する」の意。]
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