戀はれつこひつ 伊良子清白 （ハイネ訳詩／附・生田春月訳）

戀はれつこひつ

戀はれつこひつ君とわれ

世はことごとく亡びけり

亡びしものの隙（ひま）よりぞ

愛の我が火はたちのぼる

［やぶちゃん注：明治三六（一九〇三）年五月発行の『文庫』初出（署名「清白」）であるが、総標題「夕づゝ（Heine より）」の下に、「さうび百合ばな」・「きみとわが頰の」・「頰は靑ざめて」・「使」・「老いたる王の」・「墓場の君の」・「うきをこめたる」・本「戀はれつこひつ」・「夕となりぬ」・「なれをこひずと」の十篇からなる、ハイネ（Christian Johann Heinrich Heine　一七九七年～一八五六年）の翻訳詩群である。本篇は一八二三年刊の詩集“Tragödien, nebst einem lyrischen Intermezzo”（「抒情的間奏曲附きの、悲劇」）の“Lyrisches Intermezzo”（「抒情的間奏曲」）の第XLV歌（第四十五歌）のアスタリスク群の配された前の半分である。原詩はこちら（リンク先はドイツ語の「ウィキソース」）。初出は以下。

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戀はれつこひつ

戀はれつこひつ君とわれ

世はことごとくくずれけり

くずれしものの隙（ひま）よりぞ

愛の我が火はたちのぼる

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　前に倣って、生田春月（明治二五（一八九二）年～昭和五（一九三〇）年）の訳を国立国会図書館デジタルコレクションの大正一四（一二五）年春秋社刊生田春月訳「ハイネ全集　第一巻」（「詩の本」）の「抒情插曲」パートから示す。春月のそれは第「五十」歌とし、伊良子清白と同じく上記の原詩の前半分の訳である。ということは詩集“Tragödien, nebst einem lyrischen Intermezzo”、或いは、その中の“Lyrisches Intermezzo”にはやはり改稿版があるということなのだろうか）。

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　　五十

わたしはおまへを愛する、昔も今も！

世界がくだけて落ちる日は

木端微塵（こばみじん）の破片（かけら）から

わたしの戀の熖が燃えあがる。

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