森を穿ちて 伊良子清白 (ウーラント訳詩)
森を穿ちて
森を穿ちてうかれ行く
われはおそれず山賊(やまだち)も
戀しき胸ぞわが寶
惡しきやからもあさり得じ
繁みの下(もと)にざわつくは
何ぞ? 山賊(やまだち)? 人殺し?
戀しき妹ぞ飛び來たる
心地死ぬべくかき抱く
[やぶちゃん注:本篇は明治三六(一九〇三)年九月発行の『文庫』初出(署名「清白」)であるが、総標題「夕づゝ(二)(UHLAND より)」の下に、標題無しの一篇(本「森を穿ちて」である)と「ひばり」・「狩人のうた」の三篇から成る。底本親本の昭和四(一九二九)年新潮社刊「現代詩人全集 第四巻 伊良子清白集」では、「狩人のうた」の末尾に、「(以上三篇ウーランド)」と後書きする。従ってこれらはドイツ後期ロマン主義のシュワーベン詩派の代表的詩人であるヨハン・ルートビヒ・ウーラント(Johann Ludwig Uhland 一七八七年~一八六二年)の訳詩である。ネット上にはドイツ語の詩篇テクストが散見されるが、私はドイツ語が解せないので、原詩は不詳。初出に有意な異同はない。]