姬百合 伊良子暉造(伊良子清白)
姬百合
(醉茗ぬしの百合の泪につゞき侍りて)
「やよ言問はむ 姬百合よ。
たれに見せむと うるはしき、
花のすがたを さやかなる、
水のかゞみに うつすらむ。」
* * * *
「こととふ人の おろかさよ。
誰のためにか かざるべき。
君が手折りて かの人に、
おくり給はむ、 ためにとて。」
[やぶちゃん注:明治二八(一八九五)年三月の『少年文庫』掲載(前の同様の字配の「常盤の前」と併載)。署名は本名の伊良子暉造。特異な和歌のような分かち書きはママ。添え辞にある河井酔茗の「百合の泪」(ゆりのなみだ)は不詳。こういうものは河井酔茗のそれと併置してこそ評価出来るものであると思う。]