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2019/05/04

山彥 伊良子清白 (ハイネの訳詩/参考付加・片山敏彦氏訳「山の声」)

 

山 彥

 

だくをゆるめて谷路行く

武士(もののふ)一人駒の上

「腕にすがらん戀人の

さらずば行かむ墓の下」

木魂の聲の答ふらく

「さらずば行かむ墓の下」

 

重き吐息をもらしつつ

武士なほもうたせ行く

「さらば墓場にわれ行かむ

墓場の下に休息(やすみ)あり」

木魂の聲の答ふらく

「墓場の下に休息あり」

 

なやみにみつる頰の上に

淚の珠のまろびつつ

「墓場の外に家ぞなき

われは墓ばをこのむなり」

木魂の聲の答ふらく

「われは墓場をこのむなり」

 

[やぶちゃん注:明治三六(一九〇六)年十月発行の『文庫』初出であるが、そこでは総標題「夕づゝ(三)(Heine より)」の下に本「山彥」以下に電子化する「金」「牧童」の三篇から成る(署名「清白」)。されば、これらはドイツのユダヤ人詩人クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine 一七九七年~一八五六年)の訳詩で、本篇は一八二一年作の“Die Bergstimme”(「山の声」・一八二七年刊行の詩集“Buch der Lieder”(「歌の本」所収)のそれである。原詩はこちら(リンク先はドイツ語の「ウィキソース」)。

 初出は表記違い以外では、第三連の初行が「なやみにみつる頰の上は」となっているのが、大きな異同である。

 参考までに、以下に所持する片山敏彦氏(昭和三六(一九六一)年没でパブリック・ドメイン)の訳を示す(「ハイネ詩集」昭和四一(一九六六)年改版新潮文庫刊)。

   *

 

  山 の 声

 

山のはざまを騎士が行く、

陰気に静かな馬の足音。

「俺は今、恋しい人の腕へ行くのか?

それとも暗い墓へ行くのか?」

山の声(こえ)がそれに応(こた)える――

「暗い墓へさ」

 

騎士はそのまま進んで行くが

重い吐息をついて言う。――

「早や俺は暗い墓へ行くというのか――

それも宜(よ)かろう。墓の中には憩いがある!」

山の声がそれに答える――

「墓の中には憩いがあるさ」

愁いに充ちた騎士の頰には

 

一しずく淚が落ちた。

「俺のために憩いのあるのは墓穴だけか!

それなら墓もわるくはなかろう」

山の声が空(うつ)ろに答える!

「そうさ、墓もわるくはないさ」

              Die Bergstimme

   *]

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