北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 三十八
三 十 八
瓦斯の火のひそかにも聲たつるとき、
われ、君を悲しとおもひ、
靴ぬぐひの皮に
踵なる土(つち)蹈みなすり、
別れ來て、土蹈みなすり、
ほの黃なるしめり香の、かの苑の香(か)を嗅げば、
いまさらに淚ながる………………
[やぶちゃん注:「踵」前に徴すれば「かかと」。
「かの苑」私は勝手に浅草公園を措定したが、判らぬ。]
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