背に負へる 伊良子清白
背に負へる
そびらに負へる御佛(みほとけ)に
西日かゞやく坂みちや
鉦の響に木の葉ちり
御厨子(みづし)の中におちつもる
身に御佛を負ふことの
黃金(こがね)のはちすふみわけて
熱なき池に入ることも
すなはち今日(けふ)の境なり
驗(しるし)もたえや觀世音
木の間にとまる山鳩の
厨子の木の葉を啄みて
高きみ空に翔(かけ)り舞ふ
[やぶちゃん注:底本には初出記載や校異がないが、本篇は明治三四(一九〇一)年十一月発行の『文庫』に発表した全十二連四パート構成から成る「一よぐさ」の最後の第四パートの全三連を独立させ、一部の表記を改変し、改題したものである。後にその「一よぐさ」全篇を掲げる。]