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2019/04/12

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 風貍(かぜたぬき) (モデル動物:ヒヨケザル)

Kazedanuki

 

 

 

かぜたぬき 風母  平猴

      風生獸 狤※

風貍

      【和名加世太奴木】

フヲンリイ

[やぶちゃん注:「※」=「犭」+「屈」。]

 

本綱風狸大如貍如獺其狀如猿猴而小其目赤其尾短

如無其色青黃而黒其文如豹或云一身無毛惟自鼻至

尾一道有青毛廣寸計長三四分其尿如乳汁其性食蜘

蛛亦啖薰陸香晝則蜷伏不動如螬夜則因風騰躍其捷

越巖過樹如鳥飛空中人網得之見人則如羞而叩頭乞

憐之態人撾擊之倐然死矣以口向風須臾復活惟碎其

骨破其腦乃死一云刀斫不入火焚不焦打之如皮囊雖

鐵擊其頭破得風復起惟用石菖蒲塞其鼻卽死也

△按風狸嶺南山林中多有而未聞在于本朝

 

 

かぜたぬき 風母  平猴〔(へいこう)〕

      風生獸 狤※〔(きつくつ)〕

風貍

      【和名「加世太奴木」。】

フヲンリイ

[やぶちゃん注:「※」=「犭」+「屈」。]

 

「本綱」、風狸は大いさ、貍のごとく、獺〔(かはうそ)〕のごとし。其の狀、猿猴のごとくにして、小さく、其の目、赤く、其の尾、短く、無きがごとし。其の色、青黃にして黒し。其の文、豹のごとく、或いは云ふ、「一身に毛無く、惟だ鼻より尾に至り、一道、青き毛、有り」〔と〕。廣さ、寸計り、長さ、三、四分。其の尿〔(ゆばり)〕、乳汁のごとく、其の性、蜘蛛を食ふ。亦、薰陸香〔(くんりくかう)〕を啖〔(くら)〕ふ。晝(〔ひ〕る)は、則ち、蜷〔(とぐろま)きて〕伏し、動か〔ざること〕螬(すくもむし)のごとく、夜、則ち、風に因りて、騰(のぼ)り躍り、其の捷(はや)きこと、巖〔(いはほ)〕を越へ[やぶちゃん注:ママ。]、樹を過〔(よ)〕ぎり、鳥の空中を飛ぶがごとし。人、網し、之れを得て、〔それ、〕人を見るときは、則ち、羞〔ずるが〕ごとし。而して頭を叩き、憐(あはれ)みを乞ふの態(ありさま)〔を成す〕。人、之れを撾(うちたた)き擊するときは、倐然〔(しゆくぜん)〕として[やぶちゃん注:忽ち。]死す。口を以つて風に向くときは、須臾〔(しゆゆ)〕にして[やぶちゃん注:程無く。]、復た活〔(い)け〕り。惟だ、其の骨を碎き、其の腦を破れば、乃〔(すなは)〕ち、死す。一つに云ふ、「刀〔にて〕斫〔(き)るも、刃、〕入らず、火に焚(た)きて〔も〕焦(こが)れず、之れを打つに、皮囊(〔かは〕ぶくろ)のごとし。鐵にて其の頭を擊ち、破ると雖も、風を得れば、復た起く。惟だ、石菖蒲〔(せきしやうぶ)〕を用ひて其の鼻を塞げば、卽ち、死す」〔と〕。

△按ずるに、風狸、嶺南[やぶちゃん注:中国南部の「五嶺」(南嶺山脈)よりも南の地方の広域総称。現在の広東省・広西チワン族自治区・海南省の全域と湖南省・江西省の一部に相当する。]の山林の中、多く有りて、未だ本朝に在ることを聞かず。

[やぶちゃん注:図の様態からは猿の一種のように見え、記載の一部もそれらしい行動(人に命乞いをするような態度)をとるとするものの、殺しても風が吹けば蘇生し、通常では傷つけることさえも出来ないとあっては、幻獣とする他はないように見えるが、実は現行ではモデル生物として東南アジアの熱帯地方に棲息する「日避猿」(或いは「蝙蝠猿」)と呼ばれる、哺乳綱真主齧上目ヒヨケザル目 Dermoptera のフィリピンヒヨケザル Cynocephalus volans とマレーヒヨケザル Cynocephalus variegatus(以上二種のみが現生種)を同定比定する見解がある(ウィキの「風を見よ)。ウィキの「ヒヨケザル」によれば、『ヒヨケザルの属名 Cynocephalus は、「イヌの頭」という意味のラテン語から来ている。和名で「サル」の語がつくのは、キツネザルに似た頭部の外見による』もので、形態的には食虫類や翼手類に似ており、系統的にも近いとされ、動物学的には現在は狭義の猿の一種とはしない(『以前から知られていた絶滅』した真主齧上目プレシアダピス目 Plesiadapiformes パロモミス科 Paromomyidae『の化石に、ヒヨケザルの手の骨と同様な特徴が発見された。これにより、従来』、『プレシアダピス目に含められていたパロモミス科はヒヨケザルの仲間(皮翼類)に移されたが、同時に、このパロモミス類を含む皮翼類を、従来のような独立した目から格下げしてサル目(霊長目)に含め、直鼻猿亜目・曲鼻猿亜目と並ぶ第』三『の亜目(ヒヨケザル亜目/皮翼亜目)とする説もあった』が、『近年』で『はその説は否定されている』)。『ヒヨケザルは樹上に生息する』、体長約三十五~四十センチメートル、体重一~二キログラムの『ネコくらいの大きさの動物である。体格は細身で、四肢は比較的長く、前脚と後脚がほぼ同じ長さをしている。頭部は小さく、両目が(ヒトを含むサル類と同様)顔の正面に位置しており、遠近感をとらえる能力に優れている。これらの特徴は、木々の間を滑空するのに適したものである』。『ヒヨケザルの最大の特徴は、首から手足、そして尾の先端にかけて、飛膜と呼ばれる膜をもつことである。この飛膜を広げることで』百メートル『以上(最高記録』百三十六メートル『)滑空し、森林の樹から樹へと移動している。飛膜をもつ動物としては、他にもネズミ目(齧歯類)のムササビ、モモンガやフクロネズミ目(有袋類)のフクロモモンガなどが知られているが、いずれも飛膜は前肢と後肢のあいだにあるのみで、首から尾にわたるヒヨケザルのものほど発達した飛膜をもつ動物はほかにいない。コウモリのようにはばたくことはないが、滑空中に尾を動かして後肢と尾の間の飛膜で扇いで推進力を生み』、『滑空距離を伸ばしている』。『また』、『五本の指にも膜があり、指を動かして広げたり縮めたり手首を回したりすることで、空気の抵抗を変え、飛ぶ方向を変えることができる。首周りの三角形状の飛膜は、飛んでいるとき膜のへりに』二『本の渦の流れができる。飛膜が三角形の場合は渦の流れは』四『本になる。背中側に生まれたこの流れが、膜の上の気流を整える。その為スピードが落ちても落下することがない』とされるらしい。『サルのような対向する親指をもたず、力も強くないため、木登りは苦手である。小さく鋭い爪を樹皮に引っ掛けて、ゆっくりと木をよじ登る姿は、ひどく不器用そうに見える。しかし、空中では非常に有能である。高度のロスを最小限に保ちながら、木々の間を滑空する。ヒヨケザルが食べる植物は森中に散らばっている上に、好物の若葉は木の高いところにあるので、滑空は効率的な移動手段であると言える』。『ヒヨケザルは臆病な動物であり、夜行性でもあるため、その生態はほとんど知られていない。草食性であり、よく発達した胃をもつ(中に消化を助けるバクテリアが棲んでいる)ため、木の葉を消化することができる。葉、若芽、花、樹液などを主食としており、恐らく果実も食べていると考えられる。切れ目の入った扁平なクシ状の特殊な形状をした下顎切歯をもつ』『が、この切歯で樹液や果汁などを濾しとって食べる』。『また、同時に毛づくろいにも用いていると考えられている。こうした形状の切歯は、他の哺乳類には例がない』。『ヒヨケザルは特定の寝ぐらを持たないため、子育ての際は、子供を包むように飛膜を広げ』、『世話をする。また、子供が母親の排出する糞を舐めるのは、ここで自らの胃の中のバクテリアを取り込むためである』とある。なお、根岸鎮衛の「耳囊 巻之十 風狸の事」のことでは(リンク先は私の電子化訳注。実はそこで本項は電子化済みなのであるが、今回は全くゼロからやり直してある)、本邦にも風狸がいるとするが、これはモモンガやムササビの誤認であろう(但し、「耳囊」では鳥を捕食するとあるが、孰れも種も鳥は食わない(果実・若枝・樹皮・昆虫が捕食対象)なので要注意)。時珍の叙述の幻想性はヒヨケザルが中国に棲息しないことから、その南方外にいて、猿のようで、しかも皮膜を持っていて飛翔するという伝聞が、さらに奇体な不死的妖獣化を促したものと考えてよかろう。

「薫陸香」呉音で「くんろく(っ)こう」とも読み、「くろく」「なんばんまつやに」などとも呼ばれる。インド・イランなどに産する樹の脂(やに)の一種で、盛夏に砂上に流れ出でて固まり、石のようになったものを指し、香料・薬用とする。乳頭状のものは「乳香」(狭義にはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属 Boswelliaの常緑高木から採取されるそれを指す)という(ここまでは主に小学館「日本国語大辞典」に拠る)。なお、平凡社の「世界大百科事典」の「香料」には、インドで加工された種々の樹脂系香料が西方と東アジア、特に中国へ送られ、五~六世紀の中国人は、これを「薫陸香」と称し、インドとペルシアから伝来する樹脂系香料として珍重した旨の記載がある。

「螬(すくもむし)」地中にいる甲虫類の幼虫を指す語であるが、主にコガネムシ類(鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目コガネムシ下目コガネムシ上科コガネムシ科 Scarabaeidae)の幼虫をいう。地虫(じむし)。

「火に焚(た)きて〔も〕焦(こが)れず、之れを打つに、皮囊(〔かは〕ぶくろ)のごとし」この叙述は、あたかも本邦の「竹取物語」にも出る「火鼠の皮袋」ではないか?! しかも、あれは中国伝来と騙られている。無論、実在するそれは鉱物の石綿であるが。

「石菖蒲」単子葉植物綱ショウブ目ショウブ科ショウブ属セキショウ(石菖)Acorus gramineus。常緑多年草で根茎はよく分枝する。葉は根茎上に二列につき、線形で長さ三十~五十センチメートル、中央脈は目立たない。三~五月、花茎を出し、細長い肉穂花序をつける。花茎には、葉と同形の包葉が接続してつく。水辺の岩上や砂礫地に群生し、本邦では本州から九州に植生し、韓国済州島・中国・ベトナム・インドに分布する。]

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