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2019/05/18

さゞれ石 しづ子(伊良子清白/女性仮託)

 

さゞれ石

 

 

  ゆ め

 

浮世の中の物ことを、

 さやかに見する夢こそは、

  浮世の中を隈もなく、

   うつせし神のうつしゑを、

    示すしはしの業ならめ。

 

犯せる罪も祕事も、

 さながら見ゆるかしこさよ。

  闇とは云へとなかなかに、

   あやめも分かぬ夜半こそは、

    心をてらす光なれ。

 

 

  梅の一枝

 

餘りにいものこひしきに、

 軒端の梅の一枝を、

  手折りて贈るわりなさよ。

 

いはぬはいふにいやまして、

 深きおもひのあるものを、

  戀とはいもの知らさらむ。

 

 

  ほの見しかげ

 

ほの見し影のしたはれて、

 かくまで人のこひしきは、

  いかなる故の在やらむ。

 

をかしきおのが心かな。

 こひしきからにこひしきを、

  何今さらにあやしまむ。

 

 

  おのが心

 

かなしと君はの給へど、

 つらしと君はの給へど、

うらむ君よりうらまるゝ、

 おのが心のくるしさを、

あはれと君もくめよかし。

 

 

  あ ざ み

 

神より享けしそのまゝの、

 わが眞心をいつはりて、

  ゑまひの色に咲きもせば、

   針ある草と知らずして、

    人やつむらん花あざみ。

 

 

  別れのあと

 

わかれのあとのさびしさは、

 よそへて何を君と見む。

園生の花を君と見ば、

 つれなき風にちりもせむ。

空行く月を君と見ば、

 あへなく雲にかくるらむ。

君のこゝろのやさしさは、

よそへむものもなきものを、

 なにおろかにも思ひけむ。

 

 

  櫻とすみれ

 

おつれば一つ土なるを、

 さくら董と花ゆゑに、

  へだてあるこそうらみなれ。

  夜すがら何をかたるらむ、

  野川に星のかげ見えつ。

ひゞきは松の音にかよふ。

 

[やぶちゃん注:明治二九(一八九六)年四月『靑年文』掲載。署名は特異的に女性仮託で「しづ子」である。]

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