北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 沈丁花
沈丁花
からりはたはた織る機(はた)は
佛蘭西機(ふらんすばた)か、高機(たかばた)か、
ふつととだえたその窓に
守宮(やもり)吸ひつき、日は赤し、
明(あか)り障子の沈丁花。
[やぶちゃん注:「沈丁花」フトモモ目ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属ジンチョウゲ Daphne odora。私の好きな花。雌雄異株であるが、本邦に植生するものは殆んどが雄株で、挿し木で殖やす。
「佛蘭西機」この場合は、「高機」と並べて孰れかと言っているからには織物をパターン通りに仕上げるためにパンチ・カードを利用した最初のジャカード織機(Jacquard loom)の古い手動式手織機であろう。内海まりお氏のブログ「極楽京都日記」の「【京都】宝絹展 2017 9/2~9/6【イベント】」の中のこちらの写真(但し、ミニチュア)を見られたい。
「高機」経巻具(たてまきぐ)の他に布巻具も機台に取り付けて経糸(たていと)水平に張り、腰かけて織るようにした手織機。古い地機(じばた)より全体を高くしてあるので、この名がある。機台(はただい)の腕木(うでぎ)に支えられた弓棚(新しいものは轆轤(ろくろ))につるした綜絖(そうこう:緯糸を通すために、経糸を上下に分ける器具)の下方を踏木に結び、この踏木を踏んで開口する。杼(ひ)は大杼から小杼になり、投げ入れるようになった。綜絖は二~十枚程度で、斜文などのやや複雑な組織(くみお)りを作ることが出来る。構造と変遷を見るには「三河テキスタイルネットワーク」のサイト「夢織」のこちらがよい。
「守宮」爬虫綱有鱗目ヤモリ科ヤモリ属ニホンヤモリ Gekko japonicus。中国東部・日本(秋田県以南の本州・四国・九州・対馬)・朝鮮半島に分布する。江戸時代に来日したジーボルトが新種として報告したために種小名が japonicus となっているが、ユーラシア大陸からの外来種と考えられており、日本固有種ではない。日本に定着した時期については不明だが、平安時代以降と考えられている。私の家には二十年以上に亙って何世代もが暮らしている。見かけないと心配にさえなる大事な同居人である。私は昆虫類は苦手だが、爬虫類は全く問題ない。]
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