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2020/03/23

大和本草卷之十三 魚之下 鰛(いはし) (マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ)

 

鰛 順和名鰯本文未詳トイヘリ今俗モ鰯ノ

 字ヲ用ユ閩書曰鰛似馬鮫魚而小有鱗太者數

 寸〇其苗小ナルヲ.メダツクリト云又シラスト云腥

 氣ナク味佳ヤヽ大ナルヲタツクリト云田肥トスル故田

 作ト云或曰五月農夫ノ苗ヲ挾ム時最多ク是ヲ美

 饌トス故田作ト名クト云ソレヨリ小ナルニ塩ヲ不淹

 ホシタル淡鯗ヲゴマメト云又ヒシコト云最大ナルヲ塩ニ

 ツケテ苞ニ入遠ニヨス賤民朝夕ノ饌ニ用ユ又醢トシ

 糟藏飯藏トス味ヨシ又ホシタルヲホシカト云田圃ノ

 糞トス木綿ノ糞トシテ尤佳シ凡此魚甚民用ニ利ア

 リ又カタ口イハシアリ口ヒロクシテ鰷ノ口ノ如シウルメイ

 ハシアリ鰩魚ニ似テ小ナリ皆可食又イハシニ似テウロコ

 大ナル魚あり不可食〇今案凡脾胃ハ芳潔ヲ好ミ

 臭穢ヲ惡ムイハシハ油膩臭穢之物性不好痰ヲアツ

 メ瘡疥ヲ發シ食氣ヲ滯ラシム生ナル者最性アシヽ病

 人及服薬人不可食且能發瘡疥

 

○やぶちゃんの書き下し文

鰛(いはし) 順「和名」、『鰯』本文『未だ詳かならず』と、いへり。今、俗も「鰯」の字を用ゆ。「閩書〔(びんしよ)〕」に曰く、『鰛は馬鮫魚(さはら)に似て小なり。鱗、有り。太〔(だい)〕なる者、數寸。

〇其の苗〔(こ)〕、小なるを、「めだつくり」と云ひ、又、「しらす」と云ふ。腥〔(なまぐさ)き〕氣〔(かざ)〕なく、味、佳(よ)し。やゝ大なるを「たつくり」と云ふ。田の肥〔(こえ)〕とする故、「田作」と云ふ。或いは曰く、五月、農夫の苗〔(なへ)〕を挾〔(さしはさ)〕む時、最も多く、是れを美饌〔(びせん)〕とす。故に「田作」と名づくと云ふ。それより小なるに塩を淹(つ)けず、ほしたる「淡鯗(ほしうを/しらほし)」を「ごまめ」と云ひ、又、「ひしこ」と云ふ。最大なるを塩につけて、苞〔(つと)〕に入れ、遠〔(とほく〕〕によす。賤民、朝夕の饌に用ゆ。又、醢〔(しほから)〕とし、糟藏(〔かす〕づけ)・飯藏(〔めし〕づけ)とす。味、よし。又、ほしたるを「ほしか」と云ひ、田圃の糞(こえ)とす。木綿の糞として尤も佳〔(よ)〕し。凡そ此の魚、甚だ民用に利あり。

又、「かた口いはし」あり、口、ひろくして鰷〔(はや)〕の口のごとし。

「うるめいはし」あり。鰩魚(とび〔うを〕)に似て小なり。皆、食ふべし。

又「いはし」に似てうろこ大なる魚あり。食ふべからず。

〇今、案ずるに凡そ脾胃は芳潔を好み、臭穢〔(しうえ)〕を惡〔(にく)〕む。「いはし」は油-膩(あぶら)・臭穢の物性〔にして〕好〔(よ)から〕ず、痰をあつめ、瘡疥〔(さうかい)〕を發し、食氣を滯らしむ。生〔(なま)〕なる者、最も性、あしゝ。病人及び薬を服する人、食ふべからず。且つ、能く瘡疥〔(さうかい)〕を發す。

[やぶちゃん注:本邦で「鰮」「鰯」「いわし」と呼んだ場合は、

ニシン上目ニシン目ニシン亜目ニシン科ニシン亜科マイワシ属マイワシ Sardinops melanostictus(成魚の全長は三十センチメートルに達するものの、二十センチメートル程度までの個体が多い。体は上面が青緑色、側面から腹にかけては銀白色を呈する。体側に黒い斑点が一列に並ぶ。但し、個体によってはそれが二列あるもの、二列の下に更に不明瞭な三列目があるもの、逆に斑点が全く無い個体もある。別名の「ナナツボシ」(七つ星)はこの斑点列に由来する。体は前後に細長く、腹部が側扁し、断面は逆三角形に近い紡錘形を成す。下顎が上顎より僅かに前に突き出る。鱗は薄い円鱗で剥がれ易い。縦列の鱗の数は四十五枚前後で体の割りには大きい。側線はない。以下のカタクチイワシ・ウルメイワシとは、体側に黒点列があること、体の断面が比較的左右に扁平であることなどで区別出来るウィキの「マイワシ」に拠る)

ニシン亜目ニシン科ウルメイワシ亜科ウルメイワシ属ウルメイワシ Etrumeus teres(成魚は全長三十センチメートルに達し、マイワシより大きくなる。目が大きく、さらに脂瞼に覆われているために「潤んでいる」ように見え、和名「潤目鰯」はこれに由来する。下顎が上顎よりも僅かに前に突き出る。体色は背中側が藍色、腹側が銀白色を呈し、他に目立つ模様はない。体は前後に細長く、断面は背中側がやや膨らんだ卵型を成す。一縦列の鱗数は五十三から五十六枚で、カタクチイワシやマイワシよりも鱗が細かく、腹鰭が背鰭よりも明らかに後ろにある点で両者とは区別出来るウィキの「ウルメイワシ」に拠る)

ニシン亜目カタクチイワシ科カタクチイワシ亜科カタクチイワシ属カタクチイワシ Engraulis japonicus目が頭部の前方に寄っていて、口が頭部の下面にあり、目の後ろまで大きく開くことが特徴である。和名「片口鰯」も「上顎は下顎に比べて大きく、片方の顎が著しく発達している」ことに由来する。また、他の二種よりも体が前後に細長いウィキの「カタクチイワシ」に拠る)

の三種を指す

「鰛」=「鰮」は如何に見る通り、漢語として存在するが、これをイワシに当てるのは国字である。

『順「和名」、『鰯』本文『未だ詳かならず』と、いへり』源順「和名類聚抄」の巻十九「鱗介部第三十」の「竜魚類第二百三十六」に、

鰯 「漢語抄」云、『鰯』【以和之(いわし)。今案、本文未ㇾ詳。】。

とある。「漢語抄」は「楊氏漢語抄」で奈良時代(八世紀)の成立とされる辞書であるが、佚文のみで、原本は伝わらない。

「鰯」国字。

「閩書」明の何喬遠撰になる福建省の地誌「閩書南産志」。

「馬鮫魚(さはら)」スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科サワラ族サワラ属サワラ Scomberomorus niphonius前項参照。益軒はこれを鵜呑みにして「馬鮫魚(さはら)」の後にこれを配しているようだが、私は似ているとは思わないので、本来に漢語としての「鰮」がイワシ類を指すかどうかはやや疑問である。但し、現代中国語では「鳁」をイワシに当ててはいる。

「太〔(だい)〕なる」「太」はママ。側扁するので太いの意味ではあり得ないので、かく訓じておいた。

「苗〔(こ)〕」稚魚。現在、漁業でも魚の種苗放流と言ったりする。

「めだつくり」小学館「日本国語大辞典」に「めたづくり」があり、『イワシなどの稚の総称。しらす』とあるが、例文は。小山田与清の「松屋筆記」と本書の本章で、この呼称は江戸中期末より前には遡らない。「め」はよく判らぬが、「芽」で生まれて間もないの謂いか。

「しらす」本種に限らず、イカナゴ・ウナギ・カタクチイワシ・マイワシ・ウルメイワシ・アユ・ニシンなど、体に色素がなく白い稚魚を総称して「シラス」(白子)と呼ぶ。

「苗〔(なへ)〕を挾〔(さしはさ)〕む時」田植えの時期のこと。現在も初夏はイワシ漁の始まる時期である。以下の「田作」の命名は農事と生鮮なイワシの漁獲期とのリンクを指すとするものである。

「美饌」美味い調理した食物。

「鯗」は「鱶」と同字であるが、この字はサメ類の「フカ」の意味の他に、「干物」の意がある。

「ごまめ」語源は「細群」(こまむれ)。調理したそれが祝い肴(ざかな)であることから「五万米」「五真米」の文字が当てられたことによるとする説、目がゴマのように黒いことに由来するという説、別に「五万米」で豊穣を祈ったものが転訛したとする説などがある。

「ひしこ」「ひこいわし」とともに、これは本来はカタクチイワシの古名であるが、それがイワシ全体に汎用化された。しかも面倒なことに、方言で「ひしこ」は「海鼠(なまこ)」や「乾し海鼠」或いは「小さなイワシ類を干したもの」、また「イワシの塩辛」の意にも用いられる。

「苞〔(つと)〕」藁で出来た包。

「よす」「寄す」。送る。

「飯藏(〔めし〕づけ)」所謂、「熟(な)れ鮓(ずし)」である。但し、イワシは腐敗が速いので相当に塩を加えないと上手くは行かない。

「ほしか」「乾鰯」「干鰯」などの漢字を当てる。小学館「日本国語大辞典」によれば、脂を充分に絞った(腐敗防止のため)イワシやニシンを『乾燥させた肥料。江戸時代から明治時代にかけ、油粕』(あぶらかす)『とともに一般的に用いられた』もので、『速効性があり、化学肥料普及以前の農業生産力の上昇に大きな影響を与えた』とある。ウィキの「干鰯によれば、これは『一説には戦国時代にまで遡ると言われて』おり、『干鰯の利用が急速に普及したのは、干鰯との相性が良い綿花を栽培していた上方及びその周辺地域であった。上方の中心都市・大坂や堺においては、干鰯の集積・流通を扱う干鰯問屋が成立した』。正徳四(一七一四)年の『統計では日本各地から大坂に集められた干鰯の量は銀に換算して』一万七千貫目『相当に達したとされている』。『当初は、上方の干鰯は多くは紀州などの周辺沿岸部や、九州や北陸など比較的近い地域の産品が多かった。ところが』、十八『世紀に入り』、『江戸を中心とした関東を始め』、『各地で干鰯が用いられるようになると、需要に生産が追い付かなくなっていった。更に供給不足による干鰯相場の高騰が農民の不満を呼び、農民と干鰯問屋の対立が国訴に発展する事態も生じた。そのため、干鰯問屋は紀州など各地の網元と連携して新たなる漁場開拓に乗り出すことになった。その中でも房総を中心とする「東国物」や蝦夷地を中心とする「松前物」が干鰯市場における代表的な存在として浮上することとなった』。『房総(千葉県)は近代に至るまで鰯の漁獲地として知られ、かつ広大な農地を持つ関東平野に近かったことから、紀州などの上方漁民が旅網や移住などの形で房総半島や九十九里浜沿岸に進出してきた。鰯などの近海魚を江戸に供給するとともに長く干鰯の産地として知られてきた(地引網などの漁法も上方から伝えられたと言われている)』。『一方、蝦夷地では鰯のみではなく鰊(かずのこを含む)や鮭が肥料に加工されて流通した。更に幕末以後には鰯や鰊を原料にした魚油の大量生産が行われるようになり、油を絞った後の搾りかすが高級肥料の鰊粕として流通するようになった』とある。

「木綿の糞として尤も佳〔(よ)〕し」前注の引用を参照されたい。

「鰷〔(はや)〕」複数の種の川魚を指す。ハヤ(「鮠」とも書く)は本邦産のコイ科(条鰭綱骨鰾上目コイ目コイ科 Cyprinida)の淡水魚の中でも、中型で細長い体型を持つ種群の総称通称である。釣り用語や各地での方言呼称に見られ、「ハエ」「ハヨ」などとも呼ばれる。呼称は動きが速いことに由来するともされ、主な種としては、コイ科ウグイ亜科ウグイ属ウグイ Tribolodon hakonensis・ウグイ亜科アブラハヤ属アムールミノー亜種アブラハヤ Rhynchocypris logowskii steindachneri・アブラハヤ属チャイニーズミノー亜種タカハヤ Rhynchocypris oxycephalus jouyi・コイ科 Oxygastrinae 亜科ハス属オイカワ Opsariichthys platypus・Oxygastrinae亜科カワムツ属ヌマムツ Nipponocypris sieboldii・カワムツ属カワムツ Nipponocypris temminckii などが挙げられる。]

「鰩魚(とび〔うを〕)」棘鰭上目ダツ目トビウオ科 Exocoetidae のトビウオ類。本邦で一般的なのはハマトビウオ属トビウオ(ホントビウオ)Cypselurus agoo agoo など。なお、「鰩」には軟骨魚類のエイ類を指す語でもある。

『「いはし」に似てうろこ大なる魚あり。食ふべからず』食用を禁じている以上、有毒であるということだろうが、そんな魚は知らない。或いは、現在、流通せず、釣り人もリリースする場合が多い「藤五郎鰯」、トウゴロウイワシ目トウゴロウイワシ科ギンイソイワシ属トウゴロウイワシ Hypoatherina valenciennei かも知れない。本邦では琉球諸島を除いた相模湾以西に広く分布する。沿岸性の魚で、河川河口部の汽水域にも進入し、海面近くを大群をなして泳ぐ姿が見られる。体長は十センチメートル前後のものが多く、最大でも十五センチメートル程度までで、カタクチイワシに似ていることからイワシの名を持つものの、分類上はボラやダツなどの近縁種で、二つの背鰭を持っている。本種は鱗が硬い上に剥がれ難いため、一般に食用とされない。食べられないわけではないのだが、鱗の処理が面倒である。益軒は鱗が大きいとするが、見た目、本種は実際、硬い鱗がイワシ類に比して、はっきり目立って見えるのでそう言うのは腑に落ちるのである。

「脾胃」漢方では広く胃腸、消化器系を指す語。

「芳潔」新鮮で匂いのよいこと。清潔なこと。

「物性」(ぶつせい)「〔にして〕好〔(よ)から〕ず」こうでも読まないと意味が続かない。もし、別な訓読があるとせば、御教授願いたい。

「瘡疥」「疥瘡」だと「はたけがさ」で所謂、皮膚病の「はたけ」を指す。主に小児の顔に硬貨大の円形の白い粉を噴いたような発疹が複数個所発する皮膚の炎症性角化症の一つ顔面単純性粃糠疹(ひこうしん)。原因としてウィルス感染が疑われているが、感染力はない。但し、ここは寧ろ、青魚にありがちなアレルギー反応で、広義の蕁麻疹ととってよかろう。

「食氣」ここはそのまま「くひけ」でよかろう。]

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