北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 五十四
五 十 四
いそがしき葬儀屋のとなり、
驛遞(えきてい)の局に似通ふ兩替(りやうがへ)のペンキの家に、
われ入りて出づる間(ま)もなく、
折よくも電車むかへて、そそかしく飛びは乘りつれ。
いづくにか行きてあるべき、
ただひとり、ただひとり、指(さ)すかたもなく。
[やぶちゃん注:「驛遞(えきてい)の局」郵便局。]
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