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2020/06/13

北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 紅の實 / 附・パート「おもひで」標題挿絵復元

 

John_20200613112401

 で ひ も お

 

Gonshan_20200613112401

 で ひ も お

 

[やぶちゃん注:「おもひで」という詩集表題ともなったパート標題ページであるが、既に「序詩」標題ページで述べた通り、挿絵の誤りがあるので、私が合成補正したものを二番目に掲げた。画像は国立国会図書館デジタルコレクションの底本と同じ初版本画像(但し、モノクロームである。しかし、デッサンには却ってコントラストが生じて都合がよい)を最大でダウン・ロードし、底本と比較しながら、汚損(かなりある)を可能な限り、除去した。前に配したのが、実際の「おもひで」の扉の配置で(標題は合成)、後に配したのが私が正しい絵を合成したものである。]

 

 

紅き實

 

日もしらず。

ところもしらず。

美くしう稚兒(ちご)めくひとと

匍ひ寄りて、

桃か、IKURI か、

朱(しゆ)の盆に盛りつとまでを。

餘(よ)は知らず、

また名もしらず。

夢なりや。――

さあれ、おぼろに

朱の盆に盛りつとまでを、

わが見しは

紅き實なりき。

 註。Ikuri の果は巴丹杏より稍小さく、

   杏よりはすこしく大なり、その色

   血のごとし。

 

[やぶちゃん注:註は二行であるが、ブラウザの不具合を考えて三行に変えた。「IKURI」が注では「Ikuri」と表記が異なっているのはママ。

IKURI」「Ikuri」は郁李(いくり)でバラ目バラ科スモモ亜科スモモ属スモモPrunus salicina の品種であるニホンスモモの異名であり、厳密には品種改良が進んでおり、生物種としては同一でも、原種のスモモとはかなり異なる。但し、日本では「ニホンスモモ」を「スモモ」と呼称している。小学館「日本大百科全書」によれば、原産地は揚子江流域から日本に及ぶ広域とされ、『小高木で、枝に刺』『のあるものがある。葉は薄く、淡緑色、長倒卵形で細かく鋭い鋸歯』『がある。開花期は早い。果実は球形ないし長球形で、果皮や果肉は黄色または紫紅色である。これまでに米桃(よねもも)、寺田李(てらだすもも)、万左衛門(まんざえもん)、甲州大巴旦杏(はたんきょう)(別名ケルシー)、ソルダム、サンタローザ、ホワイトプラムなどの品種がつくられ、栽培されている。ニホンスモモの大果品をハタンキョウ(巴旦杏)、ボタンキョウ(牡丹杏)とよぶこともある』が、白秋も使用してしまっている「巴旦杏」(はたんきょう)はアーモンドの異名として多く使用されているが、これはバラ目バラ科モモ亜科サクラ属ヘントウ(扁桃)Amygdalus dulcis であって、言わずもがな、全くの別種なので注意が必要である。

「餘(よ)は知らず」言わずもがなであるが、この「餘」は他のこと(記憶)はもう忘れてない、或いはその時も――何故そこに「朱(しゆ)の盆に盛」ってあったのか、それが「桃か、IKURI か」も判然とせず、ともくも、ただ「美くしう稚兒(ちご)めくひとと」そこまで二人して、少なくとも私は「匍ひ寄」って行ったなあ――という記憶だけがあって、その他の事由は当時も知らなかった――という謂いである。

「巴旦杏」この註で白秋の使用している「はたんきやう」は、まさに前の「日本大百科全書」の『ニホンスモモの大果品』か、或いは、スモモの別な一品種で、実は大形で先が尖る「とがりすもも」「牡丹杏 (ぼたんきょう)」と呼ばれるものを指しているものと思われる。

「杏」バラ目バラ科サクラ亜科サクラ属アンズ Prunus armeniaca。但し、駄菓子屋のそれしかイメージにない方に注意しておくと、アンズの果実は赤くなく、熟しても普通は橙黄色である(但し、果肉は赤みを帯び、実もやや赤みを帯びる個体もある)。但し、白秋にイメージにあるものが純粋なアンズであったかどうかは怪しい。何故なら、アンズはアーモンド・ウメ(バラ目バラ科サクラ属ウメ Prunus mume)・スモモと近縁種であって、容易に交雑してしまうからで、スモモとの交雑種では実も赤くなるであろうからである。]

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