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2020/06/21

北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 春のめざめ

 

TONKA JOHN の悲哀

 

[やぶちゃん注:パート標題。]

 

 

春のめざめ

 

JOHN, JOHN, TONKA JOHN,

*油屋の JOHN, 酒屋の JOHN, 古問屋(ふつどいや)の JOHN,

我儘で派美(はで)好きな YOKARAKA JOHN.

SORI-BATTEN!

 

南風(はえ)が吹けば菜の花畑のあかるい空に、

眞赤(まつか)な眞赤な朱(しゆ)のやうな *MEN

大きな朱の凧(たこ)が自家(うち)から揚る。

SORI-BATTEN!”

 

麹室(かうじむろ)の長い冬のむしあつさ、

そのなかに黑い小猫を抱いて忍び込み、

皆(みんな)して骨牌(トランプ)をひく、黃色い女王(クイン)の感じ

SORI-BATTEN!”

 

女の子とも、飛んだり跳(は)ねたり、遊びまはり、

今度(こんど)は熱病のやうに讀み耽る、

ああ、ああ、舶來のリイダアの新らしい版畫(はんぐわ)の手觸(さは)り。

SORI-BATTEN!”

 

夏の日が酒倉の冷(つめ)たい白壁に照りつけ、

ちゆうまえんだに天鵞絨葵(びらうどあふひ)の咲く

六月が來た、くちなはが堀(ほり)をはしる。

SORI-BATTEN!”

 

秋のお祭がすみ、立つてゆく博多二〇加のあとから

戰(いくさ)のやうな酒づくりがはじまる、

金色(きんいろ)の口あたりのよい日本酒(につぽんしゆ)。

SORI-BATTEN!”

 

TONKA JOHN の不思議な本能の世界が

魔法と、長崎と、和蘭陀の風車に

思ふさま張りつめる…………食欲が躍る。

SORI-BATTEN!”

 

父上、母上、さうして小さい JOHN GONSHAN.

痛(いた)いほど香ひだす皮膚から、靈魂の恐怖(おそれ)から、

眞赤(まつか)に光つて暮れる TONKA JOHN の十三歲。

SORI-BATTEN!” SORI-BATTEN!”

 1. 油屋、酒屋、古問屋。油屋はわが家の屋號にて、
   そのむかし油を鬻ぎしといふにもあらず。酒造の
   かたはら、舊くより魚類及穀物の問屋を業とした
   るが故に古問屋と呼びならはしぬ。
 2. Yokaraka John. 善良なる兒、柳河語。
 3. 朱のMen.朱色人面の凧、その大きなるは直徑十
   尺を超ゆ。その他は槪ね和蘭凧の菱形のものを用ゆ。
 4. Gonshan. 良家の令孃。柳河語

 

[やぶちゃん注:太字「ちゆうまえんだ」(既出既注。白秋の実家の庭園の名)は底本では傍点「ヽ」。註記号と註が対応していないのはママ。註は底本では七行であるが、ブラウザの不具合を考えて、八行に分かった。最後の「柳河語」の後に句点がないのはママ。

SORI-BATTEN!」既出既注。「そうだけどさぁ!」の意の方言。

「博多二〇加」これで「はかたにはか(はかたにわか)」(「○」が「輪」ならば「にわか」であるが、当て字なので歴史的仮名遣で示しておく)。平凡社「百科事典マイペディア」によれば、『仁輪加とも記す。俄』(にわか)『狂言の略。もと座興のために催した一種の茶番狂言』で、洒落・滑稽を主として、『終りを落(おち)で結んだ。江戸時代に吉原』・『島原などで流行したが』、後に『専門の俄師』(にわかし)『も生まれ』、『寄席(よせ)などで道具』・『鳴物入りで興行。吉原年中行事の吉原俄や大阪俄』・『博多俄などがあり』、『俄師では明治末年の鶴屋団十郎が有名だった。この俄から曾我廼家(そがのや)(曾我廼家五郎)』・『楽天会などの喜劇が生まれた』とある。独特の面を附けて演ずることで知られる。グーグル画像検索「博多にわか」をリンクさせておくが、実は私はこの面が生理的に激しく嫌いである。]

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