北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) あひびき
あひびき
*きつねのてうちん見つけた、
蘇鐵のかげの黑土(くろつち)に、
黃いろなてうちん見つけた、
晝も晝なかおどおどと、
男かへしたそのあとで、
お池のふちの黑土に、
きつねのてうちん見つけた。
* 毒茸の一種、方言、色赤く黃し。
[やぶちゃん注:菌界担子菌門菌蕈(きんじん)亜門真正担子菌綱スッポンタケ目スッポンタケ科キツネノロウソク属キツネノエフデ Mutinus bambusinus の異名。サイト「きのこ図鑑」の「キツネノエフデ」に、林や『竹林の中、草地や道のほとり、家の庭など様々な場所に発生し』、『直径約』一・五センチメートルの『の卵型の幼菌から』、『先端が濃い紅色の本体が伸びて出ている強いにおいを持つキノコで、上部の先端には暗褐色の粘液部分(グレバ)があり』、『これが悪臭を放』つ。但し、『先端部分が中に隠れている卵状の幼菌の段階では特に匂いは』ないとある。『キツネノエフデは一般的なキノコのようなカサの部分はなく』、『先端部分は尖るように細くなってい』おり、『頭部と柄の部分があまりハッキリしないという事も特徴のひとつで』あるとある。『夏から秋にかけて見られるキノコで』あるが、『大体、梅雨の時期から発生し始め』、『キツネノエフデに似ているキノコとしてはキツネノロウソク』(キツネノロウソク属キツネノロウソク Mutinus caninus)『などがあげられ』る。本種には『毒があるという情報は』ないものの、前述の如く、『悪臭がきつく、食用には適さないキノコだと言われてい』いるともある。写真あり。かなり妖しい感じである。なお、白秋は「赤く黃」(きいろ)「し」と言っているが、キツネノエフデは紅いが、黄色くはない。キツネノロウソクは橙色の子実体の頂部のグレバと呼ばれる胞子を含んだ粘着性器官が生ずるが、これは黄色いから、或いは両種がそこには生えていた可能性もあるように思われる。
「蘇鐵」裸子植物門ソテツ綱ソテツ目ソテツ科ソテツ属ソテツ Cycas revoluta。]
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