農村迎年歌 伊良子清白
農村迎年歌
水は雲出川(くもづ)の
砂さへ澱(よど)む
天(てん)の惠は
ふる白露(しらつゆ)か
反に九俵取り
名も豐田(とよだ)村
米は白玉
粒(つぶ)ぞろひ
米が光れば
田が光る
ほめて踊つて
働いた
田植稻苅り
籾挽(もみひき)すんで
四方(はう)米倉(こめぐら)
俵の山よ
明けりや正月
朝日がてらす
雪がつもつて
お宮よ
お城よ
註 雲出川、南北伊勢を兩分する大河。
豐田村、美田豐沃を以て鳴る農村。
[やぶちゃん注:昭和五(一九三〇)年三月一日発行の『民謠音樂』(第二巻第三号)に掲載。署名は「伊良子清白」。
「雲出川」奈良県との県境に位置する三峰山(みうねやま標高千二百三十五・二メートル)に源を発し、伊勢湾に注ぐ雲出川(くもずがわ)(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。中央下部に三峰山を配した。
「豐田村」は明治二二(一八八九)年の町村制施行によって新屋庄村・川原木造村・川北村・須賀村・権現前村・小村の区域を以って成立している(ウィキの「豊田町(三重県)」に拠る)。現在の松阪市嬉野町(うれしのちょう)の東端北部の、名松線権現前駅の北東一帯、この中央部の雲津川右岸広域に当たる。少し拡大すると、「嬉野新屋庄町(にわのしょうちょう)」・「嬉野川原木造(かわらこづくり)町」・「嬉野川北(かわぎた)町」(雲津川の南の中央部なので注意)・「嬉野須賀(すか)町」・「嬉野権現前町」・「嬉野小村(こむら)町」の総ての旧村名を含んだ現住地名を総て現認出来るのが嬉しい。]