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2019/06/01

春の野 S.S.(伊良子清白)

 

春 の 野

 

咲きては木々の花を彫り、

萠えては草に彩紋(あや)をおく、

春野よなれが細指に、

鋭利(するど)き鑿の香あり。

 

天津乙女か雲の上に、

さへづり飽かぬ鳥の歌。

春野よなれが紅唇(くちびる)に、

妙なる樂のひゞきあり。

 

冰れる虛空(そら)を溫めて、

息柔かき薄がすみ、

春野よなれが眼ざしに、

溢るゝ愛の光あり。

 

うかるゝ胡蝶(てふ)は風に舞ひ、

群がる蜂は花蜜(みつ)に醉ふ。

春野よなれが乳房(ちぶさ)に、

味美き酒の泉あり。

 

何をはぢらふ久方の、

月讀男おぼろにて、

春野よなれが柔肌(やははだ)に、

たのしき夢の宿あり。

 

[やぶちゃん注:明治三一(一八九八)年三月二十三日発行の『千紫萬紅 春の卷』(第四巻第四編)掲載。署名は「S.S.」(「すず」と「しろ」の頭音からか)。当該の同誌は古書店サイトで現物が確認出来たのであるが、博文館発行の『文藝倶樂部』の臨時増刊号であった。因みに、「千紫萬紅」は「さまざまな花の色のこと」を言う語。

 第四連の三行目「春野よなれが乳房(ちぶさ)に」の後半の音数律不全はママ。確信犯らしいが、朗読すると如何にもブレイク、躓いてしまい、甚だよくないと私は思うのだが。「ちちぶ(ふ)さ」でどうしていけないのだろう? フロイト的に考えてしまったよ。]

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