北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 六十
六 十
あはれ、あはれ、
灰色の線路にそひ、
ひとすぢの線路にそひ、
今朝(けさ)もまた辿りゆく淺葱服(あさぎふく)のわかき工夫、
汝(なれ)もまた路のゆくてに
靑き花をか求むる、
かなしき長きあゆみよ。
[やぶちゃん注:私は本「斷章」の中では、この一篇が非常に映像的で忘れ難い。
「淺葱服」ごく薄い藍色、或いは現在は明るい青緑をこう呼ぶ。鉄道や軌道の線路の点検保守作業を行う保線夫は安全のために目立つこの手の色の作業着を着用する。]
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