水仙の葉 清白
水仙の葉
むねに開くも花ならむ
むねに凋むも花ならむ
をとめの身にて强からば
さしもいたみを覺えずや
人めもはぢよ人の世に
美しきものゝ强かるは
すでにいたみを身にうけて
いまだ癒えぬをしめすなり
あらず弱きはをとめなり
水仙の葉のたをやかに
おひいでゝこそ冬空の
高く澄めるを持てるなれ
常に瞳はかゞやきて
常に唇しつかなる
をとめのために御空より
濃き甘露(あまつゆ)はくだるなり
[やぶちゃん注:明治三四(一九〇一)年八月十五日発行の『文庫』(第十八巻第二号)掲載。署名は「清白」。なお、底本全集の「著作年表」に載るデータでは、同じ明治三四(一九〇一)年八月の先立つ一日に発行された『明星』(第十五号)の「郭公の歌」で彼は「伊良子清白」の署名を初めて使用している。また、古巣の『文庫』誌では、彼がこの「清白」署名を用いた最初の作品となった。]