北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) ふるさと 奥附・広告 / 北原白秋 抒情小曲集 おもひで オリジナル注附~了
ふるさと
人もいや、親もいや、
小(ちいさ)さな街(まち)が憎うて、
夜(よ)ふけに家を出たれど、
せんすべなしや、霧ふり、
月さし、壁のしろさに
こほろぎがすだくよ、
堀(ほり)の水がなげくよ、
爪(つま)さき薄く、さみしく、
ほのかに、みちをいそげば、
いまだ寢(ね)ぬ戶の隙(ひま)より
灯(ひ)もさし、菱(ひし)の芽生(めばえ)に、
なつかし、泌みて消え入る
油搾木(あぶらしめぎ)のしめり香(が)、
[やぶちゃん注:最終行末の読点は原本のママ。後の昭和三(一九二八)年アルス刊の北原白秋自身の編著になる自身の詩集集成の一つである「白秋詩集Ⅱ」の本篇(国立国会図書館デジタルコレクションの当該ページ画像)では句点に変わっているが、私は断然、読点を支持するので、そのままとした。
以下、奥附。配置・ポイント・太字等は一致させていない。]
明治四十四年五月二十日印刷
正價九十錢
明治四十四年六月 五日 發行
著 者 北 原 白 秋
不 許 發 行 者 西 村 寅 次 郞
複 製 京橋區南傳馬町三丁目十番地
印 刷 者 橫 田 五 十 吉
神田區松下町七、八番地
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發行所 東 雲 堂 書 店
東京市京橋區南傳馬町三丁目十番地
電話京橋一六三九、振替五六一四番
[やぶちゃん注:以下、奥附の左ページ及びその裏にある広告。同前。]
北原白秋氏既刊書目
邪 宗 門 第一詩集 賣 切
思 ひ 出 抒情小曲集 新 版
北原白秋氏近刊書目
東 京 景 物 詩 新 詩 集 一 卷
抒 情 歌 集 第 一 歌 集 一 卷
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