北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 四十三
四十三
葬式(とむらひ)の歸途(かへさ)にか、戯れに笛吹き鳴らし、
もの甘き靄の内さざめきてたどる樂師よ。
哀れ、汝(なれ)ら、
薄ぐらき路次の長屋にひと時の後やあるらむ。
さはれなほ吹き鳴らし吹き鳴らし長閑(のど)に消えつつ、
うら若き服の鄙びのいろ赤く、なにか眺むる。
日はしばし夢の世界に目を放つ、黃金の光。…………
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