小序 伊良子清白 / 詩集「孔雀船」の再版(昭和四(一九二九)年四月十日発行の梓書房版)に附されたもの
小 序
この廢墟にはもう祈禱も呪咀もない、感激も怨嵯もない、雰圍氣を失つた死滅世界にどうして生命の草が生え得よう、若し敗壁斷礎の間、奇しくも何等かの發見があるとしたならば、それは固より發見者の創造であつて、廢滅そのものゝ再生ではない。
昭和四年三月 志 摩 に て 淸 白
[やぶちゃん注:再版の、昭和四(一九二九)年四月十日発行の梓書房版(明治三九(一九〇六)年五月五日発行の初版「孔雀船」は佐久良書房刊)詩集「孔雀船」で追加されたもの。底本は詩篇と同じ全集の二〇〇三年岩波書店刊平出隆編集「伊良子清白全集」第二巻を用いたが、詩篇は正字を用いているのに、何故か、こちらの巻は新字採用であるため、恣意的に漢字を概ね正字化した。なお、この年の彼をめぐる状況は詩篇「鳥羽の入江」の注で記した。]
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