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2019/05/23

和漢三才図会巻第三十九 鼠類 鼫鼠(りす) (リス類)

Risu

 

 

りす  碩鼠 䶂鼠

    雀鼠 ※鼠

鼫鼠

    【此云栗鼠

    稱利須唐音】

[やぶちゃん注:「※」=「鼠」+(「峻」-「山」)。]

 

本綱鼫鼠似鼠而大也居土穴樹孔中頭似兎尾有毛靑

黃色善鳴能人立交前兩足而舞好食栗豆與鼢鼠俱爲

田害鼢小居田而鼫大居山也又專食山豆根取其毛作

△按鼫鼠形色行勢乃此云栗鼠也【時珍以栗鼠爲鼦別名者不審】其狀

 色似鼠而大於鼠色淺於鼠尾粗大而長山中古樹穴

 在之毎好食栗柹葡萄之諸果性怕寒身輕如飛日温

 而腹滿則踞立于石上樹梢自被尾蔽身人畜於樊中

 齒勁如鐵故不用䥫綱則齒破脫去

 

 

りす  碩鼠〔(せきそ)〕 䶂鼠〔(しやくそ)〕

    雀鼠 ※鼠〔(しゆんそ)〕

鼫鼠

    【此れ、「栗鼠」と云ふ。

    「利須」と稱す〔は〕唐音〔なり〕。】

[やぶちゃん注:「※」=「鼠」+(「峻」-「山」)。]

 

「本綱」、鼫鼠は鼠に似て、大なり。土〔の〕穴・樹の孔の中に居り。頭、兎に似て、尾に、毛、有り。靑黃色。善く鳴き、能く人のごとく立つ。〔→ちて、〕前の兩足を交へて舞ふ。好んで栗・豆を食ふ。鼢鼠(うころもち)と俱に田〔の〕害を爲す。鼢〔(うころもち)〕は小にして田に居り、鼫〔(りす)〕は大にして、山に居〔(を)〕るなり。又、專ら、山豆根〔(さんづこん)〕を食ふ。其の毛を取りて筆に作る。

△按ずるに、鼫鼠、形・色・行勢(ありさま)、乃〔(すなは)ち〕、此れ、云〔ふところの〕栗鼠なり【時珍は「栗鼠」を以つて「鼦〔(てん)〕」の別名と爲すは、不審〔なり〕。】。其の狀〔(かたち)〕・色、鼠に似て、鼠より大きく、色、鼠より淺し。尾、粗大にして長し。山中〔の〕古樹の穴に、之れ、在り。毎〔(つね)〕に好んんで栗・柹〔(かき)〕・葡萄の諸果を食ふ。性、寒を怕〔(おそ)〕る。身輕にして飛ぶがごとく、日〔(ひ)〕、温かにして、腹、滿つれば、則ち、石の上・樹の梢に踞-立(つくば)ふ。自〔(みづか)〕ら、尾を被(ひら)き、身を蔽ふ。人、樊〔(かご)の〕中に畜〔(か)〕ふ。齒、勁〔(つよ)く〕して、鐵のごとし。故〔に〕䥫綱〔(てつかう)〕[やぶちゃん注:鉄製の籠の意。「䥫」は「鐡」の古字。]を用ひざれば、則ち、齒〔にて〕破(やぶ)りて脫け去る。

[やぶちゃん注:齧歯(ネズミ)目リス亜目リス科 Sciuridae のリス類。世界には五亜科五十八属二百八十五種が棲息する。樹上で暮らすリス類の他、地上で暮らすマーモット(リス科 Xerinae 亜科 Marmotini 族リス亜目リス科マーモット属 Marmota:主に山岳性であるが、平地に棲む種もいる。中国にはいるが、本邦には棲息しない)・プレーリードッグ(Marmotini 族プレーリードッグ属 Cynomys:北米原産)・シマリス(Marmotini 族シマリス属 Tamias:本邦にはシベリアシマリス Tamias sibiricus・エゾシマリス Tamias sibiricus lineatus が北海道に分布する)・イワリス(Marmotini 族イワリス属イワリス Sciurotamias davidianus:中国西部及び北部に棲息するが、本邦には分布しない)・ジリス(Marmotini 族の広汎な種群を指す)や、滑空能力のあるモモンガ(リス亜科モモンガ族モモンガ属ニホンモモンガ Pteromys momonga)・ムササビ(リス亜科 Pteromyini 族ムササビ属 Petaurista)もリスの仲間である「和漢三才圖會第四十二 原禽類 鼠(むささび・ももか)(ムササビ・モモンガ)」を参照。良安は「本草綱目」を形の上で踏襲してしまい、鳥類に分類する誤りを犯している)。リス類は、ほぼ全世界に分布する(但し、オーストラリア・南極大陸・ポリネシア・マダガスカル・南アメリカ南部、及び、一部の砂漠(サハラ・エジプト・アラビア)地帯は除く。ここまではウィキの「リス」及び、そのリンク先を多用してオリジナルに示した)。平凡社「百科事典マイペディア」他によれば、本邦には自然分布では、

リス科 Sciurinae 亜科 Sciurini 族リス属亜属ニホンリス Sciurus lis(別名ホンドリス)

リス属キタリス亜種エゾリス Sciurus vulgaris orientis

エゾシマリス(学名既出)

ムササビ(同前)

ニホンモモンガ(同前)

モモンガ属タイリクモモンガ亜種エゾモモンガ Pteromys volans orii

の六種が棲息する。最も見かけることの多いニホンリスは、体長十八~二十二センチメートル、尾長十五~十七センチメートル。冬毛は背面灰褐色で、耳の端毛は長い。夏毛は赤褐色で、四肢や体側は赤みが強い。北海道を除く日本各地に分布していたが、近年、九州では確認されていない。平地から亜高山の森林の樹上に棲み、朝夕に活動する。松類の種子・どんぐり・栗などを食べ、秋にはこれらを穴に貯えるが、冬眠はしない。一腹で二~六子を産む、とある。因みに、私の家の周辺に棲んでいて、今年は先代の子がやってきて、妻が庭の金柑を総て食われることを許容してしまった、

リス科ハイガシラリス属クリハラリス亜種タイワンリス Callosciurus erythraeus thaiwanensis

は台湾固有亜種で、ウィキの「タイワンリス」によれば、元来は『台湾に分布しており、日本では』、昭和一〇(一九三五)年に『伊豆大島の公園から逃げ出したのを皮切りに』(大島は現在、日本で最も個体数が多い地域と推定されている)、『神奈川県南東部、静岡県東伊豆町(熱川)・浜松市(浜松城)、岐阜県岐阜市(金華山)、大阪府大阪市(大阪城)、和歌山県和歌山市(友ヶ島・和歌山城)、長崎県、熊本県など』、『日本各地に観光用として放されたり、逃げ出したりして広く定着している』。『神奈川県の江ノ島では』昭和二六(一九五一)年に『伊豆大島から連れてきた』五十四『匹のタイワンリスを江ノ島植物園で飼育した。しかし、台風で飼育小屋が壊れたことで逃げ出し、弁天橋を渡って』、『鎌倉市内に入り込』み、『繁殖するようになったと言われている。また、鎌倉市内の個体については、別荘地で飼われていた個体が逃げ出し野生化したとする説もある』。一九八〇『年代になり、個体数が増えて分布が拡大したことで』、『在来種であるニホンリスと競合し、ニホンリスの地域的な絶滅要因になる可能性が懸念されている』。『コゲラやシジュウカラといった小鳥の巣がある樹洞の入り口をかじって広げ、中にいる雛や卵を食べる被害も報告されて』おり、『餌の少ない冬場などは』、『人家近くに現れることも多い。主に木の実を食べる。ツバキの蕾や収穫前の果実を食べることや、樹木の樹皮をはがして食べることがあり、食害が問題になっている地域もある。また地域によっては、電線や電話線をかじる、雨戸などの家屋をかじるといった被害も出ている』。『神奈川県鎌倉市では、民家の天井裏などに住み着き、庭の果樹をかじる、物干し竿を伝い歩きすることによって洗濯物を汚す、電線や電話線をかじるなどの被害が出ている』。『鎌倉市では』、一九九九『年からタイワンリスに対する餌付けを禁止し、捕獲作業を行っている。捕獲を開始してからは、年々捕獲数、被害相談件数ともに減少している』。『長崎県壱岐市や五島市(鬼岳山麓)では、植林したスギやヒノキの樹皮を食害したり、農園の果樹や農作物を食害したりする被害がでている。そのため、かご罠や捕獲檻などを使った駆除が行われている』。『伊豆大島では、島内で敷設されている送電線を、タイワンリスが渡ったりかじったりすることによる停電被害の未然防止のために、特別な皮膜で覆われたものに交換した』とある。二〇〇五年には遂に「外来生物法」による特定外来生物に指定されてしまったので、餌付けしたり、飼育することは全国的に禁じられている。『しかし、岐阜県岐阜市の金華山にはタイワンリスと遊べる「金華山リス村」が所在するほか、静岡県浜松市の四ツ池公園でも放し飼いにされているように、タイワンリスを観光的に利用しようという例はなおも存在している』とある。今年の私の家(うち)の金柑を偸みとって食う(ちょっと齧って全部は食わぬ贅沢な子じゃて)タイワンリスの「かんちゃん」(妻の命名)の写真(妻撮る)はこちら。好き好んで来日したのではない彼らを秘かに哀れと私は思うている。なお、世界的には都会でヒトを襲う凶暴な個体もなくはないようだが、人獣感染症の報告は未だ、ない。

「鼢鼠(うころもち)と俱に田〔の〕害を爲す」中国語の「田」は「田畑」を指すから、栽培穀物や栽培果樹を害するととるなら、強ち誤りではないが、リスとモグラ(モグラも畑地下にトンネルを作って「荒す」とは言えるものの、稲や根菜類を食性としないから実際には冤罪部分が甚だ大きい。民俗社会でモグラを害獣扱いしている誤りについては、既に「和漢三才図会巻第三十九 鼠類 鼢(うころもち)・鼧鼥(モグラ・シベリアマーモット)で注した)を併置して田畑の害獣とするのは生物学的に誤りである。

「山豆根〔(さんづこん)〕」これは「本草綱目」の記載なので、マメ目マメ科クララ(エンジュ)連クララ属クララ Sophora flavescens であろう。本邦にも植生する。漢名「苦参」。和名は「眩草(くららぐさ)」で、根を噛むと、クラクラするほど苦いことに由来するという。ウィキの「クララ」によれば、『全草有毒であり、根の部分が特に毒性が強い』。『アルカロイド』(alkaloid:窒素原子を含み、ほとんどの場合で塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称)『のマトリン』(Matrine)『が後述の薬効の元であるが、薬理作用が激しく、量を間違えると大脳の麻痺を引き起こし、場合によっては呼吸困難で死に至る。素人が安易に手を出すのは非常に危険である』。『根は、苦参(くじん)という生薬であり、日本薬局方に収録されている。消炎、鎮痒作用、苦味健胃作用があり、苦参湯(くじんとう)、当帰貝母苦参丸料(とうきばいもくじんがんりょう)などの漢方方剤に配合される。また、全草の煎汁は、農作物の害虫駆除薬や牛馬など家畜の皮膚寄生虫駆除薬に用いられる』。『なお、延喜式には苦参を紙の原料としたことが記されているが、苦参紙と呼ばれる和紙が発見された例が存在せず、実態は不明である』が、二〇一〇年の『宮内庁正倉院事務所の調査で「続々修正倉院古文書第五帙第四巻」の』一『枚目は和紙、手触りや色合いが』、『延喜式での工程や繊維の特徴を持ち』、二『枚目は苦参の可能性が高いと判断した』とある。但し、平凡社「世界大百科事典」によれば、本邦では全くの別種であるマメ目マメ科ミヤマトベラ(深山扉木)Euchresta japonica を「山豆根」と称し、特に前者の毒性が強いことから、注意が必要である。こちらは本州(茨城県以西)・四国・九州、及び、中国大陸に分布する(最近までは日本固有種とされていた)。本邦の漢方では、根を乾燥して「山豆根(さんずこん)」の名称で、口腔・咽喉の病気に用いていた、とある。

「其の毛を取りて筆に作る」洋画の絵筆の販売サイトの解説によれば、リスの毛は水彩筆に適した最高級の原毛で絵具の含みが優れているとし、リス毛は繊細で柔らかく、筆運びからして滑らかで、非常に多くの毛量をまとめた穂先は、絵具の含みが良く、長い線描も可能で、途中でパレットの絵具を含ませる必要がないとあり、この種の筆のもう一つの特徴は穂先が自然に揃うことである、とある。毛筆用にも使用されるようだが(昔の同僚の書道の先生は鼠の毛の筆も持っていた)、別のサイトでは現在ではリス毛は、主に最高級の化粧ブラシに用られるらしい。フェイス用など比較的大きな穂先をボリュームたっぷりに使うことで、特別な肌触りを示すと書かれてあった。何となく、梶井基次郎の「愛撫」の中の(リンク先は私の古い電子テクスト)、夢のシークエンスで、女が使う『猫の手の化粧道具』を思い出して、胸糞が悪くなってきた。

「鼦〔(てん)〕」次の独立項が「貂」で、そこでも良安はこれを問題にしている。]

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